第30話 劇症化
三十を数えて半年ほど。
突然、意識が途切れるということが起きるようになった。
ぼうっとして自分が何をしているのか理解できないことがたびたびあった。
体が重くて、感情が鈍磨した。
仕事でも稽古事でも車の運転があった。
とても運転を続けることは出来なかった。
人の命にかかわる。
仕事は辞めるしかなかった。稽古事は長期で休むことにした。
仕事を辞める少し前から内科にかかった。
あまりの倦怠感に、肝臓でも壊したのかと思ったのだ。
長年の多量飲酒のツケが来たのかと。
ところが、どれだけ検査をしても何もでない。
それでも仕事に行かねばならないと思い込んでいたから、点滴を打ってもらうと少しは身が軽くなる。
毎日、点滴に通った。
でも、どんどん悪化して、二か月後、精神科を紹介された。
仕事を辞めて一月後のことだった。
そのころにはもう、まっすぐ歩くこともままならず、家から一キロも離れていない内科まで行くのに、十メートル進んではしゃがみこむような状態で、まともな日常生活は送れていなかった。
食事も無理、だるいから布団にずっといるけれど眠れず、何も考えられず、風呂にも入れず。
点滴を打ってもらった後にかろうじて歯磨きが出来るくらい。
紹介してもらった精神科はバスで十五分ほど。バス停からすぐ近いので、歩けない身としてはありがたかった。
前もって内科医が予約を取ってくれたので三日後の予約が取れたが、個人の希望で初診にかかろうと思ったら二か月待ち、というような盛況ぶりで、初めて行った時も予約時間よりだいぶ待たされたような気がする。
実は、このころのことがよく思い出せない。
記憶力もそうとうやばくなっていたものと見える。
それでも、かろうじて覚えていることを次ページに書き残しておきたいと思う。
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