第22話 母と夢 つづきのつづき

高校生活は地獄の底を歩いている気分でした。

この世に楽しいことなんか何もないと思っていました。

テレビゲームに没頭するのが唯一の生きている時間でした。

ゲームの世界で生きている夢をしょっちゅう見ることができて、助かりました。


学校もしょっちゅうサボりました。

家に閉じこもって、母がもし帰って来てもバレないように、靴を部屋に持ち込んで、ゲームばかりしていました。


高校一年と二年の時の担任は生徒を放っておくタイプの、あまり熱心ではない先生でした。助かりました。数日、まとめて休んでも、その先生は親に電話をかけませんでした。

ほんとうに、ほんとうに、貴重な二年間でした。

あの担任でなかったら、私は、高校を中退していたと思う。


でも、三年次、担任が変わりました。

新任でやる気にあふれて人と接するのが大好きな女の先生でした。

担任は積極的に私に介入してきました。

クラスに馴染もうとしない、一人でいたがる私を、どうしても普通の女学生にしたいと思っている人でした。

私は昼休み、一人でお弁当を食べて、後の時間は寝て過ごしていました。昼に誘ってくれる女子は何組もいましたが、すべて断って。


ですが、担任からの誘いを断る術を知らず、生活指導室で対面でお弁当を食べました。


「出来るじゃない! そうやって喋って、みんなと仲良くしたらいいのよ!」


私と昼食をともにした先生の言葉です。

私は、元来、社交的な人間です。でも、そうありたくないのです。そうあることが苦痛なのです。そう在ると、親しくしようとしてくる人たちの『普通』が、私を痛めつけるのです。


でも、そんなこと、担任にわかるはずもない。

説明することも、とても出来ない。

私は、何を言われても、独りでお弁当を食べ続けることしか出来ませんでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る