第18話 教えられる

私はよい生徒です。


真面目で勤勉で、言われたことはすぐに身に付けます。

周囲と和合し波風もたてません。


けれど、それは表面上のこと。私はいつも自分を押し隠していました。

いつでも暴れたいし、怒鳴り散らしたい。

ですが、ここでは自分を押し隠すような必要はありませんでした。


芸は神前奉納するものでしたから、人に比べられるようなものではない。己の努力がすべてなのだ。人に計れるようなものではない 。

上手い下手ではないんだ。


それは私の心をなんとも言えぬ安らぎで満たしてくれました。


性格の好悪だとか、我の強さだとか、外見の美醜だとか、頭脳の明晰さだとか、なにも関係がない、自分のありのままを、人以外の価値から認められる。


救われました。

攻撃的な気持ちも落ち着いていました。

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