第17話 稽古事

伝統芸能であるところの踊りを習っていました。

地元の古い古い古い古いもので、継承者がびっくりするほど少ないものでした。


大学に入ってすぐ。

サークルの新入生勧誘の折り、伝統の衣裳を身にまといシャラシャラと衣擦れの音をさせて歩いていた先輩たちの姿に一目惚れしました。


ですが、大学では傷つかず、傷つけぬように人と交わらないでおこうと決めていて、サークルも横目で見ているだけでした。


二ヶ月ほどは一人で行動していたのですが、どうしても輪に入れと、根気強く誘ってくれた人たちと行動を共にするようになりました。

私が一人で、大学のそばの人気のない神社に入り浸っているのに気付き、一人にしておいたら事件に巻き込まれるかもと心配してくれてのことでした。


そのうちの一人が、伝統芸能のサークルに入っていて、私も誘われて見学に行き、すっかりはまりました。


大学三年目で中退したのに、サークルには四年間、通い続けました。

サークルにいる間、すごく心が落ち着いて、普通の精神状態でいられました。

サークルメンバーみんなが地味で、ゆっくり喋り、感情の起伏が穏やかだったことが大きかったと思います。


こんな生き方なら、私も女子になれるかもしれないと思いました。

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