第19話 後悔している。でも、正しかったのかもしれない。
稽古ごとのことです。
サークルの活動が終わり、最後の挨拶に師匠宅を訪れた時、私は
「続けさせてください」
と、言ったのです。
それは、嘘ではなかったけれど。心から出てきた純粋な言葉ではなかったかもしれない。
私は、良い子でした。
期待されたことは出来る子でした。
そうして、母にどう反抗したらよいか、わからない子でした。
母は癇癪の凄い人でした。
後年、私のソウウツは祖母の血を引いていたのではと言われたのですが。
祖母が診断を受けたことがあるわけではないので、ひとつも確信持てる情報ではありません。
ただ、祖母がヒステリーがすごく、子供をモノで叩きのめしたり、寝付いたり、かと思ったら、精神が憔悴して起き上がれなくなったり。そういったことを繰り返す人だったそうです。
母は精神的な弱さを持ち合わせていません。ですが、若い頃は癇癪がすごい人でした。
怒ったら恐ろしすぎて何も口答えも出来ず、黙ってうつむいて、嵐が去るのを待ち続けるしかありませんでした。
そんな母が言ったのです。
「あんたは師匠さんみたいに生きるのが正しい道だ」
だから、私は言ったのです。
「続けさせてください」
それが、本心からきた言葉か、今でも私にはわかりません。
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