第2話 初診は心療内科・眼科を標榜する医院で

 二十代前半のころだ。

 世の中にやっと「うつ病」という病気があるらしいということが知られるようになった。

 パソコンも普及し始め、インターネットで様々な情報を得ることが出来るようになった黎明期だ。

 まだホームページは自作するのが主流だった。

 私も自作したホームページや、当時、流行っていたチャットを始めてみたりしていた。

 その辺りから得た情報の一つが精神的な病気の幾種類かの話だった。


 眠れない、生きるのが辛い、気分はいつも落ち込んでいる、人と話すことが出来ない、過食嘔吐、自傷行為、もろもろの症状を、病気だと思っていなかった。

 私はそういうことをする、しょうもない人間で、生きている価値がないのだと思っていた。


 だが、もし、病気だとしたら、このしょうもない人生も変わる、病気が治れば変わるんだという期待を持った。


 けれど、心療内科に足を向けるのは気が重かった。

 精神病に対する恐怖と偏見が私の中にあった。


 そうこうしている時、たまたま通りかかったクリニックが『眼科・心療内科』という謎の組み合わせで診療していることを知った。


 ガラス扉が大きくて、中が見えた。

 受け付けはきれいで、その時患者がいなかった。

 

 私は発作的にクリニックに足を踏み入れた。

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