第17話 3章02……ギャルたちはその長い脚でのキックがお得意(ですがむしろご褒美です)。
ムーンウォークをしているうちに、香水や化粧の香りが強く漂う由乃たちギャルグループのほうに自然と近付いて行った。
それをラッキーであり好機だと思って、幹はすかさず由乃と玲に話し掛ける。
「やあ、由乃に玲! 二人は何してんの? おれも混ぜてくんない?」
すると瞬時に、由乃たちギャルの目が、まるでせっかくの無機農薬野菜(特に白菜やキャベツやらの葉物)にこっそりと潜んでいたナメクジを見るような冷たいものに変わった。
「何? なんか用? つーか用事あっても近寄らないで欲しいんだけど。ウザいから」
ジロリ、と椅子に座っている由乃に下から睨まれる……というより凄まれる。
「……めんど……。うわ、吉田ぁ。アタシの自慢の脚をそんなエロい目で見ないでよね……」
玲は形の良い爪をやすりで磨いていた手を止め、机に『の』の字を指で書きながら、ピンク色のグロスが塗られた蠱惑的な唇を尖らせた。
幹はそのラメ入りグロスの唇の輝きに魅せられたように、
「あぁ誰か~。
俺の乾いた砂漠の心に、一滴の甘露の水を垂らして潤して欲しいんだ。
そうしてくれたら、おれにはその子だけだ。もうその子だけでいい。その子しか要らないから……。
あいうぉんちゅー……チューをプリーズ……」
「え? え? きゃあっ!!」
幹が「to you(ちゅー)」と「チュー」を掛けて玲に抱きつこうとするが、そこには
――ドスッ!
と遠慮なしの由乃の蹴りが今日もまた入る。
しかも今度は水月(鳩尾)にだ。
先述したが、この『おかこー』は、基本的に特別な場所以外は土足可であるため、由乃の新品のローファーのつま先による、強く、硬く、鋭い蹴りだった。
続いてトドメ、とばかりに玲も逃げ腰ではありつつも、机の下でうずくまる幹を蹴り転がす。こちらも当然、土足で。
「……ったく! あーしらに近寄るんじゃねーよッ! このド変態がッ!」
だが幹は床で蹴り転がされることによって、ただでさえ短いスカートのギャルたちの下着がチラチラと見えることに昨日の時点で気が付いていた。
故に、蹴り転がされる痛みも恍惚のごとく変化する。
けして幹の性癖にマゾヒズム要素は備わっていないはずなのだが……。
「……ふぅ、もう動かなくなったか? これに懲りたら二度とあーしらには……」
「はあ、はあ……。も、もっとぉ……。
もっとそのおみ足で蹴って下さい由乃様ぁ……」
幹がゾンビのように這いずりながら、由乃の白い脚にべったりとしがみつく。
その感触で、由乃の身体中に「ぞぞり」と鳥肌が立った。
「――で、出て行けや、おんどりゃーーーーッッ!!」
今度こそ、由乃渾身の回し蹴りを叩き込まれて、幹は製図室から放り出された。
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