第2話 序章02……他の一部の男子どもの事情
◇
「……――おっ! なあなあ。さっきからずーっと突っ立ってたあいつさあ、どうやら『
校門の近くに立ちつつ幹と舞子の姿を眺めつつ、渋い顔をした二名の男子たちは……身に着けている制服が、片やブレザータイプであり、片や学ランという決定的な違いがまずあった。
先ほどの幹と舞子たちの光景を見て残念そうな面持ちで語っているのは、それなりに背も高くて素顔もなかなかのイケメンではあるが、それを自覚しつつも伊達であるオシャレフレームのメガネを掛けて周りに自分をチャラい系とインテリ系の絶妙なバランスのオシャレ男子に見せている
ついでにそれまで高校敷地内にいる間はきっちりと着ていた中学校のブレザー制服のワンタッチネクタイを外し、その下もきっちりと留めていたシャツのボタンも上二つほど外していた。
「うへぇー。そっか有田。だからさっきも『ママ』と一緒に来ててデザイン科に合格して抱き締められてる『お坊ちゃま』みてーなやつがいたけど、邪魔しないように誘わなかったもんな」
「だな! ママに溺愛されてるお坊ちゃまくんはともかく、あんな超カワユ~イ女子同伴で合格発表見に来てるような羨ましいやつは、オレ命名『女子の多いデザイン科での肩身の狭い男子たちの団結式』からはハブにしてやろうぜ! つーか、マジ偶然だよな。合格番号発表時、デザイン科合格者の一番上に自分の受験番号見つけて喜んでたオレの隣で、同じく合格してハッスルしてるおまえに話し掛けたら提案に乗ってきてくれて、ここまで一時間近くも一緒に待機してくれることからしてもう奇跡みてーなモンだしなー」
「そりゃ当然、オレだってクラスに女子が多い環境は嬉しいよ。……けどさー、女子とばかり仲良くしてて、数少ない男子たちに村八分にされるほうがつらい――つーのはオープンスクールの時にさ、うちの中学のOBの男子先輩にこっそりと涙ながらに教えられてたからなあ……」
女子でも男子相手でも軽い調子を崩さない性格の徹彦と気が合うようで、一緒に話している学ランの男子は、同じく軽い……というよりも普通に明るい性格で髪の毛も地毛ながら元より少し茶色味がかっていて明るい色の
「まーそれは置いといて……でも、あんなレベルの高い女子と同中で合格発表見に来てて、しかも仲良さげにしてるー……とか、あいつマジ羨ましいわ」
「デザイン科は一クラスしかないからあの女の子はともかく、あいつとは百パー同じクラスになるだろうけどな。入学式の後とかに今日のコレの件でツンツンつついてからかってやろうぜ。そうだなー……『よう! おまえ合格発表の時に同中の女子に嬉しさのあまり抱き着いて泣いてたやつだろ!』とかどうだ?」
「そりゃいい。『もうおむつは取れたのかいボウヤ?』とも追撃で言ってやりたい気分だぜ。いまのオレは嫉妬の権化だからな。別に提案した『懇親会』が緑町との二人だけになりそうなのが嫌ってことじゃねーけどよ。……なあ、もしも入学後でよ、クラスの男子がオレらとあいつとお坊ちゃまくんの四人だけってことになったら改めて開こうぜ、『団結式』ってやつをよ……」
徹彦はそこはかとなく弱弱しい調子で語ったが、その声色はとても真剣味を帯びていた。
しかし切り替えは速く、身体を反転させると校門から一歩外に出た。そしてブレザーの胸ポケットから一枚の紙切れを取り出すと、
「そんじゃオレら二人だけなのは寂しいけどよ、駅のマックにでも行こーぜ! これ、うちの母ちゃんが『もうすぐ期限切れるから、これでお昼でも』つってくれた株主優待券。マックのメニューのほぼなんでもタダで注文出来るけど、バーガーとサイドメニューとドリンクの一枚ずつしかねーから、それぞれ分けようぜ!」と言って拳を振り上げると陽太も同調して同じポーズを取った。
「おっしゃあっ! じゃあそのマックのタダ券賭けて、店の前でジャンケンなー!」
徹彦の提案にプラスして合格の嬉しさと同士を見付けたそれもあるのか、二人の男子たちはワイワイと騒ぎつつ、スタンバイしていた校門の前から去って行った。
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