第6話
大人の男女がするコト―― 秘め事って、ちょっぴり危険な匂いがする。
誘われるまま付いていったのは、興味があったから。
セックスへの興味以上に、彼の様子がいつもと違うように感じて、気になったから。
久住のイライラとした感情が伝わってくるが、どうしたのか、なんて聞けるはずがない。聞く理由もない。
(私に出来ることって、コレだけ…だから)
名前も知らない、この場所で会うだけの人を、そこまで気にして何かをしてあげる必要はない。まして、身体を差し出すなど。だけど茉莉は、必要とされたい、期待に応えてあげたいという気持ちが強くて、頷いてしまったのだ。
自分だって、人の気配や温もり、精神的な安らぎを求める時がある。素直に認めないだけで、本当は、両親に手を差し延べられるのを、ずっと、ずっと待っている。
(こんな身体、別に惜しくない…)
無言のまま、車をホテルへと走らせる久住の横顔を見る。
怒っているのか…。怖く、険しい表情の久住。
(この人が、初めての人になるんだ―――…)
初めては好きな人とか、一度も考えたことがない。そもそも、そういう感情になったことさえ無かった。クラスの男子や、人気がある先輩にも全く興味が持てなくて、自分は一生このままなのだとさえ思っている。それはそれで、別に不満も不便もないし良いとさえ。
友達が幸せそうに、時に頬を染めて話す彼氏や片思いの相手の話題に、茉莉だけが付いていけない。だけど、温度差が生まれるのは避けたい。浮いてしまわないように、周囲の反応に合わせて笑顔を作り真似をするだけ。
本当は、男なんてどうでもいい。
でも、少しだけ緊張しているみたいだ。
少し震える指先を、隠すように握った。
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