『へたれ魔王は倒せない!』の番外編。優しい魔王を取り巻く魔物たちの視点から描かれる魔王は、本当に優しい。「皆が傷つくから、冒険者の深追いは止めて下さい」とか、「人々を許すべきです」とか、本当に良い子過ぎて、人間が野蛮に見えてくるほどだ。
そしてそんな魔王に仕える魔物たちは、そんな魔王に心酔している。しかし古株の猫の魔物は言う。「他者を従えれば、責任が増えるだけ」と。そう、この優しい魔王は、自らの行為に対して責任を持っているし、魔物たちを従えることに対しても責任を果たそうと必死なのだ。だからこそ、本編で人間に冒険者対策などを依頼している。
番外編ながらも、大切なこと、忘れてはいけないことで溢れている作品だと思う。「信仰から来る誤解は、容易には覆せないから許すべき」だなんて、一体どれくらいの人が心からいえるのだろう。仲間が多く犠牲になっているこの状況で。
そんな魔物たちの心を無視して、人間の冒険者たちは私利私欲のために戦いを挑む。
果たして、どちらが闇で、どちらが光りなのか。いや、光と闇は表裏一体だ。だとしたら、どちらが正義で、どちらが悪なのか。この作品を拝読すると、これまでのファンタジーとは違った感覚になる。
是非、ご一読を!