第3話

第三話

「私、やっぱり孝志君のことが好きです!付き合ってください!」

 俺は、地元の幼馴染、夏目心美に告白されていた。実家がはす向かいの小柄で可愛い女の子。同級生ではあったが、幼いころは、兄弟がいない僕にとって妹のような幼馴染だった。

 告白されたとき、彼女は真っ白いワンピースを着ていた。フリルがついていて小さな心美が着るとより可愛さが映えた。おどおどしながら勇気を振り絞って告白する姿がとてもいじらしい。

「いや…俺彼女いるから。ごめんね…。」

 残念ながら俺には彼女がいる。それに俺はどちらかというと可愛いお人形さんのような子より、スレンダーなキレイ系の女性がタイプだ。何より心美は恋人というよりは妹のような存在として守ってあげたいと思うし、今の関係を壊したくない。

 心美の今にも泣きだしそうな寂しそうな顔を見ていた時、後ろに一組のカップルが通り過ぎるのが見えた。何気ない光景だが、よく見ると俺の彼女、文香と親友の前田遼平が腕を組み歩いている。

 文香が歩きながら俺に陽気に声をかけた。

「あ、孝くん。私、遼ちゃんと付き合うことにしたから。もう別れよう。ごめんね~。」

軽い挨拶のようなトーンで別れを告げた文香は遼平と楽しくお喋りをしながら遠い闇へと消えていった。


 その出来事の後に俺の視界に入ったのは、突起一つないベージュがかった白い天井だった。良かった、夢で良かった。彼女と幼馴染、親友をいっぺんに失うところだった。また今日も夢の中で夢を信じ切ってしまっていて起きても心臓の鼓動が乱れている。せっかくの睡眠の時間なのに俺の頭はまったく困った苦労をさせる。

 一安心したあとに時計を確認する。大丈夫だ、まだ7時52分。8時半開始の一限にはしっかり間に合いそうだ。今日はしっかり授業に出て、遼平にノートを返そう。暇があったらこの夢の話でもしてみようか。そう思って、ベッドから起き上がり、昨日とは見える方角の違う太陽の光を部屋に取り込むために窓のカーテンを開けにいった。

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