第2話
第二話
「西野武昭と角谷?変な2人が出てきたもんだな。それにゴジラだろ?お前の頭何考えてるのよ。」
「変だよなぁ、でも夢ってこういうこと起こるよな。」
今日も大学の食堂・カンティーヌで遼平と昼飯を食べる。前田遼平、小中高大と唯一全部一緒の友達だ。小中学生の頃はそんなに話すこともなかったが、高校生になってから同じ学校から来たという縁で仲良くなった。偶然大学も一緒だし話も合うので俺の中で距離が近い友達のうちの1人だ。
「夢って潜在意識っていうじゃん。最近、孝志はその3人…いや2人と1体に関して何か考えたとかあるんじゃないの?」
「うーん、いや、無いな。最近はレポートに追われていたし。」
「そうか、まぁとりあえずその寝坊癖、1限のさぼり癖はやめておけよ。」
遼平は明るく笑って、俺にノートを渡してくれた。
「今回の授業、大事な宿題あったから忘れるなよ。単位は落とすなよ。じゃあお先。」
そう言って遼平は俺にノートを渡して食堂を離れた。遼平は、なかなかのイケメンで、勉強も真面目にやって、性格もいい。課外活動もわりと積極的で、人当たりもいい。すべての面で偏差値70みたいな男だ。昼飯を早く切り上げたのもサークルの話し合いか、授業の予習、または彼女との予定か、そんなところだろう。自分の管理もしっかりしている俺が尊敬する男だ。こんな人と友達でいれるのは正直嬉しいし勉強になる。
遼平が離れた後、俺の背後で奇妙な人の気配がした。その小太り男はヌッと俺の前に姿を現し、さっきまで遼平が座っていた席に座った。
「見る夢が変ねぇ…。未来予知かもね。似たようなことが起きるかもしれないよ。」
「お前、どこにいたんだよ。また急に現れたな。」
「そんなことないよ。偶然君が座った席が僕の右後ろだったんだよ。」
「いや、俺お前見なかったぞ。」
俺に話しかけたのは大学で割と有名な変わり者、長谷川。彼はオカルト系に精通していて、人とはちょっと奇妙な言動行動から周りから良くも悪くも変な人と思われている。大学では都市伝説サークルという一風変わったサークルに所属している。でも、俺は彼のことを嫌いではない。面白いやつだと思ってたまに話をしている。
「まぁそれはいいや。じゃあ、俺の夢に関する君の見解を聞こうか。」
「見解って…そんなに堅苦しいものではないけどな。オカルト系は結構知ってるけど僕は夢に関しては弱いからね。ただ、夢占いっていうのがあって夢の内容でその人の深層心理がわかるんだ。たとえば、関谷くんのようにゴジラに追いかけられた場合、大きく分けて3つの深層心理が考えられる。1つは、何か期限のあるものに追われている。宿題とかレポートとかかもね。2つ目は、固定観念に縛られて息苦しい。3つ目は、人生に新しい変化を求めている。他にもあるけど大きくはこんなところかな。」
「3つそれぞれ全然違うじゃん。それに俺、レポートも2日前に終わったし、その3つのどれにも当てはまってないよ。」
「そう、そこなんだよ。夢占いって占いの予想結果って何とでも言えるんだよ。候補の結果がありすぎて、占い師がデタラメにありそうなことたくさん言って当てようとしているんじゃないかって思うんだよ。だからリアリティーがないから僕は好きじゃないんだ。」
「へぇ。」
「僕はリアリズムを求めるからね。都市伝説といっても人が信じてみたくなるような話じゃないと面白くないんだ。例えば僕が好きなものでいうと」
「ちょっと待って、それきっと長くなるよね。俺あと10分で授業だからまた今度な、長谷川。」
「うん、分かった。あ、そうだ。ゴジラの夢、固定観念に関してもう一つ興味深い例がある。」
「何?」
「セックスで欲を満たすことに罪悪感を感じる。」
クスッと笑い、僕は笑顔で答えた。
「大丈夫、彼女とは大学生らしく仲良くしてるよ。」
その後、長谷川から都市伝説サークルに、夢に関するスペシャリストの先輩がいて紹介できるという情報をもらった。変な人という烙印を押されてはいるがこうやって人に気づかいできるのは長谷川の良いところだと思う。ただ、別に1日偶然見た夢の事だけでキャンパスでも有名な薄汚れた建物の中にある都市伝説サークルに行こうとは思わない。
そういえばなんでこんなに今日は夢をはっきり憶えていたんだろう。昼までには忘れると思っていたのに。それだけ印象的な夢だったのかな。そんな疑問を心にしまい込み、俺は次の授業が行われる講義棟Bに向かって歩みを進めた。
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