主人公の田中はボッチだ。
ボッチにはボッチたる理由がある。
まず田中は性格に難がある。あまりにも癖が強い。つよすぎる。そしてバカである。勉強も運動もイマイチどころか、底辺をさまよっている。なのに、謎のうえから目線でクラスメイトや世間を批評する。
もう、ダメだ。これ、救いようがナイであろう。
そう思ってしまうのだが、軽妙な文体についつい読み進めてしまう。するとバカはバカなりに、田中のかわいらしさに気がついていく。
そうか。田中よ、お前は愛されおバカだったのだな。
ボッチだった田中に、気がつくと友人がいる。彼を慕う仲間がいる。いつのまにか田中はひとりではなくなっている。
この物語はどこにでもいる。冴えない。ナニをやっても上手くいかない、高校生男子の青春記だ。読み進めていくと、読者はそれまでバカにしていた主人公の行動に、ハラハラしたり、エールを送りたくなってしまう。そして心の隅で、そっと思ってしまうのかもしれない。
田中。お前って、実は良い奴なんだな!