第49話 「対比」という構図について

 今回の項目は「対比という構図について」になります。

 物語のプロットを構築する時、どうすれば面白く、劇的で、感動的かつ、人の心を震わせるストーリーを考案できるのか……!


 そんな方法論の1つを、まとめてみようと思います。


 ……さ、流石に、そこまで大仰ではなくとも。

 より読んだ人に共感して欲しい、楽しんで欲しい、そういう気持ちの後押しになればという考えのもと書き綴っていきますね!


 しかし項目へ入る前に、まずは――


 これを、この情報を、言わせてください!!


 花咲がシナリオ担当として参加させていただいたADVゲーム

『ウチのペット事情』の体験版&公式HPが公開となりました。


 めでたい!!


 こちらは友人であり元同僚でもあるイラストレーターの「夜ノみつき」さんが作成していた同人誌を元に、長編物語として作ったゲームなのです。


 そう、先に原作あり。

 原作の流れ、テイスト、登場キャラクターの魅力をいかに崩さずに、長編物語として再編していくかという、なんともやり甲斐のあるお仕事でした。

 とても難しい作業でしたが、充実感たっぷりの出来となっております!


 ゲーム本編の発売は4月を予定していますので

 もし興味があったら、ぜひぜひ体験版を遊んでみてください!


 ライブ2Dでキャラクターが可愛く動いたり、三か国語に対応(しかも画面内ですぐ切り替え可能)しているので、オススメです!


 閑話休題


 という訳で、今回は「対比」という構図についてをお話しさせていただきます。


 対比とは――

・二つのものを並べ合わせて、違いやそれぞれの特性を比べること。

・二つの性質あるいは量の違ったものを並べると、その違いが著しくなる現象。


 語句の意味を調べると、上記のような説明でした。


 そして物語における、さらに今回書き連ねていく「対比」とは


「登場キャラクターの状況・性格・関係性」という点に集中したいと思っています。


 キャラクター

 主人公やヒロイン、または物語を支えるライバルやモブ達の事になります。


 対比なので、比べる対象は2人以上が好ましいでしょう。

 片方が「こう」だったら、もう片方は「違うこう」というものを軸に、物語の盛り上がりを表現していく、というものですね。


 主人公が不幸な状況に対し、誰かは幸福な状況であること。


 これは昨今の流行でもある「追放もの」とかにも通じているのではないでしょうか。


 主人公は最初「世間から評価されていない・不遇」な状況に対し、

 ライバルは「世間から評価されている・厚遇、好遇、幸運」な状況である。


 しかし物語が進むにつれ、両者の状況が逆転していく。


 主人公は不遇だった境遇をバネに状況を好転させて、

 対するライバルは厚遇されている状況に甘えて堕落していく。


 それを山場やオチとして表現していくのが「対比」の物語構造になります。


 どういうきっかけで逆転するのか。

 どういう状況において、立場が逆転したと表現するのか。


 それを面白さとして構築するという手法になります。


 この手法の良さ、というか盛り込みやすい点は

「分かりやすい」というものになります。


 読み手に、状況や立場を伝えやすい、伝わりやすいんですね。

(物語の軸として、常にストーリー上で表現されているものに設定しやすい)


 主人公は今こうですが、ライバルは今こういう状況です。


 それを何度も表現していくだけで、実は物語の始まりから終わりまで作れてしまうのです!

(しかも楽しんでもらいやすい)


 対比を意識しながらプロット作成をしていくと

 作者も物語を作りやすく、「どうやって楽しませよう」としているのかを読者にも伝えやすいという一挙両得な構築ができてしまう。


 そんな素晴らしい手法なのです。


 実在する作品で例をあげると

 巷で大人気、アニメ映画の日本興行収入で1位に輝いている

『鬼滅の刃』は、まさにこの「対比」という構図を軸に、様々な設定やストーリーを構築されていると思われます。


・「人間」と「鬼」

・「兄」と「妹」(または「兄」と「弟」)

・「親」と「子」

・「師匠」と「弟子」

・「天才(才能あり)」と「凡人(才能なし)」

・「高貴」と「下賤」(生まれの違い)

・「激情」と「無情」

・「長所(美点)」と「短所(欠点)」

・「美しさ」と「醜さ」


 ……等々。

 上げていくとキリがないくらいに様々な対比の要素が混ぜこまれており、

 大きな章ごとに、どの対比や関係性をピックアップして山場として表現するか、という部分がはっきりと描かれています。


 注目して解析していくと

 登場キャラクターごとに1つの対比ではなく、重ね掛けで色んな対比構図を作っていっているのが分かってきますね。


 この作品でとても丁寧に、気を遣われているなぁと感じる点は、先ほども挙げた「分かりやすさ」です。


 魅力(どう楽しむか)が分かりやすい作品は、とても強いのです。


 老若男女、どの年代でも性別でも関係なく、面白い点を見つけやすく没頭できる。

 物語の魅力がこれでもかという程つまった作品だと思っています。

(だからこそ日本の歴史に名を残すほどの作品になっているのだろうと)


「対比」要素を自分の物語に混ぜこむのは、とても単純で、難しくないやり方です。


①:なにか1つの設定を決める

②:登場キャラクターのどれかに、①とは正反対の設定を盛り込む


 ……これだけです。

 たったこれだけで、作品の「面白さ(魅力の伝わりやすさ)」が一段階あがる可能性が出るのです!


 まぁ作りやすいからといって、その点を使って面白くできるかは別の問題となってしまうので、その辺りが悩みどころなんですけれどねー……。


 どう表現し、どう見せていけば、盛り込んだ対比を楽しんでもらえるのか。


 花咲もずっと悩んでいる部分になります。

 正解なんてないのかもですが、何とか、歩みを止めずにより腕を上げていきたいですね。


 という訳で「対比という構図について」でした。

 少しでも、プロットを構築する際に指針となる情報であれば良いのですが……。


 あ、ちなみにADVゲーム「ウチのペット事情」でも、対比構図を軸にしている部分があるのです。


■あらすじ


 とある使命を帯びて

 天界から人間界にやってきた半獣天使『ミント』は

 その途中で力尽き行き倒れてしまう


 平凡な大学生である主人公は

 彼女を偶然発見し助けたことで懐かれ

 半ば強引に家に居つかれてしまったのだが

 小生意気だが可愛く素直なミントにメロメロ


 動物のような耳と尻尾を持つ天使から「マスター」と呼ばれ

 まるでペットのように甘えてくるミントとの蕩けるように甘く賑やかな

 いちゃいちゃラブラブ生活を楽しむのだった


 そんな生活の中に獣人悪魔『リリー』と

 ミントの妹天使『カカオ』も乱入してきて

 ドタバタと楽しい騒動が巻き起こる――!



 という感じにて

 主人公は「人間」であり、ヒロインは「天使」です。


 その点についてが主な対比構図であり

 考え方や目的の違い、何を終着点として、それぞれが動いていくか。


 それを物語の山場としてプロットを構築させていただきました。

 興味があったら、ぜひ……!!



 それでは、今回の項目はここまでとなります。

 最後まで読み進めていただき、誠に有り難うございました!

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