第44話 物語内の「武器(魅力)」を作ろう
今回は、自作小説、自分で作った物語の中にはどんな「武器(魅力)」があるのか。
いえ、作る時に武器を意識していたならば、プロットを構築する時にどう役に立つのか、という考え方を掘り下げていきたいと思います。
物語、プロットを構築する時には、色々な項目を考える必要が出てきます。
キャラクターであったり、ストーリーであったり、それらを息づかせる為の各種設定であったりと、本当に細かな事まで詰めていきますよね。
きっとそれは、どんな作者も同じだと思います。
物語でお金を稼ぐプロであっても、お金なんか関係なく、書き連ねた物語を誰かに読んでもらいたいと気合を入れる方であってもそうかと。
自作小説に目を通してくれる読者がいてこそ、物語における「どう楽しませるのか」という視点が決まっていくのでしょう。
自作した物語内のどういう「武器(魅力)」で戦えば、より上手に楽しませられるのか。
他の作者と比べても、この要素での楽しませ方ならばきっと負けない、そう意識する為の「軸」と言ってもいいかもですね。
……まあ簡単にまとめてしまうと、ですね。
これから自作物語を読む予定の誰かに「これは何がどう面白いの?」と聞かれたとき――
自信を持って「ここが面白いよ!」「こう楽しむといいよ!」と答えることが出来る、そういう要素を意識的に考えて、作っていこう、そういう項目になります。
それが昇華していくと、作品における「テーマ」にもなっていくかもしれませんね。
閑話休題
という訳でここからは、どう意識して設定すればそれを考え、まとめる事が出来るのかという部分を掘り下げていきたいのですが……。
この項目を書こうと思ったのは、後に例題に出す作品を読み返していた時に、この作者は本当に凄いな、この魅力を自分の作品でも真似できるだろうか……いや、自信がないな、と考えてしまった時なのです。
それは前回、前々回の項目で掘り下げたプロット構築の練習方法、「インプット」と「アウトプット」に関係しています。
作品を読んだとき、無理やりに構造を解析(インプット)することは出来るが、真似できない。
再現する為の発想力やまとめ方という「才能」が足りていない――
そう思ったときに、この要素は作者が作品へ盛り込める優れた部分、唯一無二、作者が持っている「武器」なんだな、という単語が思いつきました。
その作品とはズバリ、少年ジャンプ連載(今はジャンプSQに移動)している
葦原大介 先生作の――『ワールドトリガー』
という漫画作品になります。
もう20冊前後も発行されているので、愛読されている方も多いと思われます。
この作品はもうホント、誰もが真似することの難しい「才能」がビシバシと伝わってくる傑作です。
花咲が読んで感じた、この作品内における最大の武器は――
「集団VS集団」という描写が、抜群に上手だという部分になります。
世の中には、戦闘描写が盛り込まれた作品が数多くありますよね。
作品舞台がファンタジー世界でも、地球が舞台でも戦う描写を軸に構成している作品は多いでしょう。
もちろんその中には、集団VS集団を描く物語も多く存在しています。
しかし大抵の作品における戦いは、多くが「1対1」で構成されており、集団で行動していても、集団VS集団の構図になってもなお、その中で細かく場面が分かれて、たくさんの「1対1」を描写する事で勝ち負けを描写しているように思うのです。
(くさしている訳ではないので注意、それで面白さを演出するのもまた技術が必要なので、難しい事には変わりありません)
その中で『ワールドトリガー』は、ほぼ常に戦闘描写が「乱戦」なのです。
3対3対3で始まったかと思えば、実際に戦闘が始まる頃には「2対1」や「3対2」が同時に起こったり(戦わないで戦況を見る人員が居たり)、当然細かく勝ち負けが存在しているので、倒され人数が減って、さらに離れていた味方に合流することで「2対1」+「3対2」が、次の場面では「1対1対2」になっていたりと、流動的に戦いに参加している人数が変化していくのです。
……想像してみてください。
それを分かりやすく読み手に伝えつつ、尚かつ「面白く」それでいて「各キャラクターを書き分けきちんと魅力的に描写する」事が、どれだけ労力のいる事なのかを……。
少なくとも、花咲の頭では、ここまで面白くまとめることは出来ないだろうなと、読み返す度に感嘆させられるのです。
漫画と小説では技法も、魅せ方も変わってくるので、一概に同じ「面白さの伝え方」を追求する必要はないのですが……。
この漫画を小説に直したとき、その魅力をそのままに文章に落とし込む事が可能なのだろうか、という事を考えてしまったのですね。
この「集団VS集団」を描写するために必要になってくる能力は、大きく分けると「場を俯瞰で見ること」への才覚だろうか、と考えております。
俯瞰、神の視点です。
ただ1人の視点から世界を描写するのではなく、まず世界があり、その中に多くのキャラクターが生きている、という魅せ方になります。
つまり漫画作品である『ワールドトリガー』を小説に直したとき、正しく魅力を伝えるには「三人称視点」の小説が望ましいだろうとも考えました。
三人称小説は「群像劇」を魅せるにはうってつけの作り方です。
(詳しい内容は『30:「一人称」と「三人称」①(心情と群像)』参照にて)
場面の切り替えが多い内容では、この作り方がとても合っています。
主人公以外にも、主人公と同じくらい魅力的なキャラクター描写がたくさん作れるんですね。
「集団VS集団」とは、登場するキャラクターの多さにも繋がっていきます。
作品内には良いやつもいれば、悪いやつもいるでしょう。
戦闘アクションが売り要素の作品ですが、同じ「相手に勝ちたい」でも、正々堂々を好むキャラもいれば、ちょっと小ずるい手を思考に織り交ぜるキャラも、勝ちたいけれど出来る限り戦いたくない臆病な性格なキャラだって出てきます。
その細かなキャラ描写をどう魅せるかもまた、作者の実力なのでしょう。
例に出した作品は漫画なので、絵やコマの割り振り方、セリフがなくても表情や目線で奥行きを伝えられます。
深く語らずとも、説明しなくても、描写させた行動からキャラクターのバックボーンを感じさせる――これもまた「集団VS集団」内に含まれている魅力です。
舞台設定が「地球VS異世界」のため、軍隊のような組織が主な活動場所になっています。
主人公が強くなっても、同じ組織内にはもっと強いキャラが存在し、なぜ強いのか、強くなろうとしているのか、1人ひとり「人生」を感じさせられる。
だからこそ愛着も沸き、もっと各キャラクターの描写が見たい、読みたいと、読者を興奮させてくれるのです。
(ちなみに花咲が一押しのキャラは生駒隊長です。面白くて可愛いんや彼は……)
ああ、このキャラはこういう人生を歩んできたから、こういう容姿で、こういう身体能力があって、出来ることがこれだけあって、でも自分には出来ないことも理解してしまっているから、こういう性格になったんだな、等と、キャラクターがその世界の中で「生きている」ように感じられる。
それが、作品の軸である「集団VS集団」という魅力であり、読者に自信をもって「こういう部分が楽しいよ!」と勧められる「武器」として確立していくでしょう。
……えっと、どうでしたか……?
書いている途中に熱くなってしまい、支離滅裂になっていたら申し訳ないです。
つまり作品における「武器(魅力)」を意識しておくと、話の展開を作るときに、どう構築すれば読者に楽しんでもらえるか迷ったときに、一つの指針として役に立つ。
という事を、なんとか伝えられればいいなという項目でした。
例題に出した『ワールドトリガー』は、花咲が感じた魅力である「集団VS集団」がとても多く盛り込まれており、そこから様々な面白さが広がっていっています。
原作の漫画だけではなく、アニメも放送されているので、もしまだ見たことがないという方がいたら、どうぞ触れてみてください。
超絶に面白くて、何度も読み返したくなる。そんなオススメ作品です!
ここで、ちょこっと裏話。
花咲がメインシナリオライターで書かせていただいたPCゲーム作品「封緘のグラセスタ」ですが、お話の構築から大きく花咲が関わっております。
何も企画が進んでいない状態、作品の成り立ちから全体像を構成していったのですが……。
(ビジュアルファンブックにも似たような事を書いている内容なので興味があったら是非に)
このゲーム作品の大きなテーマは「成り上がり」(身分的弱者から強者へ)でした。
強者は何をしても許され、弱者は理不尽を強いられる「差別」描写が展開を支える肝になります。
そして舞台である「迎撃都市グラセスタ」が、主人公がゲーム内で行動する起点になっています。
この「成り上がり」「差別」「迎撃」という部分が、お話の山場やオチ部分に繋げるための軸になっていったのです。
奴隷身分から始まり、兵士を動かす立場へ成り上がり、そして敵対軍勢を「迎撃」し――世の差別構造を革命により変えようとしたラスボスと対峙する。
それがテーマであり、この作品における「武器(魅力)」になるよう、お話を考えていった、という裏話でした。
(そう成るよう意識した、という形なので、それがきちんと描写できているかは……作品をプレイしていただき確認してもらえればと)
プレイしていただいた方の中で、それが武器(魅力)として描写できていないと感じた場合は申し訳ありません……。
(花咲の実力不足です)
つまりまとめると、
・どう迎撃すれば一番盛り上がるか、という山場の指針「迎撃」
・全体構造としての主人公の行動指針「成り上がり」
・作品を通してキャラクターが悩み行動する核となる部分「差別」
これらを軸に、作品全体としての雰囲気作りや、細かな設定や章構成、各種イベント等々、プロット内容を詰めていったのですね。
(結構ぶっちゃけてますねコレ)
……どうでしょうか。
「武器(魅力)」を意識しながら構築すると、どの展開にも統一感が生まれ、作品内における「王道」として面白さを伝えられる軸になっていく。
そんな感じの考え方、読者に作品を「どう楽しんでもらうか」の掘り下げ方でした。
ここまで読み進めていただき、ありがとうございます。
次回の項目は……うぅ、またもや未定です。申し訳ない。
何か思いついたら書き、まとめたいと思います。
それでは今回は、自作小説の「武器(魅力)」を作ろう、意識しようという項目でした!
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