第40話 「第三者視点」を掘り下げ「マウント(俺つえー)」を演出する

 今回は、「第三者視点」という考えを掘り下げて、物語における「マウント」表現の上手い使い方を考察しよう、という項目になります。

 しかしまずは、この言葉から始めるのが適切でしょう。


 更新が遅れてしまい、誠に申し訳ありませんでした……!


 え、前の更新っていつ? (確認)へえー……に、2月の初めですか~……。

 本当に、花咲のものぐさ加減が遺憾なく発揮されていますね。面倒くさがりの真骨頂、ここに極まれり。

 うぅ、申し訳ありません……。


 しかし少しばかりお待ちを、どうか小さな言い訳をさせてくれませぬか。

 10ヶ月も期間が空いてしまった事には、実はとてつもない理由があるのです……。あったら良いな。

(怪我や病気とかではないのでご安心を)


 それはズバリ、これです――


 自分の中で上手く「言語化できていない」項目を、偉そうに講釈垂れるなんて何様だ、という考えが脳内を支配していたのです。


 実はこの10ヶ月、定期的に(と言っても1ヶ月に一度くらいですが)当項目を書こうとしては、途中で心が折られる日々でした。

 それだけ「マウント表現」というものは扱い方に気を配らなければならず、油断すると一瞬でヘイト表現に成り代わる、毒薬のような表現なのだと改めて認識していたのです。


 その他にも、友人発端の同人活動に参加してみたりと、言い訳じみた理由を述べれば枚挙に暇がないのですが、一番大きな理由を挙げれば、それは「内容をまとめる自信がない」というものでした。


 しかし今回は違います。頑張ります。

 心をバッキバキに折られながらも、キーボードをカタカタと打ち鳴らしていきます。


 心機一転、会社で使用しているテキストエディタを自宅PC用に購入し、お仕事の心意気でエッセイを綴りましょう。

(お仕事なら、書けないよぅ、という泣き言は通じないですものね。さようならWord、君とは随分と長く苦楽を共にした……)


 閑話休題


 それでは見苦しい言い訳合戦をそろそろ止めて、本題に入らせていただきましょう。

 今回は、「第三者視点」という考えを掘り下げて、物語における「マウント」表現の上手い使い方を考察しよう、という項目になります。

(2回目)


 そもそも物語における「マウント」とは何か?


『マウント』とは――自分の優位性をアピールすることを意味する。


 語句の意味を調べると、こう出てきました。

 ふむふむ、優位性をアピールですか……。

(他にも相手に馬乗りになる、という意味があるのですが、物語においてだと「優位性をアピールする」という意味が当てはまるでしょう)


 ……よし、気合を入れていきましょう!!


 物語内で「マウント(俺つえー)」を演出する場合、特に気を配らなくてはいけないのが、ヘイト表現になっては台無しになる、という事です。


 少しばかり、妄想に身を投じてみてくださいませ。

 貴方の身近には、日常的に「マウントを取ろうとする方」はいませんか?


 それは日常会話の中にも多く潜むもの。

 例えば自分が話題を振った時に……。


「それ違うよね(まず相手の否定から入る)」

「そんな事も分からないの?(呆れの感情を含ませる)」

「もっと面白い話があるんだけどさ(俺ってすごいだろ?)」


 などのような、切り返しをする方の事だと考えてください。


 …………。


 思い至る方は、いらっしゃったでしょうか。


 はい、妄想終了です。

 そこでズバリ問いかけます。


 その方のこと、好きですか?


 ……はい、書き方にズルい誘導が入っているとはいえ、おそらく多くの答えは一致しているでしょう。


 どんな小さな表現でも、マウントを取ると相手に嫌われる可能性が高いのです。


 そして、こちらを強く認識していただけると嬉しいのですが……。

 マウントとは本質的に「相手を下げる意図」が多分に含まれています。

 しかし、意識的にせよ無意識的にせよ、相手を下げたらどうなるのか――その相手がどう思うか、そしてその光景を見ている方(読者)がどういう印象を抱くか、そこを考えなければいけません。


 作家とは、シナリオライターとは、言葉による表現で物語を演出する存在だからです。


 その部分を考慮せずに文字を書き連ねると、作者自身にも「読んだ方がどういう感情を抱くのか」予測できないまま、物語が読者へと届けられてしまいます。


 いつかの項目で、キャラ作りにおける要点「悪役の作り方」という説明をさせていただきましたね。

(13:「キャラ」について③(悪役の作り方))


・悪口

・嘲笑

・説教

・上から目線

・暴力

・他者との比較で自分を上げる発言

・他者の目的を邪魔する


 実は、この「相手に嫌われてしまう」表現の内、マウントには下記のような意味合いが含まれていきます。


・悪口

・嘲笑

・説教

・上から目線

・他者との比較で自分を上げる発言

・他者の目的を邪魔する


 これらはすべて、相手を下げる為の表現を意味します。

 どうでしょう、実に多いと思いませんか……?

(暴力以外全てが当てはまってしまうのです)


 せっかく自分の優位性をアピールしたのに、その結果は「相手に(読者にも)嫌われてしまう」キャラが出来上がります。

 そして、上記の表現の中には全て、とある意味合いが隠されているのです。


 それはズバリ――「相手と自分を比べる」という表現です。

(いわゆる比較ですね)


『マウント』とは、優位性をアピールするということ。

 つまり「自分が相手より上だ」と表現する事を指します。自分を上げること、そして相手を下げること、ですね。


「優位性」には基準が必要なのです。

 とある評価を基準点として、それよりも上だとアピールする。これがマウントの本質という事なのでしょう。


 相手と比べ、自分の方が上なのだと示す。


 それがマウントを取るということ。


 ですがこの表現で忘れてはいけないのが、主人公と比べられ、「格下だと評価された相手キャラ」の事です。

 主人公視点からすれば、マウントを取るのは気持ちいいです。人物的な背後関係を物語に盛り込むならば、きっとその相手はムカつく相手、主人公が嫌いだった相手の可能性が大きいでしょう。

(いわゆるライバルキャラですね)


 そのライバルに勝利し、自分の方が評価は上だと周囲にもアピールできたら、それはもう昇天ものの快楽かと思われます。


 しかし、ライバルキャラにも感情があります。主人公にやられたら、悔しいでしょう。悲しいでしょう。

 そして読み手には一定数、「ライバルキャラにも感情移入する方」がいるのです。


 主人公の活躍を楽しみ、主人公に感情移入しながらも、ライバルの境遇にも同情する(理解を示す)


 そんな方にとって、ライバルの評価を陥れる主人公はどう映るでしょうか。


「それ違うよね(まず相手の否定から入る)」

「そんな事も分からないの?(呆れの感情を含ませる)」

「もっと面白い話があるんだけどさ(俺ってすごいだろ?)」


 この表現の感想が、主人公に降りかかるのです。


 ……恐ろしいと思いませんか。

 そう、マウントという「比べる」行為には、必ず「他者を貶める」という表現が隠れているのです――

(そんな描写を意図していなくても、です)


 ――だからこそマウントを取る時は細心の注意を注がなくてはならず、その表現の扱い方は時と場合を考えなくてはいけません。


 ……はふぅ(小休憩)

 ここまで急ぎ足で書き進めていましたが、どうでしょう。

 花咲が悩み、内容をまとめるのが難しいと悶えていた意味合いが少しでも伝えられていればよいのですが……。


 書き手がそんな意図を含めていない場合でも、読み手はその比較から「(作者に)馬鹿にされた」「〇〇を見下してるの?(私の好きなキャラが不遇な扱いを受けた)」という感想を抱く可能性がある。

 まずは、その認識をもって「マウントを取る方法」を探りましょう。


 その解決方法はズバリ、「直接的な比較表現を避ける」ことです。


 可能な限り、物語の中から比較表現を少なくしましょう。

「比較表現を減らす」ことは、読み手の解釈における「(キャラが嫌われる)隙を失くす」ことにも繋がっております。


・上から目線

・他者との比較で自分を上げる発言


 特に、こちらの描写です。

 これらには強く、比較という意味合いが含まれています。


 これはとても言いづらく、しかし現実(リアル)にも物語にも言える事なのですが……。


 気に入らない相手を下げても、自分がその分、高く評価されるわけではないのです。

(この一文が、ここまで読んでもらえた方に大きく伝えたい一言になります)


「自慢」は、受けた相手からすれば当然のように悪感情を抱かれる発言です。

「嫌味」は、受けた相手からすれば喧嘩を売られたも同然です。

「皮肉」は、受けた相手からすれば馬鹿にされたのか? と思われる事が多い表現です。


 うかつに主人公がそう発言してしまうと、一発で読み手に嫌われます。

(そして、その発言の印象が読み手の中に残り、その後に挽回しようとした「良い表現」にも悪影響を及ぼします。よほど上手くやらなければ挽回できません)


 この、「相手を基準にして、馬鹿にして、評価を下げようとして、自分を上げる」言葉には、強い毒が含まれます。

「マウントを取ろうとする」行為そのものが、嫌味になってしまう可能性が非常に高いのです……。


 ……ならいっそのこと、マウント取るの止めたら? という意見は当然あると思います。


 ここまで長々と書き連ねてきて、主人公に「マウントを取る」行動をさせる事は、物語の中では百害あって一利なしなのでは、そういう印象を抱く事もあるでしょう。

 そうしたい、花咲もそうやって物語を構成したい、でも「主人公がマウントを取る」事は、展開上必要な事が多く、避けられない場合が多いのです。

(何よりも、読み手がそれを望んでいる、そういう場合もあるでしょう)


 なので、花咲はプロットを作成する際に、とある気を付け方をしています。

 その例題を、毎度のごとく書き連ねさせていただきます。


 それは、「直接的な比較表現を避ける」事に大きく繋がっています――


■ヘイト表現を薄くしたマウント例


世界観・舞台「魔物が生息するテンプレ的ファンタジー世界の、小さな村」

登場人物:低ランク冒険者主人公(実はめっちゃ有能)、高ランク冒険者ライバル(能力は高いが配慮に欠けている)、魔物被害に遭っている村人たち


・主人公は、とある村が魔物の被害に遭っていると聞きつけ、ギルド経由で魔物討伐の依頼を請け負った

・村に着いたとき高ランク冒険者が現れ、強引な手段で解決しようとして村の住人の反感を買う(村人を囮にする、村に魔物を誘い込んで村ごと燃やす等)

・その結果を見て、低ランク冒険者であるはずの主人公が「もっと上手く」解決する(村に損害なし)

・村人たちの望むように結果を出した主人公が褒められる、認められる

・高ランク冒険者が悔しがる(または主人公を認める)



 ……どうでしょうか。

 上記のプロットにも「マウントを取る」表現が含まれています。

 主人公とライバルに明確な勝敗が付き、なおかつ承認欲求も満たされる。そういった優位性アピール表現を目指しています。


 これによって花咲が気を付けている要点を、少しでも伝えられていれば嬉しいです。


 それはズバリ、「物語の展開を活用し、主人公の優位性をアピールする」という形になります。


 短く「物語上でマウント表現を混ぜる」要点を書き連ねると、こちらになるでしょうか。


・比較表現をする時は、「言葉ではなく物事の結果(展開)で伝える」

・言葉で伝えたい時は、出来る限り主人公ではなく「他のキャラから言わせる」「それが比較された相手キャラならより望ましい」


 マウントを取る、という表現において。

 主人公から直接ライバルに、「どうだ、俺の方が凄いだろう」と言わせる必要はありません。

(そう発言することを目的とした物語なら別ですが、そうする事で主人公のヘイトが上がってしまう事を避ける)


 また、最終的なオチ(結末)の段階で、「主人公が相手より上の立場に立っていれば」マウント表現が成立していると思うのです。



 これが、花咲が10ヶ月以上書こうとして心を折られ続けた、「第三者視点」という考えを掘り下げて、物語における「マウント」表現の上手い使い方を考察しよう、という結論になりました。

 第三者視点という考えを掘り下げている部分は、「マウントを取ろうとする事で相手(&読み手)がどう思うのか考慮する」という部分にあたります。


 いや、表現というものは奥が深いですね……。

 随分と長い期間かかってしまいました、花咲の考えた結論を、上手く言語化できていれば良いのですが、ここでもまた文章で読み手に意図を分かりやすく説明する、という難しさを体験しました。

 ここまで読み進めていただき、誠にありがとうございます。そして更新が遅れてしまったことをお詫び申し上げます。ぺこり。


 という訳で、「マウント表現を有効活用する」という掘り下げでした。

 注意しなければいけないのは、「他キャラを介して優位性をアピールする」表現を多用しすぎると、過剰な持ち上げ、主人公を崇拝する狂信者、という評価が生まれてしまうので、気を配らなければいけないと思うのですが……。

 そこはプロット作りをひたすら勉強、どういう塩梅が適切なのか試行錯誤し続ける、という作者本人の努力が必要になる部分なので、花咲もまだまだ修行中であります。


 最後に、プロの作品の中で、無料で「上手いマウント表現とはどういうものか」を読み進めることが出来る媒体を一つ、紹介させていただきます。

 スマホゲームの金字塔、通称FGO――「Fate/Grand Order」というソーシャルゲームです。


 この作品は実に見事に、「ヘイトの上がらないマウント表現」を実現させています。

 この物語を読み進めた事のある方は、少しピンとくるものがあるかな、と思うのですが……。


 物語を読み進めていくと、「評価が下がる」キャラが極端に少ない事がわかるのです。


 味方キャラも、敵として登場するキャラも、です。

 戦闘描写があり、勝敗が付く、常に展開上に「比較」を盛り込みながら、それでもキャラを嫌いにならない。

 どれだけ気を使って物語を作成しているのか、どれだけ「ヘイトが上がらないよう」展開に注意を払っているのか、感服しながら遊ばせてもらっています。


 皆様も興味があるならば是非プレイしてみて欲しい、そんな作品です。


 ではでは、今回はこれにて終わりになります。

 当エッセイを読み進めていただき、誠にありがとうございます。


 次回は……うーん、そろそろ、花咲が「この世で一番尊敬している人」の話を書いても面白いかもしれません。

 花咲がその人を通して、どれだけ「人と接する時、気を遣うというとはどういう事か」学ばせてもらったか。

 知り得た事に感謝しており、その人がもたらすコンテンツをどれだけ楽しんでいるのか、書く機会が作れれば嬉しいです。

(ちなみに男性です)

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