第39話 「第三者視点」を掘り下げ「承認欲求」を演出する

 お久しぶりです。

 次は何のお話にしようと悩んでいたら、もう年も明けて2019年……もうすぐ平成が終わってしまうのですね。


 相変わらず2か月ぶりの更新になります。花咲樹木です。

(「小説家になろう」様にて“この連載小説は未完結のまま約2ヶ月以上の間、更新されていません。”と表記されたら焦り初めるという)


 どうしよう、どうしようかと悩んでいたら、今までの項目を見ていて気になる点を発見。


「カクヨム」様では各話ごとの累計アクセス数が見られるのですが、どうしてか【6:「第三者視点」とは何か】だけ異様な伸びがあるのです……。

(逆に「小説家になろう」様では、一日ごとの各話アクセス数が見られて良いです)


 この項目、他の話数と比べ、実に3倍から4倍くらいアクセスされているんですね。


 ……なんでだろう?


 そんな分析はさておき、まず目次画面から項目をざっと見たとき、思わずクリックしてしまうほど目を引く何かがある、という事なんだろうと考えました。

(それだけ興味深い項目なのだろうと)


 という訳で、今回は「第三者視点」をもう少し掘り下げ、その考えを作品に生かせるだろうか、という事に挑戦してみたいと思います。


【6:「第三者視点」とは何か】の内容を見返し中――


 ……ほうほう、ふむふむ? なるほど、なるほど。

(こ、こんな賢そうな事を書いていたんですね、約一年前の花咲は……)


 なんだか、よく内容をまとめているなと感心してしまいました。

(変な自画自賛みたいに見えますが、昔に書いた小説とかも読み返す度にいつも思ってしまいます。時間が経つごとにアホになっている気がするのは何故なんでしょう。落ち込みます……)


 一年前の項目を要約すると――

「自分の内面を分析すると、キャラを描写する時に役立つよ」という事を言いたいのですね。

 この花咲樹木さんは。


 その為に、


・自分の言動が、他人の言動が、周囲にどういった印象を与えているか

・または、今までの行動でどういう印象を与えていたか、思い返してみる


 この行動を取ることで、「自分はどういう人間なのか」を探っていこうという内容でした。

 そうして分析した内容は、後々キャラを描写する時の力となり、リアルな行動として作品内で反映されるだろうと。


 はい。


 一年前の項目では「昔の」自分を思い返して内面を分析しよう、というものでしたが、今回は現在進行形における自分を分析する手助けになればな、と考えております。


 これは誰しもが意識的にしろ、無意識的にせよ、少なからず行っていることだろうと思うのですが……

(行っていない場合、周囲の人達からどう思われているのか、想像するだけで恐いものがあります)


「この発言で、相手はどう思うだろう?」


 誰かと話すとき、こう考えたことはないでしょうか。

 それは相手を傷つけたくないというものだったり、相手を不機嫌にさせない為の気遣いだったりします。あるいは、その逆の少し意地悪な心境だったり。


 自分の言葉で、相手の感情を推し量る。または操作する。


 そういった「考え方」ですね。


 今回はこの考え方の掘り下げに特化させていこうと思います。


 これは大人になればなるほど、その機会は増えていくものかなと思います。

 学校や会社といった集団に属す機会が多くなれば、今の「自分の立場を壊したくない」といった心理が大きくなっていくのでしょう。


 うかつな発言で、人間関係で失敗したくない。

 引いては「周囲から悪感情を持たれたくない」という真っ当な感情です。


 この考え方は、キャラクターを描写する際の関係性にも通じていくものがあると思われます。


 それは――「承認欲求」と「マウント」に深く関係していきます。


 最近の作品では、これを描写しているかどうか注意しているなと感じる部分なのですが、うかつな発言をするキャラクターは、「頭が悪い」として嫌われてしまう危険性が高くなっているように思えます。


 読み手はだんだんと、「すべて上手くいく」展開を望む傾向が強くなっているよう感じるのです。

 お金をかけなくても作品を読めるネット小説では、特にそうなのかもしれません。


 周囲から「褒められる(承認欲求)」展開を作り、

 周囲に対して「上から目線で物を言える(マウント・俺つえー)」人間関係を構築する。


 ……よく「なろう系」と馬鹿にされてしまう典型ですね。

 近年で人気の出ている作品は、実に上手くこれを取り込んでいます。

 無理やりに分析すると、そうすれば「作品を読んだ人間が“優越感”を疑似体験できる」からかもしれません。


 しかし、これを上手く演出するのは簡単ではありません。

 思った以上に「文章にて読み手の感情を推し量る技量」が求められます。


 すべて上手くいくなんて、現実味がない。

 そんな意見を上手く躱す為に――「この発言で相手はどう思うだろう?」という考え方が関わってくるのです。


 褒められて嫌な気持ちになる方は少ないと思います。

 その発言をした相手がどんな意図であれ、褒められるという事は「承認欲求を満たす」形に繋がっているからでしょうか。

 実際、営業でもセールスでも、まず相手を褒め、否定しないことが基本筋でしょう。


 しかし、読み手は「主人公ではありません」

 いくら主人公と自分を重ねて読む人でも、その世界観に読み手が存在している訳ではないのです。

 そして、実際にその本の中に存在している訳でないからこそ、「なぜ相手はこう発言したのだろう」という疑問を挟む余地が出てくる「時間」があります。


 作中に、その疑問を納得させられるほどの答え(感情)が描写されていなければ、たとえ褒められる展開を作っても、読み手からは「安易な展開」として嫌われる可能性が出てきます。


 それは、気持ちが冷める、という現象に繋がっていくのかもしれません。


 作中描写で読み手に共感してもらうには、「この発言で相手はどう思うだろう?」が必要です。

 相手が、なにを言われればどういう感情を抱くのか、それを探っていきましょう。


 その始まりは、「第三者視点」で自分の内面を覗き見ることです。


 まずは――「自分がどんな状況だと怒ってしまう」か考えていきましょう。


 人間、余裕がある状態の時は「理想の自分」を振る舞えますが、余裕がなくなった際は「本性が露わになります」


「怒る」という感情は、本性が出ます。

 どうしても隠せない個人ごとに備わっている本質なのです。

(某ゴ〇さんも第一巻で語っていましたね。「その人を知りたければその人が何に対して怒りを感じるか知れ」と)


「自分が何に対して不機嫌になるか」を考えていくと、少しずつ「相手が何に対して不機嫌になるか」の境界線もだんだんと見えてくるはずです。

(ただし、自分が嫌なことは相手も嫌だろうを信じすぎてしまうと、思い込みが先行して失敗する可能性も出てくるので注意)


 ちなみに一例として花咲の内面を明かしてしまうと……。


・相手をあえて傷つける物言い&相手を不快にさせて喜ぶ様

(気遣いの足りない言動を見ること。20代くらいから自分が強く気を付けているので、配慮していない様子を見ると「子供かよ」とムカついてしまう)

・雑多な人ごみを歩くこと

(だんだんと休日にたくさんの人が出歩くこと自体に腹が立ってくるという)

・説明書を見ても理解できない頭と容量の悪さ

(機械関係のセッティングにて上手くいかない事に、異様に沸点が低い)



 ……例えばこんな事が起こると、花咲はだんだん余裕がなくなってしまいます。

(あんまり作品に転用できる上手い例じゃなくて申し訳ないですが)


 そして余裕がなくなると、普段は気を付けていることでも、だんだん気を使えない状況になってしまうのです。


 主人公を格好良く描写したい。

 主人公の言動を馬鹿にされたくない。


 そういった願望を持ちながら作品作りする際は、

「余裕がない状態でも失敗しない」ようキャラを描写すると良いのかなと思われます。


 そこに気を付けると、読み手が思い描く理想の展開が、作中の展開と一致するでしょう。


 作品を見ながら、「自分だったらこんな発言しない」と思ったことはないでしょうか。

 この考えは、作者の理想と読み手の理想の間で起こる齟齬が一因になっているのかなと思われます。


「自分だったら」と思ってしまう作品は、「主人公の言動で共感させる」演出が効果的に働いていない可能性が高いのです。


 読み手は常に「余裕がある」状態であり、だからこそ「失敗しない」「本性を出さず上手くやる自分」を基本として思い描いています。


 物語は展開に起伏があるので、どこかで必ず主人公(キャラ)の感情が揺れる展開が出てきます。


 その「感情が揺れる」展開に、「自分だったら怒ってしまう」場面を混ぜてみましょう。

(普通は怒るよね、という場面で構いません。読み手もそう感じるという共感の為になので)


 そして、そんな場面を描写する際は、思い描く「理想の行動」を主人公に取らせましょう。

 すると読み手からは「自分と似ている」という共感が生まれる可能性が高いです。


 読み手の承認欲求を満たす作品は、ここを上手く描写しているのだろうと考えています。


 主人公の余裕がない場面を作った際に、「失敗してしまう」「うかつな発言をしてしまう」描写をしてしまうと、読み手に与えられた「時間」が「自分だったら」を引き起こしてしまうでしょう。


 すべて上手くいく展開を好まない、描写したくない。

 そう考えている作者様は、その「失敗してしまう」「うかつな発言をしてしまう」場面を、余裕がある状況の時に持っていくと――キャラの「個性」として受け入れられます。

(ギャグっぽく描写するとなお良し。余裕のない状況で挽回していきましょう)


 致命的な失敗を避けるだけでも、無理なく承認欲求を満たす形を演出できます。


 それには、「余裕がない」状況におけるキャラの行動が、深く関わってきているのだという「考え方」でした。


 ……どう、でしょうか?

 少しでもネット小説における作品作り、キャラクター描写の手助けになれば幸いです。

(あくまで俺つえー的な承認欲求の満たし方の一例なので、一般文芸などでは通用しないかもしれないので注意です)



 あ、そういえば、これは一例なのですが……。

 花咲が物書きを目指す影響となった友人T君は、その昔、アルバイト時代にとてつもない方法で人間観察をしていました。


「相手を怒らせると本性がわかる」と言って、人となりを探る為にあえて怒らせてみる、という方法を試していたのです。


 漫画かよ……。と思うと同時に、すげえ人だと仰天しましたね。


 だって、「怒らせることで発生するリスク」を考えないという強さを持ち合わせていなければ、出来ない行為です。

 強さというと語弊があるかもですが、「周囲の人からどう思われていても関係ない」という軸でしょうか。あるいは、後から挽回できる自信がある?


 感情の高ぶりは、そういった周囲への「気遣い」とは別のところにある場合が多いです。


 このキャラは「何に困っていて」、「何を目的としており」、「何をされると怒るか」

 これが決まっていくと、そのキャラの性格や個性が自然と定まっていくでしょう。



 それでは、今回はこれにて終わりになります。

 今回の項目は「承認欲求」でしたが、次は「マウント」について掘り下げる事になるでしょうか。


 こちらも俺つえー的な展開として欠かせない描写ですね。

 しかしこれは、皮肉と同じく「失敗すると不快にさせてしまう」危険性を孕んでいるのです……!

(という引きで終わるという)

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