第38話 「皮肉」という表現について
ついに、ついにお仕事でシナリオ担当として参加させていただいたゲームが発売と相成りました。
めでたいですね!!(*^▽^*)
『封緘のグラセスタ』という、傭兵として参加した戦争が負けてしまい、敗残兵となり、魔物と争い続けている国に奴隷として売られてしまう、そんな主人公が最下層の身分から成り上がっていく物語です。
ご購入していただいた皆様に、楽しんでもらえていれば嬉しいです!
今回の項目は、そんな旬な主人公「ジェダル・シュヴァルカ」君に関連しているものにしようと考えております。
会話のやり取りにて、面白さを表現するエッセンスの一つ。
――「皮肉」についての掘り下げになります。
『封緘のグラセスタ』作成にあたり、実はシナリオ部分で特に注意を払っていたのが、この「皮肉」という表現でした……。
ジェダルは主人公であり、物語が全体的に一人称視点で進むため、かなり出番が多いです。
その中で、彼は性格からか、とっても「素直じゃない」んですね。
褒められるとはぐらかし、女の子から言い寄られても煙に巻く。
そんな男なのです。
しかし、その一方で病的に律儀であり、「一度交わした約束は破らない」という固さを持ち合わせております。
そうなった理由はストーリー進行にて明かされるので、ネタバレを避けつつ、今回の項目を書き連ねていきましょう。
閑話休題。
そんなシナリオ作成の最中、なぜ「皮肉」表現に注意を払ったのか。
その理由は、花咲がキャラを描くにあたり先ず一番に気を付けている部分でもある、
――「好かれるよりも、まず嫌われない」という事にかかってきています。
その詳細は【「キャラ」について③(悪役の作り方)】という項目にて、説明させていただいております。
簡易的に内容を縮めると、キャラを作る時、キャラを表現する時は、好かれようとするよりも先ず、「嫌われない」ように注意しよう、というものですね。
・悪口
・嘲笑
・説教
・上から目線
・暴力
・他者との比較で自分を上げる発言
・他者の目的を邪魔する
これらを下手に表現すると、キャラが嫌われてしまい、続きを読もうとする気力を削ってしまう危険性がある、という形で説明させていただきました。
…………。
えっと、
こんな事を偉そうに言っておいて、ジェダル君が、プレイしていただいた大勢の方から嫌われていたら、大分滑稽なのですが……(笑)
花咲もまだまだ修行中の身、完璧に出来ている訳ではないのです!(ただの言い訳)
という訳で、これが正解です、という訳ではなく、表現の気を付け方、という形で掘り下げていきたいと思います。
どうかお付き合いいただけると嬉しいです。ぺこり。
それでは、
なぜ「皮肉」表現は特に注意を払う必要があるのか――
それは、一歩間違えてしまえば、キャラが嫌われる可能性の高い表現の一つ「悪口」になってしまう危険性が高い、という事にかかっています。
そもそも「皮肉」とは何か、という事なんですが。
辞書で調べると
・相手の欠点や弱点を意地悪く遠まわしに非難すること。また、その言葉やさま。あてこすり。
と、出ました。
なるほど……。
上記の説明から見ると、まず皮肉には「相手を非難する(相手を下げる)」表現が含まれている、という事が分かりますね。
それでも「悪口」になってしまわないよう注意する。
嫌われてしまう事を避けたいから。
……うーん、これって、割と難しいよなぁ。
という事が、伝えられていれば嬉しいです(笑)
作中にて、ジェダル君は事ある事に皮肉を言うのですが、「相手を下げる」意図を可能な限り含めていません。
からかう(おちょくる)。はぐらかす。論点をずらす。煙に巻く。
そんな表現として皮肉を用いている場面を多くしているのですね。
もう少し踏み込むと、可能な限り「相手を傷つける」意図を含めない形にしていくと、悪口にはならない皮肉にもっていけるのかな、と考えております。
とは言っても、ここまでの書き方では、ちょっと分かりずらいですよね。
という訳で、恒例の例文を書き連ねていきます。
■例文
「意外だ。君に月を眺めて風情を楽しむ感性があったとはね。うん、でも絵に残しておきたいほど似合っていると思うよ」
「……皮肉か口説くのか、どっちかにしろ」
「おや、君はどっちを望んでいるのか興味があるね」
「オレの前から消えてくれ」
第三の選択肢を突きつけると、肩をすくめて苦笑いを浮かべていた。
■例文ここまで
……はい、という訳で、『封緘のグラセスタ』から、花咲がお気に入りのシーンを抜粋させていただきました。
体験版として公開されている範囲の中にあるので、もしかしたら見覚えのある方もいらっしゃるかもしれませんね。
この例文にて、どこが皮肉表現なのかといえば……。
実は全ての文章が「皮肉」になっております。
(だから気に入っているのですが)
何故かは、もうお気づきの方もいらっしゃるかもですが、この会話――
実は「男二人」がやり取りしているんです……。
フフフ、実に気持ち悪いでしょう( *´艸`)
(雑誌のインタビューでも答えているのですが、このジェダルと会話している「ユトレ」というキャラが、実は作中で一番お気に入りなのです笑)
この例文にて、なんとなーく、花咲が目指す「皮肉」表現を伝えられたでしょうか。
「相手を下げる(傷つける)」意図を可能な限り避けて、
からかう(おちょくる)。はぐらかす。論点をずらす。煙に巻く。
こういった表現に近づけていく。
それが、作品全体を通して理想としていた「皮肉」という表現になります。
すっごく簡単に言うと、アメリカンジョークに近いです(笑)
■例文①
三人が自分の彼女のことについて喋っていた。
A「俺の彼女は顔はかわいいんだが性格が超悪いんだ」
B「俺の彼女は俺と付き合い始めてから10キロも太ったんだぜ」
C「俺の勝ちだな。俺の彼女は性格もルックスも最高。唯一の欠点は、のどぼとけが異常に出ていることぐらいだ」
■例文②
A「おまえ、万引きなんてやめろよ! どこでそんな事覚えたんだよ!」
B「君と出会ってからだよ」
こういうのですね。
会話のやり取りを見た時、ちょっとクスッとくることを目指す。
それが、花咲が理想とする「皮肉」表現になっております。
そして実は、この指針を花咲に植え付けた作家先生がいるのです。
「キノの旅」シリーズ等で著名な時雨沢先生です。
先生は、抜群に会話表現での「皮肉」が上手いと感じております。
決して「相手を不快にさせない」まま、面白く会話を構築しています。もし著作を読む機会がありましたら、どうぞ注目してみてくださいませ。
まるで教科書のような表現の上手さです。
花咲も勉強させていただいております。
ではでは、今回はこれにて項目を終えたいと思います。
少しでも会話表現の参考になれば嬉しいです。
花咲ももっともっと、上手に面白い会話を構築できるよう、精進を重ねていきます。
絶賛発売中のゲーム『封緘のグラセスタ』、よろしくお願い致します!(*^▽^*)
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