第24話 「ストーリー」について⑤(布石と伏線)
それでは、今回も「ストーリー」の組み立て方についてを、掘り下げていきたいと思います。
前回の項目から連なる、アイデアから逆算した「布石」と「伏線」の置き方、という形に特化させていくと思われます。
しかし振り返ってみれば……、当エッセイも、もう少しで本一冊分に届く文字数を書いているという恐怖。
(物語の続きを書けばいいのに、と突っ込まれても言い訳の利かない状況ですね)
ですがエッセイを始めてみて思うことが一つ。
すごく、エッセイ楽しいです。
この「楽しい」という言葉の内訳には、「楽(らく)」という意味も含まれています。
物語を書き上げるよりも、体感では数倍、楽なんですよね……。
文章で読み手に面白さを伝えよう。そう意識しなくてもいい媒体というのは、何とも癒されます。
(そして不定期更新というのが、さらに良い)
そして当エッセイを読んでくださった方が、その内容を楽しんでくれたり、参考になったなぁと少しでも感じてくれれば、なお良しですね。
どうしても物語やエッセイ等を書いている時は、インプットが滞りがちです。
(実は花咲は、趣味で物語を打ち込んでいる際はラジオとかアニメ、ドラマ等を流しながら書いているので、完全にインプット無しではないのですが)
花咲は個人的な趣味でインプットをしないまま書き上げていると、あまり『考える』余地がなくなっていく人物なので、定期的に世の中にある作品群を見て楽しむ時間を作っているのですね。
(今期のアニメは見るものが多くて良いですね。個人的な推しは、ゆるキャン、高木さん、恋雨の三連星でしょうか。登場人物たちが可愛くて尊いのです……)
いつか物語の構成法や、文章の基礎知識、ここを意識したら考え方が変わるかも、という項目を書き終えたら、ごくごく個人的なお話をエッセイ内でしてきたいなぁと考えています。
花咲が好きなもの、好きな要素やエッセンス、好きな人物やオタク趣味の話等々。
それらを項目にてまとめられる日が来たら、きっともっと楽しくなるんだろうな、と考えています。
(こちらも読んだ方が、花咲がその部分のどこを魅力的に感じ、どう物語に取り入れているかという事に注目していくつもりではあります)
という訳で、今回もカキカキしていきたいと思います。
しばしの間、付き合っていただければ幸いです。ぺこり。
閑話休題
それでは今回は「布石」や「伏線」の置き方について、掘り下げていきたいと思います。
ネタやアイデアを成立させる為に、布石や伏線を置いていく、という考え方ですね。
言い換えるならば、読み手がそのネタに接触した時、違和感のないよう前置きしておく、という形でしょうか。
そしてこの置き方には、二つの種類があると、個人的には考えています。
①物語を構築する際(書き上げる前)に、あらかじめ伏線の配置を決めておく方法
②そう意識していなかった文章を、布石として活用する方法
(序盤の文章をさらい、後半の文章に生かす)
こちらの二つです。
前回の項目にて、拙作を作成する際にネタやアイデアを整理して、物語のプロットを固めていきました。
①の例は、「願いは等価交換。神様は願いを叶えるが、代わりに夢を奪う」という設定に大きく関わってきています。
この設定が、拙作の根幹と言ってもいいくらいの軸になっているので、これを最大限に利用する形へ持っていったのですね。
物語の最後で、ヒロインが「何も損なわない形で願いを叶える(幸せになる)」という、設定を崩した状態でいかに『テーマ』を体現させるか、というものを伝える為に『伏線』を置いていきました。
ここまでの文章では掴みにくいと思うので、章構成による伏線の配置を示していきます。
①「一章」内の伏線
・主人公――
「最強の剣が欲しい」→「最強の剣を貰う。ただし木刀、効果は島の中限定」
(作中にて表現)
・ヒロイン――
「樹の精霊術の使用(元々は風属性のみ)」→「対価として、使う度に人間じゃなくなっていく」
(過去のエピソードとして表現)
②「二章」
・サブキャラ①(ロッコ)――
「父親を生き返らせて欲しい」→「肉体のみ蘇生、魂は別人」
(過去のエピソードとして表現)
・サブキャラ②(ジャック)――
「恋がしたい」→「顔がない状態でも、相手に言葉を伝えられる手段を得る。しかし嘘がつけなくなる」
(作中にて表現)
③「三章」
・島の中に生息するアリ――
「他の生物に負けない身体の大きさを願う」→「世界樹を食べると叶う。代わりに心を失う(精霊の支配下に入る)」
(過去のエピソードとして表現)
④「四章」
・ラスボス(樹精霊ドライアド)――
「ヒロインの為に身を引く(死にたい)」→「死ぬのは叶わず」
(神様に願う表現はなし。ただし、思う通りにはいかない)
・主人公――
「騎士としてヒロインを救う(死のうとする)」→「その行動は阻止される」
(神様に願う表現はなし。ただし、思う通りにはいかない)
・ヒロイン――
「みんな仲良く」→「自分勝手な行動を取る二人をいさめ、何も損なわず願いを叶える(幸せになる)」
(神様に願う表現はなし。わがままによって、作中唯一、思いを通す。等価交換の法則をぶち破る)
……はい、こんな感じになっております。
①~③までの項目が、全て物語の構築の際、事前に考えていた伏線という形になります。
それを表現していない場合(表現の例題が少ない場合)、もしかしたら「願いは等価交換。神様は願いを叶えるが、代わりに夢を奪う」という説得力が足りなかったんじゃないかと思っています。
物語の最後で「等価交換の法則を壊す」ことを表現する為に、序盤から中盤までにかけて、いくつもの「願いは等価交換」の例題を置いていったという形です。
物語の根幹となる設定だからこそ、それを映えさせる為に、設定の説得力となる「伏線」を配置していきました。
他にも拙作ではいくつか伏線があるのですが、一番大きく意識した事前の要素はこちらになります。
伏線という単語だと、少し「伏せている」表現に映るのですが、この要素の一番のキモは、それを表現する際に「読み手に納得させる」ものだと考えてください。
伏線を置かず表現の寄り道ばかりしていると、終盤にてそれを表現する際に「いきなり見せられても……。共感できない」と読み手が感じてしまうことが多いのです。
それを伏線だと意識させないよう文章を作っていくのも、一つの文章力という実力になっていくのでしょうね。
(花咲もまだまだ勉強中です。本来はこうして解説できるほど身に付けられていないのですが)
物語には、全ての要素に意味があります。
キャラ、セリフ、地の文を作る際に――「この要素で読み手に何を説明しているのか」を意識すると、全ての文章が伏線の要素を含んでいく形になります。
その文章で何を説明しているか――キャラの性格や思考、背景描写、ストーリーの流れ、そして『伏線』などがそれに当たります。
物語の最後の説明で「読み手を納得させる」為に、序盤から「関係なさそうで関係ある」よう伏線を見せていく、そう考えるといいのかもしれません。
(拙作は推理もの・ミステリーではないので、あまり隠していませんでした。ファンタジー作品なら、これくらいの方が読み手には分かりやすく伝わるかなと考えております)
なんとなーく、事前に考える伏線という要素を、伝えられたでしょうか。
もう少し細かい文章をさらって、この文章は、物語のこの部分の伏線になっている、と解説できれば良いのですが、それは各話の構造解析という項目にて、やっていく形になると思われます。
(もしかしたら、各話の解説自体なくなってしまうかもですが。申し訳ない)
さて、それでは次の項目に移ります。
これは伏線ではなく「布石」という形になるのでしょうか。
②の例は、物語を書きあげている内に、プロットを調整して面白くする、という形に繋がっています。
これは物語の根幹ではなく、細かなアイデアを面白く見せる、という形が大きくなっていくのかもしれません。
拙作で挙げる例題では――サブキャラ②「ジャック」の存在が、そのもの布石になっています。
拙作の物語の最後にて、
・主人公――
「騎士としてヒロインを救う(死のうとする)」→「その行動は阻止される」
(神様に願う表現はなし。ただし、思う通りにはいかない)
という要素を、先ほど挙げさせていただきました。
主人公が死のうとする際に、「魂がない肉体なら、樹精霊は蘇生して利用できる」という要素の説得力を、ジャックの存在が説明してくれています。
これは花咲が物語を構成する際(まだ書き上げていない状態)には、思いついていなかった要素になります。
「ラスボスに肉体を差し出す為に死のうとする」
(ヒロインの願いを勘違いして、死のうとした)
その行動は決めていたのですが、最初は木刀を腹に突き刺すという切腹ではなく、精霊に精神を乗っ取らせる、という方向性で考えていた覚えがあります。
もしくは、何か願いの結果に絡めればいいか、くらいの軽い考えでした。
(いま考えると、もう一回願いを叶えてもらっているので無理なんですけどね)
物語を書き上げている内に、その方法を思いつき、ジャックの存在を布石として利用しよう、と考え付いた形になります。
②そう意識していなかった文章を、布石として活用する方法
最初ジャックの「カボチャ頭」は、ただロッコの願いの結果の現象、「願いは等価交換」の例題として表現しているだけでした。
(ビジュアルとして、シュールで面白いかな、という軽い思い付きだけ)
ですが「切腹することで、魂は死ぬが肉体を差し出せるのか?」と、ふと考えたことで、物語の結末はあの形になりました。
この手法は、実は仕事で物語で書く際にも、趣味で書く際にも多用しております。
(プロットの大筋を外さないまま、物語の中に組み込むエッセンスとして、利用できる文章を探す)
こういった布石は拙作にいくつもあるのですが、もう一つ例題になりそうな要素を思い出しました。
物語の終盤では、水の精霊術を使用し、アリを撃退しようとします。
その際の「木刀が水に浮く(だから津波の中でも泳いで行ける)」という表現も、物語の終盤に差し掛かった際に、序盤から布石として持ってきたものになります。
津波の表現を書いていた際に、ふと思ったのです。
「いやいや、いくら体力バカの主人公だからといって、波が荒れ狂う中まともに泳げないのでは……?」
その現実的思考が頭の中に降ってきてしまったので、それを崩すアイデアを何とか序盤や中盤から探していきました。
そして「あ、主人公の武器って木刀だ。これは使えるか……?」と利用したのでした。
(おそらくというか絶対、実際の津波被害の際には、木刀では泳げないと思うので注意。もっと大きな木片ならイケるのでしょうか……?)
島に来る際は、鉄製の武器だったから使えなかったが、終盤では木製の武器だったから泳ぐ際の補助に使えた、という表現の布石として、木刀という設定を利用した形です。
なんとなく「既に書き上げた文章や設定を布石として利用する」という形を伝えられたでしょうか?
もちろん物語を構築する際に、事前に布石として文章や設定を配置する、という手法もあります。
②の例題は、意識していなかった文章や設定も、再利用してもっと物語に絡ませられるという形になります。
それでは、今回はここまでとさせてください。
おそらくストーリーに関する掘り下げは、あともう一回続くと思われます。
次は「もし、あらすじを物語を書く前に作成できていたら」という状態を利用する項目になるかと。
当エッセイを読んでくださり、ありがとうございました!
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