第23話 「ストーリー」について④(アイデア逆算)

 それでは、今回も「ストーリー」の組み立て方についてを、掘り下げていきたいと思います。


 前回にて少し書き連ねた「起承転結」という、「ストーリーの導線を作る」に関連する意味合いの、応用編になるでしょう。

(すみません、こちらは応用編パート①になりそうです)


 物語の終わりに辿り着いた時、読み手に「その結末を納得させる」という状態に持っていく為のものになります。


 こちらは『物事の順序を飛ばして組み立ててはいけない』という形の、「導線を作る」という意味合いと、物語の中に「布石」「伏線」を配置する、という意味合いも兼ねています。

 ここをしっかりと作っておくと、読み手に「え、こんなセリフや地の文、展開が伏線だったの?」という驚きを与えられるのですね。

(文章力の項目にて深く解説しようと考えているのですが、ミスリードという手法にも関わって来るものです)


 そんな訳で、今回はアイデアから逆算して布石・伏線を配置する、という項目になるのですが……。


 ですがまずは、こちらも恒例になりつつある、関係なさそうで関係あるお話を書かせていただきましょう。


 それはズバリ――『勝手にキャラが動く』という現象についてです。


 物書きの皆さま方は、キャラが勝手に動いたという経験はあるでしょうか?

 もう少し詳しく書き連ねると、最初に予定していた物語の予定が、書き進める内に「キャラが予定と反して動いてしまい」展開が変わってしまう、という状態ですね。


 これが実は、花咲樹木、経験ないんですよね……。


 これまでの項目を見てくださっている方は、その理由を、なんとなくお分かりでしょう。


 キャラが勝手に動く、という現象は――「プロット通りにいかない」という意味に繋がっているからです。


 だからこそ、プロット通りに書き上げるという手法で進めていると、その現象が起きたら困ってしまうのです。

(他にも理由はあるのですが、理詰めで物語を作っている方は、おそらく同じように経験ないんじゃないかな……と思われます)


 プロットとは設計図であり、物語の最後に面白さを集約させる為に、布石や伏線というものを配置していきます。

 だからこそ、キャラに勝手に動かれては、その予定が全て狂ってしまうのです。


 誤解のないよう言っておくと、これはただ「物書きとしてのタイプが違う」というだけであり、「キャラが予定と反して動く」という現象を否定している訳ではありません。


 むしろ、それくらい感情移入してキャラを作成できているという点で、羨ましかったりします。


「第三者視点を軸に持とう」と心がけていると、どうしても一歩引いた視点からキャラを描くことになり、自分の作ったキャラに感情移入しにくくなる、というデメリットが生まれているのかもしれません。


 プロの現場にも、キャラが勝手に動くという方はいらっしゃいます。


 だからこそ、最初に組み立てたプロットを調整したい、という意見を持つ方ですね。

 これは否定すべき意思ではありません。その作者にとって、そうした方が面白いという強い意見でもあるからです。


 プロットを変更するに足る理由を提示できて、事前に企業や出版社に話を通していれば、その状態で突き進んでも良いのです。


 これまで花咲は強く「作成したプロット通りに物語を書こう」と意見していましたが、お金を払う立場の方々を説得してしまいすれば、プロットを調整しても問題ないのです。


 勝手にプロットを変更した状態で書き進める、という行為が、信用を失くしてしまう状態だからですね。

(いわゆる報連相がしっかりしていれば、プロット変更も大丈夫なのです)


 そんな訳で花咲も、物書き人生で一度くらいは、キャラが勝手に動くという現象を経験してみたいな、というお話でした。


 今から書き連ねる手法を参考にすると、持ち味を消してしまう可能性があるので、あまり気にしないでいきましょう。

 物語の作り方の一例として、こんな方法もあるんだと思っていただければ嬉しいです。


 閑話休題


 今回の項目は、ネタやアイデアから逆算して「ストーリー」を決めていく、「布石」や「伏線」を配置していく、という手法になります。


 これは結構、単純な方法になっております。

(難しく考える必要は一切ありません)


①思いついたネタや場面、書きたいシーンをまず、箇条書きにしてみる


②それを成立させるイベントや展開を考え、物語のどこに配置するか決める

(そのネタや場面より前のイベントにて、布石として置けるよう考える)


 この二つです。

 これが、ストーリーの導線を整えていく手法なのです。


 あまりにも単純すぎて、逆になに言ってるのか分からん、と思う方がいらっしゃるかもしれませんね。


 なので、例題をいくつか出させていただきます。


 まず拙作『貴方の願いを叶えましょう。ただし貴方の夢は叶いません。』という物語において、花咲が思いついたネタは――『主人公の武器が木刀』でした。


「すごい強いのに、武器が木刀って何かシュールで面白いかもなぁ~」


 そんな発想です。

 これを、この手法で整理すると


①思いついたネタ――『主人公の武器が木刀』


②それを成立させるアイデアの配置――『神様が叶える願いは等価交換、思う通りにいかない』


 主人公は神様に「最強の武器をくれ!」と願うのですが、

 システム的に「はいあげる、ただし木刀ね」という状態を作ったのです。


 追加で「木刀だけど、その効果は最強(ただし地域限定)」というアイデアを盛り込みました。


 これで、主人公は物語の中で「不本意だけど木刀で我慢する」という精神が生まれます。

(それを物語上で表現すれば、読み手もそれなら仕方ないな、という納得が生まれます)


 次に思いついたのは――『主人公が裸』でした。

(我ながらアホなことばっか考えていますな……)


①思いついたネタ――『主人公が裸』


②それを成立させるアイデアの配置――『舞台に泳いでくる(その時に脱ぐ)』


 この際に、物語の舞台が「絶海の孤島」という形に決まった覚えがあります。


 島に泳いでくる際に、距離があれば「服を着たまま泳ぎ切るの無理だろ……」という現実的思考に沿えると考えました。

(だから100キロくらいに設定したのでした)


 どうでしょうか?


 この時点での物語を整理してみると


・『主人公は裸で武器は木刀(ただし最強)』

・『神様がいて、願いは等価交換(思う通りにいかない)』


 という二つの設定が生まれたのです。


 そして『願いは等価交換』をもっと生かすには、どうしたらいいだろう?

 と考え始め――「あれ、神様は人間の願いを叶えるけれど、神様の願いって誰が叶えるんだ?」という思考になりました。


 そこで、物語の終わりに関係してくる『神様の願いを主人公が叶えようとする』というアイデアを、展開の最後に持ってくることにしたのです。

(この時点では、そこにヒロインを絡ませていけばいいか、くらいの軽い発想でした)



 その次に考え付いたのが、タイトルでした。

 神様、という単語をそのまま使いたくなかった捻くれ者の花咲は、それに代わる存在を考えていきます。


 そして、考え付いたタイトルはこれでした。


『精霊指定都市へようこそ!』


 はい、今と全然違いますね。

(実は拙作の正式タイトルは、プロットが整った後に改めて考えたものなのです)


「政令指定都市」という言葉をもじり、精霊に変えれば、面白いかもなぁという発想で進んでいたのです。

 そこから、自然の力を操る「七柱の精霊」がいる世界、というアイデアになっていったのですね。


 つまり


①思いついたネタ(タイトル)――『精霊指定都市へようこそ!』


②それを成立させる為の配置――『精霊が神様みたいに慕われている設定にしよう』


 という世界観、舞台設定が出来上がっていったのです。


 そしてここに「主人公の武器は木刀」がかかってきます。

 木刀、つまり「木」ですね。だからラスボスを『樹精霊ドライアド』にしたのでした。


・一度ネタやアイデアを思いついたら、それをまず箇条書きでメモしておく


 そうして、それに関連する設定やアイデアをまとめていくのですね。


【キャラについて②(性格や能力)】という項目にて、その作り方のオススメを『設定をストーリーに絡むように作る』と書き連ねたのを、覚えていらっしゃるでしょうか。


 それが、この手法にかかってきているのですね。


 精霊が神様のように慕われる世界観、舞台設定を作ったことで、次は『魔法という異能力を、精霊術というものに置き換えよう』、そんな発想が生まれました。


 そして、ここで現実的思考を外すアイデア――『ただし主人公は精霊術を使えない』

 

 という捻くれた発想も生まれます。

 思いついたら、それを箇条書きにまとめて、それを成立させるようプロットに組み込んでいきます。


①思いついたネタ――『精霊術が使える世界で、主人公だけが使えない』


②それを成立させる為の配置――『願いの等価交換の結果、使えないようすればいい』


 拙作でははっきりと書き連ねていませんが……(ネタバレごめんなさい)


「主人公イオリは、光精霊ウィルの生まれ変わり」です。


 光精霊が「人間になりたい」と願ったせいで、「精霊の力を失った状態で人間になる」という結果が生まれたのです。

 願いは等価交換、という便利な設定を作れていたので、とんとん拍子でした。


 そして、イオリがいま何世代目かはわかりませんが、光精霊ウィルの魂を宿した肉体は「精霊術が使えない」という状態に設定していったのですね。

(だから、精霊たちは主人公を嫌っていたのです。まぁこれもネタを成立させる為の配置なのですが)


 一度、物語の設定が出来てくれば、それに絡ませてどんどん新たな設定を作っていけます。


 あとは自己分析により「自分が面白いと思う」ネタやアイデアを箇条書きでリストアップしていくだけです。


 それを成立させる為のアイデアをまとめ、設定を作っていく。


 それがどんどん積み重なり、整理していくことで、物語になっていったのですね。


 ……どうでしょうか?


 思いついたネタを書き留め、それを成立させる(読み手に納得させる)為に配置する、という形を、少しでも伝えられたでしょうか。


 ここまでのストーリー構築の流れを整理すると、


①キャラの悩みや困り事という「問題」を作り、それを「解決」させるよう物語を作る

②物語の「始まり」と「終わり」を作り、その終わり方に「読み手の想像を崩すアイデア」を絡めていく

③思いついた「ネタ」や「アイデア」を成立させられるよう、それに関わる設定を作っていく(これが一番最初でもいいかもしれませんね)


 という形になります。

 どれを使ってもいいし、どれかに特化させてもいいし、自分なりにオススメしたい手法を新たに生み出しても構いません。


 少しでも参考になれば、嬉しいです。


 うむむ……。

 今回の項目は、『アイデア逆算』という設定の作り方に特化していく形になってしまいましたね。


 肝心な『ストーリーの導線』を成立させる「展開の配置」まで解説がいかず、申し訳ない。


 ちょっと長くなってきてしまったので、布石・伏線の配置について次回に持ち越させていただきます。

(四回じゃ終わらなかったですね……)


 それでは、今回はここまでさせていただきます。

 次回は『ストーリー』の布石、伏線の置き方についてです、もう少しだけ、お待ちいただければと思います。ぺこり。

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