第22話 「ストーリー」について③(起承転結)

 それでは、今回も「ストーリー」の組み立て方についてを、掘り下げていきたいと思います。


 今回は、ストーリーを考える際にやり方を調べていくと、おそらく最初に行きつくであろう『起承転結』についてです。


 ですがまずは、こんな事をカキカキします。


 もう何度も当エッセイに登場している先輩(というより上司)ライターさんから、入社当時に告げられた言葉です。


「シナリオライター志望は星の数ほどいるが、シナリオライターは一握りしかいない」


 ……こんなことを言われました。


 ええぇ、それは、当たり前のことでは……?

 と、花咲は聞いた時に思いました。


 はてなマークが頭上に浮かんでいたのです。


 だって物書きを仕事にしたいと考えている方より、実際に物書きでお金を稼げる立場の人の方が、割合として少ないのは当然でしょう。


 言葉の裏に、教訓めいた意味合いを含んでいるとは、思っていなかったのです。


 しかしこの言葉に込められた意味が、花咲樹木をプロの現場に迎え入れた要因になっていたと、後から改めて聞いたのでした。


 その意味とは――


「決められた期限通りに、決められた分量の物語を納品できるシナリオライター」


 という意味合いでした。

 それが、物書きによる仕事に対する姿勢なのだと。


 まあ、物書きじゃなくても仕事への姿勢としては間違っていないですよね。


 納期が決まっていて、それに合わせてきちんと納品する。

 まずはそれが出来て、初めて一人前なのだと。


 当エッセイの初期に、花咲はプロになる前に「二年間、小説を書いていなかった時期がある」と書き連ねていました。


 実際、二年ぶりに小説を書き、それを提出したことで物書きのプロへの道を歩み始めたのです。


 ですが、このエピソードにはもう一つの作品が加わっていきます。


 まず自身の実力を確かめてもらう為の「小説」を送り、それを読んでもらったあと、メールにて条件を一つ提示されたのです。


 ――弊社の作品、世界観、及び登場人物を使用した「5万文字程度の物語」を提出してください。


 こんな条件でした。

 つまり書き上げた小説とは別に、もう一つ作品を提出する必要があったのです。


 そして花咲は当時、こんな返信をします。


「今月中に、提出させていただきます」


 小説データを送り、この返信内容を再び送信したのは、月初めから少し経ったくらいでした。


 つまりあと25日くらいの期間にて、プロットを作成し、5万文字程度の物語を書き上げ、提出する状態に自分を追い込んでしまったのです。

(今思えば、何故そうしたのか……もっと期間を延ばせば良かったのに)


 しかも物語の出来を審査するのは、プロのシナリオライターという状態が決まっています。


 自分で提出時期を決めたことで、「提出期間を守らなければ信用を失くしてしまう」という精神状態を常にかかえることになりました。


 ガクガク、ブルブルしてました。


 という訳で、すぐに執筆活動に入ります。


 書き上げる分量が提示されていたので、後はどういう構成にし、期間内にどれくらいずつ完成させていくか、を考え始めました。


「今月中とは言ったけれど、多分ギリギリは心象が良くないよな……」


 と考えたことで、さらに期間が短くなりました。

(そう自分で決めただけなんですけれど)


 こんな形で、プロット作成期間に5日ほど。

 そこから一日に三千文字ずつ書いていくことで、計算では22日~23日ほどで完成する予定でした。


 それまでは趣味でしか小説を書いておらず、根性なしなので毎日書き進めるということも出来ていなかったので、かなり辛い時期でしたね。


 正直に言うと、執筆自体があんまり楽しくありませんでした。

(既に面倒くさがりの片鱗が出ているという)


 面白く感じていた事柄や大好きだった趣味でも、状況に追われたり、誰かに強要されたりすると、とたんに楽しくなくなっちゃうんですよねー……(遠い目)

(宿題が楽しくないのと同じ理論です)


 ですが、ここでやらないと人生終わるぞ、くらいの危機感は抱いていたので、頑張りました……。


 そして花咲は無事、予定通りに作品を提出でき、見事プロの現場に潜り込むことに成功したのです。


 当時は「え、実は俺って面白い物語を書く才能があるんじゃ!?」とか自惚れていたのですが、先輩ライターの話では、「どっちも意味がよく分かんなかったし、面白くはなかった」そうです(笑)


 つまり花咲は、作品の面白さを認められ、プロに成れた訳じゃないという事ですね。

(なんて悲しい事実なんだ……。ツンデレだと信じたい)


 では、花咲の何が評価されたのか?

 それこそが――


「決められた期限通りに、決められた分量の物語を納品できるシナリオライター」


 という、社会人としての基本姿勢なのでした。

(そして基本の日本語が出来ていたから、教えれば育つかも、という感想だったそうです)


 自分を追い込むことで辛かった時期でしたが、それを評価されたので、結果的には頑張って良かったな~、というお話なのでした。


 そして入社当時に告げられた、


「シナリオライター志望は星の数ほどいるが、シナリオライターは一握りしかいない」


 この言葉にかかってきます。

(その基本がどれだけ難しいことなのか、と仰っていたのですね)


 その意味は、これからも、その姿勢を貫けるように頑張れ、という分かりにくい励ましのような言葉だったのでした。


 あそこで失敗していたら、いったい花咲は今どうなっていたのか……(笑)


 物書きのプロを目指す皆さま方も、どうか「決められた期限通りに作品を仕上げる」という事を意識して書いていく事をオススメします。

(自分で期限を決め、その通りに仕上げるという練習をすると、将来の為に良いのかもしれません)


 それが面白いかどうか別にして、提出することでチャンスは生まれます。

(実例がここにあるので、大事さが伝わりやすいかと)


 作品の質にこだわって完成できないよりも、よっぽどプロとしてやっていく才能が「期限を守る」というものである。そんな社会の常識なのでした。

(ちゃん、ちゃん)


 閑話休題


 今回の項目では『起承転結』についてを掘り下げていきたいと思います。

 ストーリーの組み立て方の基本、と言い換えても良いくらいの基礎だという認識を持っている方も多いでしょう。


 だからこそ、これって結構……説明することないんですよね~。

(なので花咲が感じた、その意味合いだけを書き連ねていきます)


 起承転結による組み立て方とは――


『物事の順序を飛ばして組み立ててはいけない』という形です。


 物語を作る時は「承や転」に当たる山場や盛り上がりを考え、「結」でしっかりとオチをつけよう、という形ではないと、個人的には思っています。


 もう少し因数分解すると、


・「起」という「始まり」があり

・「結」という「終わり」まで持っていくには


・「承」と「転」という「間にある説明」を省いてはいけない、という意味になります。



 話の間にあたる説明がしっかりしていないと、たとえ終わりに辿り着いても、読み手は「話の流れが分からん」という状態に陥ってしまうのです。



・『始まり』で「物語の方向性」や「想像する終わり方」を提示させ、物語が進んでいき


・『終わり』に差し掛かった時、読み手がその終わり方を納得できるほど「間にある物語の描写」が足りていますか?


 という形になるのです。


 物語の基本というよりも、これは文章全てに通じていきますね。


 いわゆる『5W1H』です。


 いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)


 これがしっかりしていないと、物語や文章の意味が、相手にきちんと伝わりません。


 花咲が「期限を守る」という部分とは他に、「日本語の基本ができていた」というのは、この部分にかかっていたようです。

(2つの作品に目を通してもらい、その部分を伝えていた)


 ちなみに文章による基本とは『てにをは』になります。

(これは文章力の項目にて、深く掘り下げていきます)


 文章には流れというものがあり、一つの文章をきっちり作成していくことにより、それが合わさって一つの物語になっていきます。


 そしてストーリーの組み立て方にも、それは関わってくるのです。


 とはいえ、そんなの基本だろうと思う方のほうが多いでしょう。

 ですが、だからこそ、その重要性を強く意識しないまま執筆に入っている方は多いです。


 それは実はプロの現場にも、いらっしゃいます。

(間に入れるべき説明が足りていないため、読み手に面白さどころか、物語の内容自体が伝わらない。花咲もまだ完璧に出来ているとは口が裂けても言えません)


 その文章で、その物語で――『何を説明しているのか?』


 そして、文章や物語ごとに『説明が足りているのか?』


 これを意識しないまま書き上げていくと、その書き手自身では気付きにくい現象が起こってしまうのです。


 なぜなら、書き手と読み手の「頭の出来」は絶対に一致しないからです。


 書き手には意味を理解できていても、説明が十分だろうと考えていても、読み手には伝わっていない。

 そんな現象が、起きてしまうのですね。

(これも文章の読みやすさに関わってきています)


 という訳で、この起承転結の意味合いに関連するストーリーの組み上げ方の応用編を、次回の項目にて掘り下げていきたいと思います。


 起承転結とは「間にある描写」をきちんと考えよう、という形であり、そのものが組み立て方に役立つ訳ではありません。


 山場やオチの面白さは、人によって違うので、正解がないからです。


 ですがこの起承転結とは、面白さを伝える為には『きちんと順序立てしないといけない』という意味合いが含まれています。


 起承転結には――「ストーリーの導線」という意味が、込められているのです。


 今回の項目にて、具体例を挙げられなくて申し訳ありません。

 続きは次回の項目にて、深く掘り下げさせていただきます。

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