第20話 「ストーリー」について①(問題と解決)

 それでは、今回から「ストーリー」の組み立て方についてを、順次掘り下げていきたいと思います。


 いくつかの項目に分けて、組み立て方の種類を書き連ねさせていただきますね。

(おそらく全部で四回くらいかなーと)


 こちらは、その内のどれかを参考にしても良いし、その全てを合体させて使ってもいいし、なんだか自分に合ってないと思ったら、あまり気にしなくてもいい項目になります。


 という訳で、今回もカキカキしていきますよー!


 どうかお付き合いいただければ幸いです。ぺこり。


 前回の項目にて、「本一冊分の分量」と「自分に合ったプロット内容」をなんとなーくお伝えできたかな、と思っています。

 自分で分量を決めて、それに合わせてプロット内容を作成できる能力を身に付ければ、きっと貴方は、どんな媒体やレーベルでも物語を書いていけるでしょう。


 まずは例文のあらすじを用意させていただきますね。


 前回書いた映画のものを使えると良いのですが、エッセイの倫理的に大丈夫なのか分からないので、拙作のあらすじ内容を書き連ねます。


 ここから、拙作『貴方の願いを叶えましょう。ただし貴方の夢は叶いません。』のあらすじになります――


 主人公イオリ・ユークライアは、誰もが「精霊術」という自然を操る力を使用できる世界の中で、何故か一人だけ精霊術が使えません。

 生まれ故郷である火精霊の国は、兵隊になり戦うことが国益として成り立つ国であり、イオリも自然と戦闘での強さを求めていき、世界最強の戦士なることを夢みていました。

 精霊術を使えない状態でも、剣術を磨くことで目標に近づこうとしたのですが、自分で強さの限界を感じてしまい、精霊術に対抗する手段を探すことを決めます。

 故郷を飛び出して向かったのは、樹精霊がいる国であり、そこに行けば「誰でも精霊から願いを叶えてもらえる」という噂がある群島でした。

 船が確保できなかった為に島へは泳いでいきますが、途中で何者かに襲われ、溺れてしまいます。目を覚ますと、容姿端麗な女の子が自分を助けてくれたことを知りました。

 女の子は樹精霊に求婚されていて、「精霊術を使う度に人間を止めていく」という契約しているそうです。そして完全に人間ではなくなったら、樹精霊と結婚する約束を交わすことで、過去にとある願いを叶えてもらった、との事でした。

 しかし樹精霊は女の子であり、女の子同士での結婚は出来ないと悩んでいます。樹精霊は強引な手段で結婚を迫っていたので、イオリは命を助けてもらった恩を返す為に、女の子を自分の力で助けたいと考えます。

 島では樹精霊が与える「願いは等価交換」というシステムにより、色んな人が困っていました。そして誰かが困った姿を見ると、女の子は結婚する日が近付くことを知りながらも、精霊術を使って助けてしまいます。

 イオリは島の人達と協力し、女の子が精霊術を使わないように環境を整えようと頑張ります。ですが、その行為によって樹精霊を怒らせてしまい、女の子を連れ去られてしまいました。

 イオリは再び村の人達と協力し、女の子を取り返す為の行動を起こします。ついには樹精霊を追い詰めることに成功するのですが、実はそれこそが樹精霊の狙いだった事が判明します。

 樹精霊は「女の子の幸せ」を第一に考えて、死ぬ覚悟を持って身を引こうとしていたのでした。女の子と樹精霊の関係性を誤解していたイオリは、助けられた自分の身体を樹精霊に差し出すことで、状況を解決しようとします。これも女の子の幸せを、第一に考えた上での行動でした。

 ですが、女の子が求める「幸せ」はそのどちらとも違い、知り合った人達と全員仲良くなりたいという、ささやかなものでした。女の子の幸せを知ったイオリと樹精霊は、自分の感情を抑えて、死ぬことでの解決より生きて仲良くする解決を選びます。

 こうしてイオリは、自分が追い求めていた強さは「肉体的な強さ」や「精霊術の有無」ではなく、相手を幸せに出来る「精神的なもの」なのかもしれないと、女の子の言動から学んでいくのでした。命を懸けて一生懸命に生きるという意味を学び、改めて世界最強の戦士になる夢を追いかけようと決意します。



 ……はい。こんな感じでしょうか。

(ちょっと文章をくっつけすぎて、見づらいかもしれません。申し訳ない)


 この「あらすじ」を、これから数回連続していく「ストーリー」の組み立て方の参考文献として、一つずつ項目を書き連ねていきたいと思います。


 これが、ストーリーという「プロットの骨組み」になることを前提に、記していきます。


 閑話休題


 それでは、ようやくですが今回の項目にある「問題」と「解決」についてを解説させていただきます。


 この手法における『問題』とは――物語上にいるキャラが「困っていること」や「悩んでいること」、という状態になります。


 それを解決する行動や展開、描写を物語上で表現する、という形です。


 この手法は、とてもシンプルで、組み立てやすいものだと思われます。


 まずは既に物語を書き上げたことのある皆様に、お伺いしてもよいでしょうか。


【お題】――貴方の物語は、物語上で提示された「問題」を「解決」していますか?


 それが解決されていない場合、物語として成立していない可能性があります。

(あくまで、本一冊分の分量として区切っていく場合、ということですが)


 物語上で「解決したい問題」を表現し、それを「分量内で解決する」


 これが、この手法に置けるストーリー構成の基本筋になります。


 とは言っても、何を言っているのか曖昧すぎて分かりにくいんじゃい、という意見が大きいでしょう。

 なので例題として、上記のあらすじから、物語上で提示された問題を抜き出していきます。



問題①「主人公が求める最強という道の悩み」

解決方法――「女の子の行動により、強さとは精神的なものだと感じ取る」


問題②「女の子の求める願いと悩んでいる事情」

解決方法――「自分の為にと身を差し出そうとする二人を止め、村の人達とも仲良くする」

(仲良くなれば精霊術を使わない環境も作れる可能性大)


問題③「樹精霊によって困っていた村の人達」

解決方法――「樹精霊に対する行動により、解決策が見えた」

(あらすじ内では具体的なものを記せていませんが、次の島へ向かうというもの)



 ……はい。問題の提示と、その解決方法は、こんな感じになっています。


 実はこの組み立て方は、花咲がよく使う手法の一つでして、あらかじめ設定しておくと、ストーリーの基本筋としては、かなり迷わずに済みます。

(最初に作成したプロットに沿って、大筋から外れずに進んでいけます。問題内容や解決方法を、書いている途中で変更しては、ダメですよ? それはプロットごと変更している状態なので)


 問題を提示し、それを解決するように書き上げていけば、終わった時に物語として「成立している」可能性が高いからです。

(その問題の中に、テーマを混ぜるとなお良し。拙作では、女の子の問題に大きくテーマが関わっています)


 この方法にて考えるべきは、物語を構築する上で――「どういった方法で解決させたいか?」というものですね。


 振り分けるならば――

 発生した問題が「ネタ」で、解決方法が「アイデア」でしょうか。

(それが読み手の現実的思考を崩すアイデアなら、なお良し)


 展開による解決なのか。

 キャラの行動により解決方法が見えるのか。


 どちらも大丈夫です。

 物語上で「解決したい問題」を表現し、分量が終わるまでに「解決していれば」、それでテーマごと成立させていけます。

(問題とテーマを絡めた場合ですが)


 考えていく「問題の内容」は、箇条書きでも構いません。


 そこに肉付けしていけばいいのです。


 実際、花咲が最初に考え付いたのは②「女の子の求める願いと事情」だけでした。

『願いや夢など関係ない方法で、幸せを掴む』という問題と解決です。


 ①と③は、キャラや展開を考えていき、分量に合うよう肉付けした問題と解決なのです。


「問題」と「解決」さえ決めてしまえば、後はそれを物語の「どの時点で」表現するかを考えるだけです。


「本一冊分」というのは「10万文字~15万文字」だと前回にて記しましたね。


 それを文字数で分けていき、どこで表現するか決めていくだけでいいのです。


 それは、本一冊分の物語を「いくつの章で構成するか」という考え方です。


 拙作では「3万文字(一章)」「3万文字(二章)」「3万文字(三章)」「1万文字(四章)」という四章構成、文字分量に分けてストーリーを作成しています。

(起承転結っぽくしています)


 各章ごとに幕間を挟んでいるので、一度見てみると分かりやすいかなと。

 3万文字の章はそれぞれ六話から七話にて構成。最後の1万文字の二話で、タイトル回収の章ですね。


 幕間は、本編だけじゃストーリーの奥行きが広がらないなぁと感じたので、書いている途中に急遽差し込んだものになります。

(合わせると大体1万文字くらいかなと。合計11万文字の物語です)



 拙作では、①「主人公の問題」は「一番最初(一話、プロローグ)」にて提示しています。

(そして、一番最後の文章にて回収しています)


 ②「女の子の問題」は、物語を始めてからの「3万文字くらいまで(一章)」の章にて提示を。


 ③「村の人達」の問題は、物語の中盤の「4万文字~6万文字くらい(二章)」にて。


 そして、③の解決方法を三番目の「7万文字~9万文字くらい(三章)」で行動させていき、②の解決方法を最後の「1万文字(四章)」の章にて示しているのです。

(そして①の解決方法を、最後にちょっと付けたした形)



 ……はい。どうでしょうか?

 なんとなーくですが、書く分量をあらかじめ決めておき、次に章構成を決める、というプロット構成を伝えられたでしょうか。

(たとえば10万文字を書くと決めたなら、その文字分量をどうやって、それぞれの章に振り分けていくか)


 各章の文字分量を決めたら、次に「その章で表現すること」を決めます。

(今回の方法では、問題の提示と、解決方法の提示を、各章に振り分けていく)


 それに合わせて、少しずつ本文を書いていけば、あら不思議。


 ばばーん――「プロット通りに物語が完成しました!」


 そういった手法になっております。

「問題と解決」という方法ではなくても、まず章の文字分量を決めていけば、ある程度は作者の予想通りの展開を、表現することのできた物語を作成できるでしょう。


 これが「分量を考慮しながらストーリーを構築する」という考え方になります。


 さて、それでは、ここからが花咲個人のオススメです。

(長編と短編といった、分量による考え方の調整)


 それは、一つの物語で「いくつ問題を表現すればいいのか?」という事です。


 オススメは――「本一冊分の分量(10万文字~15万文字)」ならば、最低でも三つの「問題」と「解決」を、物語に盛り込むことです。


 一つでは、まず本一冊分に分量が足りないと思います。

 しかし二つでは、ストーリーラインに面白さが足りないかな? という感覚がありました。

(こちらは何度かこの手法でプロットを組み上げてみての感想です)


 提示する問題が三つ以上あれば、物語に奥行きが生まれます。

(キャラの主観による問題ならば三勢力、キャラによる展開での問題ならば二転三転、という状況に持ち込めます)


『長編(本一冊分で区切る)』を書く場合は、三つ以上の問題を考えて、表現し、それを物語のどこかで解決できるようにストーリーを考えていくと、ぐっと「小説っぽく」なると思われます。

(個人的な経験則なので、参考程度に留めておいてください)


 次は『短編』の場合ですが、この手法では一つの問題を提示し、最後にそれを解決する、という状態に留めるといいでしょう。


 後は、分量ですね。

 短編の場合は長くても3万文字、短くても数千文字から1万文字くらいにて考えましょう。

(それ以上だと、もう長編を考えていった方がいいかと)


 まずは、どのくらいの分量にて物語を書くのか。

 それを決めないと、適切なプロット構成が決まっていきません。


 決めた分量内で問題を提示し、それを物語上で解決できれば、短編という「物語」が完成できると思われます。


 ここで、短編の作成で注意して欲しいのが、長編ではどこかで必要になってくる緩急というものが、あまり機能していかないことです。

 物語の初めから「展開上で一番面白い」部分や、「展開上で一番動きのある」部分で始めていった方がいいかなと。

(その最初に、提示する問題を混ぜて表現するとなお良い。テンポの良さから、読み手がワクワクして読み進めてくれるかなと思います)



 さて、それでは今回はここまでとさせてください。


 少しの間、続きものとしての「ストーリー」の組み立て方についてを掘り下げていく予定です。

 それが終わったら、次は文章の「基礎知識」や「描写(人物の魅力の伝え方)」、「物事の表現(展開)」など、まとめると『文章力』についてを掘り下げていく予定です。


「文章力」についてのコツの解説が終わったら、次は初期に予定していた拙作の構造解析をしていくと思われます。

 だんだんと、各話の解説とか需要あるのかそれ……? という思いが生まれているのですが(笑)


 実はこうやってエッセイをまとめていく内に、新しい物語のネタやアイデア、構成が生まれつつあるので、そっちに着手しようかなという思いもあります。

(チートやハーレムを含んだ、花咲樹木らしい一捻りを加えた物語です。拙作の続きよりも、書きたい欲がムクムク湧いてきてしまい困っています……)


 当分エッセイはしばらく完結扱いにはしないと思うので、その時の雰囲気によって、どれかを書き進めていきたいと思います。


 それでは当エッセイを読んでくださり、ありがとうございました!

(思いのほか長くなってしまい、申し訳ないです)

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