第17話 「ジャンル」について②(文芸系)

 それでは今回も、それぞれの「ジャンル」についてを掘り下げていきたいと思います。


 今回はそれぞれが『一般文芸』という系統に通じるジャンルです。


 各ジャンルを選んだ上で意識するべき項目、考えるべき項目を記していきたいと思っています。


①恋愛

②純文学

③ヒューマンドラマ

④アクション

⑤コメディー


 上記のジャンルは、展開の面白さや、文章力という作家の実力がはっきりと表に出て来る分野です。

 前回の項目で記した「設定語り」という面白さが、一番の強みではなくなっていきます。


 えー……っと、ですね。


 ぶっちゃけるとですね。


 上記のジャンルを選び、創作した物語で読み手から高評価を得ている方は、狙うべき読者層が中学生・高校生・大学生の、若い読み手を意識して書くライトノベルよりも、一般文芸の出版社に挑戦した方が、上手くいく可能性が高いんじゃないかと思っています。


「カクヨム」様はまだ読者層が固まっていないイメージがありますが……。

「小説家になろう」様で上記のジャンルを選んで書くと、思う通りに評価を貰えない可能性があるでしょう。


 それは、サイトを利用する読み手の年齢層や男女比が関わってきています。


 各レーベルの違いもありますが、ジャンルには「どの年齢層を意識して書くのか」という問題も出て来るからです。

 そして今回で並び連ねたジャンルは、年齢層が高い読み手に向けて書くことも多くなってくるのですね。


 自分がどの出版社で書くことを望んでいるのか。

 そして、どのジャンルを選んで書くのかによって、プロット構成の考え方や語彙の選択、文体すらも変える必要が出てきます。


 文章の読みやすさとは、読み手の年齢層によっても「相応しい文体」が変わってくるからです。


 例えばですが、児童書のジャンルでは、難しい言い回しや、漢字の表記が多く出て来ることはないでしょう。

(ジャンルや年齢層を意識して、文体を変えるのも作家の「プロ意識」の範疇なのかもしれません)


 そもそも本として物語を世に出す場合は、ほとんどの場合が縦書きですからね……。

(時と場合に合わせて、そして狙っている読み手の年齢層やジャンルに合わせて、物語の文体を変えていきましょう)


 当エッセイや当作品で花咲が使用している、空白による読みやすさや強調表現も、実際の本ではあまり使用できない手法でしょう。

(これは文章の基礎知識という項目にて、いつか掘り下げていきます)


 閑話休題


【自己分析の方法】という項目にて、自分に向いている感性を、なんとなーく把握できてきた方は、次は自分の『適性』というものに意識を向けると、書いた物語で成功できるかどうかが変わってくるのでしょう。


 実際、花咲樹木は「推理もの」を愛していますが、物語を書いていく内に、自ら適性がないと判断し、適性があると感じたジャンルを選択するようになっていきました。

(まだ実力が足りない、という意味合いもありますが、やっぱり適性はないと判断しています。推理ものの特性については次回にて掘り下げます)


 もしかしたら、自分に適性があるのは、このジャンルなのかもしれない。


 当エッセイを読んでくださった方に、そう考えるきっかけを芽生えさせるお手伝いが叶えば、何よりも嬉しいことですね。


 自分に合った物語の適性というものは、物語をいくつか実際に作成しないと、そして、それを世間に公開しないと分からない部分でもあります。

(読み手の反応から、それを読み取っていくのです。感想やレビュー、PV数など)


 そもそも、好きなジャンルじゃないと「面白いアイデアを思いついた!」や、「こんな物語が書きたい!」という発想自体が生まれにくいものですが……。


 物語の作成には、作者個人の「頭の出来」というものが品質に大きく関わってきます。

 それは、作者の能力や性格も関わってきてしまうのでしょう。

(どこまでそのジャンルの面白さを追求できるか、というストイックさも)


 作者のそれぞれに、それぞれ「面白く書けるジャンル」が存在するはずです。


 自分はこのジャンルしか書きたくない! と決めてしまっている方は、どのジャンルに適性が眠っているか探していないではと、少し勿体なく感じます。


「作者の好み」=「適性がある」という図式が成り立てば、深く考えなくてもいい項目なのですが、こればっかりは物書き世界の残酷さですね……。


 分かりやすい例を出すと――


 作品に感想やレビューを頂いたときに、自分の狙い通りに「面白さ」を感じ取ってもらえていたら、そこには適性が含まれています。

 自信を持って、その部分を突き詰めていきましょう。


 もし狙い通りの「面白さ」を感じ取ってもらえていない場合は……。

 そのジャンルの読み手にウケるテンプレートを把握していないか、そのジャンルに適性がないのかもしれません。

 読み手の反応を見て、適宜調整していきましょう。


 さて、それではようやく、各ジャンルの内容説明に入らせていただきます。

(前説が長くなってしまい、申し訳ないです)



 ①「恋愛」


 恋愛要素を一番に押すジャンルには、大雑把に分けて二つの系統があります。


 それは――『理想的な恋愛』描写と、『現実的な恋愛』描写です。


 理想的な恋愛は、いわゆるハーレムものや、現実的にはあり得ない異性との出会いが含まれます。

(身分違いの恋や、あまりにも年齢差がある恋など)

 作者が思い描く「理想の恋愛」を突き詰めていきましょう。そこで共感を得られれば、多くのファンを獲得できます。

(爽やかな10代が登場人物の恋愛小説や少女漫画、女性の理想恋愛を描くハーレクイン小説などは、これに当たるかと)


 現実的な恋愛は、現実に起こりうる展開や描写を生々しく描くものです。

 だからこそ、現実的思考を軸に持つことが大切になっていきます。そこで共感を得ることが、この物語上での面白さに繋がっていきます。

(不倫や浮気の生々しさ等はここ。現実の恋愛では、普通に10代でもエッチします。だからこそ物語上でそこに及ばないのは、花咲の思考からすると、あまり現実に即していません)


 これはどちらも、物語の中での『人間描写』に特化していくジャンルです。


 しかしこの分野は、それを一番重視するというだけで、どのジャンルを選んだ際にも必ず用いられます。

 物書きを目指す上では、可能な限り身に付けるべき技能だと言えるでしょう。


 恋愛という分野での難しさは……人間関係上での駆け引きや、上手くいかない恋愛を描く際のもどかしさです。

(告白しようとすると、展開や登場人物により邪魔が入る等の要素がそれ)


 察しの良い人物、察しの悪い人物、強引な人物、奥手な人物、恋愛体質の人物や、恋愛を怖がっている人物など……。


 実に様々な「人間」が作品の軸になります。


 だからこそ、自己分析によって、作者だけの内面を見ているだけでは足りません。

 自分の中には居ない人物だって、作品の中には描く必要が出て来るからです。


 人間観察という勉強を、ひたすらに突き詰めていきましょう。

 日常生活の中に、たくさん教材が生きて行動しています。

(そして、それを第三者視点によって自分の中に染み込ませていく)


 そして、キャラクターの心理描写に共感を得られれば、その作品には多くの読み手が面白さを見出してくれるでしょう。


 これは実際の恋愛を経験していると、その感情をリアルに描写できます。

 だからなのか、実は花咲にとっては、かなり苦手な分野です……。


 何故かと言うとですね。

 花咲は、リアルの恋愛における駆け引きや小まめな連絡に、あまり興味がないからなんです……。


 メールでのやり取りを毎日続けたりしていると「まどろっこしいから電話で話さない?(それで今日は終わろう)」という発想になり。

 例えば家で物語を書いている時に連絡が来たりすると、その存在ごと少し面倒に思ってしまうからです。

(そこに楽しさを見出せないのです……。うぅ)


 恋愛要素は、全てのジャンルに通じています。

 物書きを目指す上での、必須技能なのです。

(こうして解析していくと、花咲は物書きとしての弱点が多いことが分かりますね……)



 ②「純文学」


 この分野は、娯楽作品というよりも、芸術作品という意味合いが強いジャンルです。


 純文学とは、まだ明確な基準が決まっていないジャンルなのです。


 作者の考える純文学をそのまま突き詰めていけば、芸術としての面白さに繋がっていくでしょう。

(でも、だからこそ思った通りの評価がもらえなくても、読み手側にそれを求めてはいけません。芸術とは、理解されるまで時間がかかるものなのです。作者の死後にようやく認められることなど常々です。根気よくいきましょう)


 これは、物語を作る際に「読み手が感じる面白さ」を重視しない分野です。

(無理にチートやハーレムといった、ウケの良い要点を気にしなくてもいいジャンル)


 だからこそ、プロット構築の際は作者の『テーマ』が大事な軸となります。

 言い換えると「作者のエゴ」でしょうか。これを前面に押し出していきましょう。


 別に高尚ではなくとも構いません。

 古典文学を意識する必要もありません。


 何でもありです。


 世の中に対する不満や、爆発しそうで溢れそうな感情、生きてきた中で培ってきた哲学や自論、日々の生活の中で考えている些細な事でも、何でもです。


 作者の中にある芸術性を、全て作品の中に込めてください。


 貴方が「これは純文学として書いた」と思えば、それは純文学になるのです。


 このジャンルは、いわゆる「間違い」というものがないと思っています。

 どんな奇天烈で荒唐無稽な物語を書いたからって、純文学ではない、という事はありません。


 テンプレートではなく、オリジナリティとしての『作者の個性』を意識してください。

(それが薄いと、わざわざこのジャンルを選ぶ意味も薄くなっていきます)


 どんな批判を受けても、気にすることはありません。


 だって、それが作者が生み出した芸術だからです。

 逆に「この芸術性が分からないの?」という感性をもって、知らん顔していればいいと考えています。

(そもそも他者の作品を、作者にまで伝わるくらい批判する人物の言うことなど、気にする必要はないと思っていますが)


 感想や批評は自由ですが、だからといって言葉の暴力で他者を傷つけていい訳ではありませんからね。

 一言で「芸術」と称しても、それは時代によって変化していくものなので、自称純文学好きが色々なことを言ってきても、議論する意味も価値もありません。

 疲れるだけです。


 貴方がそう思うのならそうなんだろう。

 ただし、自分はこう思っています。


 こんな感じで、受け流していきましょう。


 そもそもジャンルを決定付けるものはレーベルです。出版社が「これは純文学」として売り出せば、それは純文学になってしまうのです。

(これは他のジャンルでも同じことが言えますが)


 作者が純文学として書いたならば、もうそれは純文学なのです。



 ③「ヒューマンドラマ」


 人物描写がリアルであればあるほど、そこにドラマ性が生まれるジャンルです。


 深く、深ーく『人間の心理』を知る必要があります。

(これは「推理」というジャンルにも関わってきますが)


 恋愛ジャンルと似ている突き詰め方ですが、このヒューマンドラマという分野は、もう少し区分が広くなっていきます。


 学校や会社でのイジメ問題や、人種差別、オタクや一般人の考え方の違いなど、社会問題を描く場合も多いですね。


 人物を知ると同時に、社会に起こる問題を知っていくと、それをネタにして物語に組み込めるでしょう。


 そして、物語の終わり方、オチや解決方法には作者の『テーマ』を混ぜましょう。

 そうすると、同じ考え方をしている読み手に共感してもらえます。

(違った考え方をしていても、納得してもらえたらファンになってくれるでしょう)


 現実で起こる人間を主題とした問題を描きながら、作者個人の解決方法を示していく。


 それがヒューマンドラマという分野の面白さに繋がっていきます。


 このジャンルの要点は、恋愛にて解説した部分と似ています。

 恋愛要素が一番ではない上で、人間の心理というものを深く描写していきましょう。



 ④「アクション」


 文字の羅列により、展開やキャラクターの動きを表現するジャンルです。


 これは、ひたすらに勉強しかありません……。

 どのアクション表現が自分の感性に合っているか、プロの作品を見て選定していき、学んでいくしかないのです。


 そういう意味では、文章力というものが一番出る分野なのかもしれませんね。


 意識するべきことは、文章の「テンポ」でしょうか。

(これも自分の感性に合ったプロの作品を探しましょう)


 動きを解説しすぎると重くなり、そこに面白さを見出すのが難しくなります。

 しかし、だからといって簡潔にしすぎると、説明が足りず読み手に伝わりません。


 自分にとって、そして読み手にとって「丁度いい描写」を探していく、果てしない旅になるでしょう。


 この分野の文章に、正解というものはありません。

(しかし、読み手が感じる上手い下手はあります。もろに実力が出ます)


 このジャンルは、文章を読んだ方が、頭の中で『映像としてその情景を思い浮かべるか』どうかを突き詰めていくと良いでしょう。


 例として文章を書くと――


・主人公が敵に向かってパンチした。


・主人公が勢いよく駆けていく。勢いを殺さないままに右手を大きく振りかぶり、敵の横っ面めがけて拳を降り下ろした。


 ……はい。これが三人称視点での「簡潔な描写」と「丁寧な描写」の違いです。

 上記の例は、主人公が同じ動きをしています。ですが、文章によって伝わる情報量が違いますよね。


 ですが「どちらが正解なのか」というものはありません。

 この分野の描写は、作者の好みによるからです。


 アクションというものは、読み手が光景を思い浮かべることの出来る「情報量」を操作していく分野なのです。


 そしてこれは、あまり言いたくなかった要点なのですが……。


 そもそも、動きやバトルという描写は、文字のみで伝えるのに向いていません。

 どうやっても「視覚媒体」のある漫画やアニメ、映画やゲームには勝てないからです。


 だからこそ、文字での強みを出しましょう。


 読んだ方の「想像力」をうながす文章を心がけるのです。

(視覚媒体は想像力をうながす余地が少ないため、そこの部分しか文字は勝てません。文字から読み取った想像の中に、描写としての面白さを見出すのです)


 そこには、文章のテンポや読みやすさが関わってきます。勉強あるのみです。


 自分の本がコミカライズした時、そしてアニメ化した時を考え、読み手にはっきりと状況が伝わるよう意識すると、自分の物語に必要な描写や情報量が掴めてくるでしょう。


 この分野を突き詰めていくと、文章力という部分がどんどん上達していきます。

 ファンタジーものを書く際には、外せない技能と言ってもいいのかもしれません。



 ⑤「コメディー」


 これはもう、詳しく書く必要もないほど、はっきりしていますね。


 純粋な「面白さ」や「楽しさ」のみを追求していく分野です。


 物語を読んでくださった方をクスっとさせたり、笑い転げさせたり。

 それが叶えば、このジャンルでの成功になるでしょう。


 これまた、アクションと同じく正解というものがありません。


 テレビで活躍している芸人さんも、観る人によって好みというものがあるでしょう。それと同じで、自分が感じる面白さや楽しさを、ひたすらに追及していくしかないのです。


 ですがここでは、それを文字のみで伝えるという高いハードルが生まれます。


 ここも『テンポ』という魔物が潜んでいます。

 プロの作品を見て、クスっと来たら――“なぜその描写でクスっと来たのか”を考えましょう。そして、その解析結果を自分の物語に盛り込みましょう。


 描写だけではなく展開にも気を配る必要があります。

「シュールさ」という状況的なおかしさですね。


 この分野も、視覚媒体がないからこそ『叙述トリック』という仕掛けが使えます。

(日常会話をしているのに、登場人物が裸、という描写がまさにコレ)


 その世界観の中では普通に過ごすからこそ、笑いを取ろうとしないからこそ、シュールさという面白さが光ります。

 登場人物は皆、物語の中で真剣なのです。ふざけてなんかいません。


 だからこそ、シュールに見えるよう物語上での必然性を作る必要が出てきます。


 あ、そういえば……『中二病』という格好良さを、読み手が笑うという描写も、シュールというコメディの分野に入るのでしょうか。

 これも登場人物が中二的な格好良さを真剣に追及するからこそ、それを読み手が面白く感じるのですね。


 自分が楽しく感じる「プロの作品」を深く掘り下げましょう。

 そして、それを教本にして、自分の物語に取り入れるのです。

(年代によって流行りのネタというのもあります。これも勉強するしかありません)



 今回は思った以上に長くなってしまいましたね……。


 それでは、今回はここまでとさせてください。

 次回は、『推理』と『童話』ジャンルについてを掘り下げていきます。

(この二つには、これまでの要点も持ち合わせていながら、大事な要点がもう一つ存在するからです)


 当エッセイを読んでくださり、ありがとうございました!

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