第14話 「テーマ」と「タイトル」(感情と方向性)

 それでは、今回は『テーマ』について。そして作品の『タイトル』についてを、掘り下げていこうと思います。


 まずは物語において「テーマ」とは何か? ということを一つ。


・作者が物語を通して、読み手に何を伝えたいか(自論や哲学)

・作品の方向性や雰囲気(読み手が何を主体として作品を楽しむのか。読後感の狙い等)


 ……はい。こんな感じでしょうか。

 これが一貫されていれば、その作品は作者の狙い通りに成立していると花咲は考えています。

(逆にいえば、これが一貫されていない場合は、読み手に作品をどう楽しんでもらうか考慮されていないのでは? と考えてしまいます)


 なぜ「タイトル」も付随しているかというと、昨今のライトノベルというのは、タイトルを読んだ時点で、作品の方向性やテーマが伝わりやすいように付ける風潮があるように思えるからです。


 チートやハーレムの特色を押し出している作品などは、特にそうかなと。

 好みもあるので一概には言えませんが、花咲樹木個人としては、読み手が『その作品をどう楽しむか』がタイトルの時点で伝えられているので、分かりやすいなぁと考えています。


 かくいう拙作も、その風潮に合わせてタイトルにテーマを盛り込んでいます。


『貴方の願いを叶えましょう。ただし貴方の夢は叶いません。』


 本文を読んだら分かってもらえるかと思うのですが、願いを叶えるには等価交換として、代わりに夢が叶わなくなる、という仕組みを物語に盛り込んでいる形です。


 ですが、タイトルだけで説明が終わっている訳ではありません。


『貴方の願いを叶えましょう。ただし貴方の夢は叶いません。貴方はいま幸せですか?』


 この付け足した「貴方はいま幸せですか?」という一文が、拙作を読んだ方に伝えたいテーマの大きな要素となっております。


・『願い』とは――「精霊・神様がもたらす現象」のこと

・『夢』とは――「願いが叶うことにより奪われた目的や目標・望んでいたものとは違う結果」


・『幸せ』とは――「上記の全てを通過した後で、当人が現状をどう感じているか」


 拙作では、願いや夢など関係ない部分で、「当人が感じる幸せとは何か」を問うています。

 いつかの項目で、物語の最後でテーマを体現させるキャラを「ヒロイン」だと記させていただきました。


 シャルロットは、精霊のもたらす願いに頼ることなく、主人公の行動により贈られた救いにすがることなく、自分の「わがまま」により、自身が望んでいた人間関係を構築しようと頑張ります。

(主人公との出会いにより、その為に行動しようと思えた部分はあるのですが)


 それが、拙作のタイトルに隠された「貴方はいま幸せですか?」というテーマの大部分になっています。

 ヒロインは、なんとか自分の力で幸せになろうとしたんですね。


 ……はい。こんな感じで、テーマを決めると、作品の方向性というものが大体決まってくるという考えを伝えられたでしょうか?


 そして「作品の方向性・雰囲気」についてですが、花咲樹木は「温かい読後感」というものが大好きな人間でして、作品を読んでもらった人に「ほっこり」して欲しいんです。

 狙いが上手くいっていればいいのですが……やっぱりテーマ通りに作品を成立させるというのは、難しいものですね。反省点がたくさんあります。


 閑話休題


 という訳で『テーマ』の説明と、それを分かりやすく伝える為の手段『タイトル』についてでした。


 プロの作品で分かりやすい例をあげるなら……。

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』でしょうか。見事なタイトルですよね。


 そして、これがこの作品の楽しみ方を最初から方向付けています。

 物語の中で、キャラを通して――「妹の可愛さ」を存分に描いています。読んだことのない人は、一度読んでみると「なるほど」と頷けるかもしれません。


 ちなみに、当エッセイの初期の項目にて、自己分析の結果を


・自分が面白いと感じる部分を理解する。

・自分の好きなジャンル、作品の傾向を知る。


 と定義付けさせていただきましたね。

 その為に、プロの作品群から大いに学ぼうというものでした。


 拙作にも、大好きなプロの作品から取り入れた「エッセンス」というものが存在しています。

 様々な作品から取り入れてはいるのですが……大きく分けると3つでしょうか。


①『STAR DRIVER 輝きのタクト』(アニメ)

②『ぐらんぶる』(漫画)

③『境界線上のホライゾン』(小説)


 この3つです。


 ①からは、絶海の孤島という舞台設定や、物語の始まり方(主人公が浜辺に流れ着く)、三角関係でありながら爽やかさを崩さないキャラ達の精神性、主人公が舞台にやってくる事により全てが変わっていくストーリーの導線、等です。あと読後感の気持ちよさも。


 ②からは、主人公の名前(イオリ)、作品の方向性である温かさ(その中にあるギャグ・コメディ)、そして登場人物が日常的に裸になるというシュールさです。


 ③も②と似ていますが、他の登場人物たちが服を着ている中、主人公だけが裸をつらぬくというシュールな面白さ、そして他の登場人物たちが能力持ちの中、主人公だけが大した能力を持っていない、という部分になります。


 この例により、花咲が好きなプロの作品たちの「こういう面白さを自分の物語に取り込みたいなぁ~」という要点が、少しでも伝えられたでしょうか。


 ちなみに②の原作である井上堅二という作家先生は、花咲の物語作りにおける「ギャグセンス」の心の師匠と呼んでもいいくらい、その部分において尊敬しています。

(「バカとテストと召喚獣」の作家先生、といえば伝わるでしょうか)


 そして、物書きを目指し始めてから『テーマを作品に盛り込む』という重要性を、数々の作品を通して花咲に強烈に意識させた先生もいます。


 西尾維新という作家先生です。この方は個人的に、自身の作品にテーマを盛り込み、読み手に伝える天才だと感じております。

 小説という分野において、花咲が最も尊敬している人です。

(物語シリーズの「花物語」は、この世の全ての物語の中で一番好きな読後感といってもいいくらい)


 拙作は、花咲樹木というひとりの人間を自己分析することにより、様々なプロの作品からエッセンスを取り入れ、自分が面白いと感じるように再構築したものです。


 この項目にて――「自己分析を自分の物語に生かす」という意味合いを、改めて伝えられていれば嬉しいな、と思っています。


 物語に盛り込むテーマは、何でも構いません。

 世の中に感じる怒りでも、自分が信じる哲学でも、こうした方が人生は楽しいでも大丈夫です。

 まずは自分の感情や考えを「物語を通して読み手に伝える」ことを意識してみてください。


 それが、貴方の物語の『テーマ』になっていきます。


 それでは、今回はここまでとさせてください。

 次回はおそらく『ジャンル』と『レーベル』について、その次はストーリーの構築か、それとも文章の基礎知識にいくか……悩みますね。


 当エッセイを読んでくださり、ありがとうございました!

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