第5話 「魅力の言語化」と「レビュー」
ここまで読んでくださった方は、うすうす気付いているかと思います。
花咲樹木が記す『物書きの上達方法』とは、物語を書くことではありません。
執筆していない時に、考えることが「努力」や「練習」になるという結論に向かっています。
これは一度エッセイで書いたことであり、これからも何度も書き連ねていく結論ではありますが、物語は『考えたことを言語化した』もの。
物語とは、作者の頭の中身がそのまま具現化したものといっても過言ではありません。
それぞれの頭の出来が、そのまま作品の質として出てしまうところは、残念ながら公平な部分ではありませんが……。
小学校、中学校が義務教育であるため、おそらく識字率99%を超えるであろう日本という国では、簡単な日本語は誰でも書けますし、読めます。
つまり基本中の基本は既に入っているのです。
そこは誰もが皆、公平です。
そして誰もが悩むであろう『文章力』という言葉の内訳は、言葉選びのセンスや、日本語の上手さ、文章の配置の巧みさといった部分にあたります。
ここは実は勉強しなければ上達しない部分ではあるのですが、物書きにとっての勉強は「小説を読む」「漫画を読む」「アニメを見る」「映画を見る」「ゲームで遊ぶ」といったものに切り替わります。
文字や言葉、物語の構成が入っていれば、何でも参考資料です。
(いわゆるインプットですね。遊ぶことや楽しむことが勉強とは何とも素晴らしいです)
そうやって積み重ねた努力や勉強は、頭の中にのみ蓄積されます。
スポーツ等や絵を描くイラストレーターの分野とは違い、反復練習は一切必要としない分野です。面倒くさがりにとっては、素晴らしい後押しですね。
では、執筆していない時に行う『考える』内容とは?
いわば物語を組み立てること。
始まりから終わり、オチまでを含めたプロットを構成することになります。
(※エッセイ内では、実際の文章の内容においても、学んだことを書き連ねていくつもりですが)
さて、これはかなり残酷な表現すぎて書くのがはばかられるのですが……。
そもそもの話――
プロット段階で面白くないものは、実際に物語を書いても面白くありません。
(作者自身や、読み手の想像を超えて、望外の評価が得られることはほぼないでしょう。この内容の詳しい説明は【ストーリーについて②】という項目にて、掘り下げています)
『プロット(設計図)が面白くない物語は、実際に書き起こしても面白くない』
これは断言できます。
できて、しまうのです……。
花咲樹木も未だ勉強中であり、こうして偉そうに講釈を垂れる立場ではありませんが、物語において「プロット」とは、それほど重要であるという純然たる事実なのです。
だからこそ、物書きは「物語の構成力」を頭の中で磨き続ける必要があります。
一度例に出したイラストレーターさん等は、一度長期間サボってしまうと確実に腕が落ちます。
しかし物書きは違います。長期間に渡り書いていなかったから目に見えるほど文章力が落ちている、ということはほぼありません。
(実際、二年間小説を書いていなかった花咲樹木は、久しぶりに書いた新作を見てむしろ面白くなったと自負できたからです。実際、それを提出して採用された)
小説を楽しみ、漫画を読み、ゲームをやり、アニメを見て、映画を嗜むことが、物書きにとって何よりも勉強になるのです。
なにせ、それらはプロの作品です。
(同人作品でも、多くのことを学べますが)
企業や出版社が「お金をかけて売り出そう」と認めた作品達なのです。
参考にしない手はないでしょう。
プロの作品達には、その全ての演出に意味があります。
例えば小説では、キャラや舞台の設定、セリフ、地の文、強調や間の置き方など、無駄な表現など一切ないと断言してもいいです。
その構造を解析し、自分の糧にする事が、新たなインプットをしないままで「物語を作り続ける」ことよりも、大きな勉強になります。
(物語を作ることで学べることがないと言っている訳ではありません。書いた物語を振り返ることで、改善点が見つかることが絶対にあるからです)
しかし、どのプロの作品を参考にすれば、一番自分に合っているのか?
それを見つけることが、自己分析への最初の道です。
そして、それは前回の項目で掘り下げていきましたね。
自分が買ったプロの作品達を見てみましょう。
それが、自分の感性に合っている物語です。それを構成している大事な要素を、自分の中に取り込んでいきましょう。
花咲樹木が当エッセイにて記す『考える』ことは、実際に物語を書いていなくても、次に書くとき作品の質を上げる為のものです。
その為に、大いにプロの作品を楽しみ、大いに学びましょう。
ですが、そこに必ず『考えること』を混ぜましょう。
自分が物語を見て何に笑い、何に怒りを覚えるか――自分の中にある根源的な感情を、知っていきましょう。
そこに、これから自分が書く物語の『テーマ』が隠されています。
(ここも、いつかの項目にて掘り下げていきます)
といっても、考えるだけでは把握しにくいですよね。
実際に、頭の中に刻み込むという意味でも、ただ思考するだけでは身につき辛いです。
そこで文章の力を使いましょう。
物書きにとって、文字というのは最も慣れ親しんだツールです。
文章とは、物事を表現する為の武器なのです。
では文章を使って、自分の感性を整理する方法とは何か――それは『レビュー』です。
作品の面白さを短い文章でまとめ上げる。
レビューというシステムは、この練習に適しています。
好きな作品の面白さを自分なりに解釈し、その感性を見知らぬ誰かに伝える。
どうでしょうか。
これって、少し「あらすじ」に似ていませんか?
そして【物語を書く上で必要な前提】にて書き連ねた、プロットの段階で面白さを理解してもらう、この事にも関連しています。
あらすじとは、要約であり解説です。
レビューとは、要約であり宣伝です。
短い文章で魅力を説明し、相手にこの作品の本文を読んでもらいたい、という気にさせる練習になるのです。
(何万文字もある物語を書くよりも、ずっと楽な練習方法になるはずです)
実際にレビューを書いてみるのが、一番の練習にはなるのですが、それは恥ずかしい、抵抗感があるという場合は、他の方が書いた文章を参考にしましょう。
(出来れば一度読んだことのある作品のレビューが望ましいです。なぜなら、その方が感じた作品の魅力と、自分が読んで感じた魅力の差や、その方が作品のどこに着目しているか、はっきりと分かります)
拙作『貴方の願いを叶えましょう。ただし貴方の夢は叶いません。』は、幸運なことにレビューをいただいております。
一度覗いてみてもらえると、どんな作品なのか掴みやすいかと。
読者様が、その作品にどんな魅力があると感じたのか、一発で分かります。
他の方が書いたレビューを読んでみて、興味が引かれたら、なぜその文章で“自分が興味を持ったか”を考えてみる。そして、そのレビューの伝え方には、自分がこれから追い求める、文字による『面白さの伝え方』が含まれています。
(レビューの達人は、プレゼンの達人でもあるのです)
面白さの伝え方は、これからエッセイにて記す様々な事に関連してきます。
物語の「構成・組み方の意図」にも通じ、実際に物語を書く際の「文章の表現方法」にも通じてくるものだと、花咲樹木は考えております。
なぜなら、物語とは『考えたことを言語化した』もの、そして物書きとは『頭の中にある面白さを文字によって伝える』ことに特化した存在だからです。
今までレビューを書いたことがない、という方がいらっしゃいましたら、一度挑戦してみるのも面白いかもしれません。
きっと、作品の魅力を要約して相手に伝える、という経験を大きくつめるでしょう。
(これは作品の本文だけ書いていても、身につきにくい経験値です。しかし物書きにとっては、作品制作と同じくらい大切なことなのかもしれないものです)
そして、レビューはどんな作者様にとっても励みになります。
(精神的な励みだけじゃなく、実際のPV数にも関係してくる)
ですが物書きを目指す自身にとっても意義がある。いわゆるWin―Winの行動なのです。
何よりレビューで参考になるのが、作者が作品を通して伝えたかった魅力と、読み手が感じた魅力の差を把握できることです。
どちらが信用に置けるかは、一目瞭然ですね。
読み手が感じた魅力の方が、世間一般の意見に近いのです。なぜなら、実際の読者様ですからね。
(そこに差があった場合、作者が伝えたかった魅力は表現しきれていない可能性が高いです。一致していた場合、作者の狙いは成功しています。自信を持ってその部分を強化していきましょう)
・好きな作品の傾向を通して、自分を理解する
・自分の好きな作品(または自分の作品)の魅力や面白さを言語化する
さて、それでは次回は自己分析の極みである「第三者視点」についてを、カキカキ掘り掘りしていきたいと思います。
これを行うことで、花咲樹木は小さい頃から漠然と持っていた根拠のない自信を失くし、自分を嫌いになっていったのです……。
(やばい。全然、魅力的な項目に見えない)
しかしこのネガティブ思考の始まりが、物書きを目指すきっかけにもなったのでした。
『第三者視点』とは――
自己分析と、物事の裏側を覗き見る『構造解析』に通じているのです。
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