第6話 「第三者視点」とは何か
今回は、自己分析の方法『第三者視点』についてを、カキカキしていきたいと思います。
前回までの自己分析は、物語を書く上での「自分が好んでいる作品の傾向」を知る為のものでしたが、今回はもっと人物に注目していくことになります。
人物――『キャラ』についてですね。
(もう少し先にて書くであろう「キャラを作る」という項目にて、もっと深く掘り下げさせていただきますが、今回はその分析の方法について)
キャラクターについての構造解析です。
これは小説を書く際に「一人称小説」・「三人称小説」というものがあるので、そこにも少し掛かってきます。
では、ここでいう『第三者視点』とは何か?
自分がどういう人間なのか、客観的な目線で分析する、という意味合いですね。
自分という人間を、他人になったつもりで評価をくだす。
(ただの感想では意味が薄いです。自分の能力の限界値を探るという意味になります)
これが、中々難しく、正確な分析はほぼ出来ないといってもいいでしょう。
誰もが自分に対して甘い部分があり、厳しい部分もあります。それを自分で認識する、という事が特に難しい部分なのです。
例えば「約束を守る」「遅刻をしない」という特徴を持つ人物がいたとしましょう。
社会のルールを守り、人間関係を構築する場合において誠実でいたい、と考える“善い人間”ですね。
そういった人は大抵の場合、他人に厳しいです。規範やルールを何よりも重視し、それを守らない人間に対して怒気を発します。
(言葉では伝えない場合でも、気分が悪くなる等といった感情の発露を見せます)
社会のルールを守らず、常識的な行動を取れない人を、自然と見下してしまうのです。
(なぜなら自分がそれを注意して、意識して行動を律しているから。出来ない人間を「だらしない」と下に見る)
そして、そういう人物は、相手にどんな理由があっても、まず一度は怒ります。
約束を守れないなら、遅刻するのなら、それを考慮して「先に対策しておく」のが筋だろう! と説教し始めます。
(急に発生した電車の遅延とかでも)
正論ではありますが、正直ムカつきますよね。
(理性や行動は制御できますが、感情はコントロールできません。ムカつくという感情が生まれること自体は悪いことではありません。それを相手に伝えたらマズいですが)
まず第一に、どんな人間でも、常に完璧でいられる訳ではありません。
時には間違い、焦りの感情が体にまで伝播し、普段なら選ばない行動をしてしまいます。
(大事なのは、そういう場合に「どう挽回するか」だと思いますが、それも難しい項目です)
ですがそういった「正当な意見」を述べる人の中に、自分が約束を破った場合、自分が遅刻した場合において「罪を正当化」しようとする人物がいます。
こうこう、こういう事情があったから、約束を守れなかった、遅刻してしまった。だから仕方なかった、自分は悪くない、と主張するのです。
相手の事情は考慮などしてくれなかったくせに、です。
むしろ「なんで自分には正当な事情があるのに怒られなくてはならないのか」と逆ギレする場合もあります。
(普段は規律を守っている。一回くらいいいだろう! と)
……どうでしょうか?
これが「自分に甘く他人に厳しい」の典型例です。
どこが“善い人間”なんだと、思ってしまいますよね。
(ここで不思議なのが、そういう人は「自分が悪いことをした」と感じていない場合が多いです。ですが他人から見たら、普段の言動から来るギャップが影響し、より大きく評価が下がります。本人は変わった事をしていないつもりでも、です)
こういう分析をしていくと、普段は約束を守っていても、普段は遅刻などしていなくても、たった一回の行動で「ルールに厳格な人」→「綺麗事を言う人」にジョブチェンジします。
恐いですよね。
そしてこういった事例は、普段は無意識下で行っていて――『考えないと気付けない』のです。
先ほどのは一例ですが……例題と似たようなこと、身に覚え、ないでしょうか?
(花咲樹木の場合、めっちゃアリました。なんて傲慢な人間だったんだと、酷く落ち込みました)
一度でも起これば、数回も同じことが発生したら、そういう性格だと判断されてしまい、瞬く間に周囲からの信用を失います。
その他にどんな良い部分があっても、歯に挟まった小骨のように悪印象がいつまでも残ってしまうのです。
(「好き」と「嫌い」は加減式ではありません。別々の感情として存在しています)
最初に信用を築くよりも、失った信用を回復する事の方がはるかに難しいです。
注意していきたいですね。
閑話休題。
さて、それではここまでの解説をまとめると、
・自分の言動が、他人の言動が、周囲にどういった印象を与えているか。
・または、今までの行動でどういう印象を与えていたか、思い返してみる。
これが『第三者視点』の始まりです。
人物を描写する、という“キャラクターの言語化”の第一歩めなのです。
これを理解していくと、まるで「物語の中でキャラが生きている」と錯覚させられるほど人物の描写が上手くなっていきます。
キャラの言動や性格が、現実の行動に即しているからですね。
客観的な目線というものを意識する、ということが、物書きにおいて最重要といってもいいほど深く関わってくるんだと、少しでも伝えられれば嬉しいです。
(なぜなら、どんな物語もキャラを描く必要があるからです。それも、大抵の場合は複数人)
そして、これを意識することで、社会の中で『自分がどんな位置にいるか』が少しずつ掴めてきます。
家族、友人、同僚、恋人、人間同士が作る関係性の中には色んな種類があります。
それぞれの関係性によって、ひとりの人物への評価が常に変動します。これも意識してみてください。
人物・人間の性格や言動は、どんな場所でも一貫している訳ではないのです。
(現実というリアルな世界に置いてです。物語の中で、その変化や矛盾を下手に描写すると「キャラぶれ」として批判される要因になるので注意が必要)
・そもそも人間は矛盾している。感情や性格は、単純ではない。
→「好き」と「嫌い」が混同したりする。「この部分は好き」だが「別の部分は大嫌い」というように、一瞬で違うことを同時に考えたりしてしまう。
(チグハグな行動をする人間は、胸の内でこういった現象が起こっています)
・どんなに学校・職場で嫌われていても、違う関係性の中では人気者の可能性がある。
→自分が嫌いな人間がいたとしても、その人が「誰からも嫌われている」わけではない。
(不良などがいい例です。多くに嫌われていても、不良社会では人気があるので)
人物・性格というものは多面性を持つものであり、自分から見た感想だけでは、簡単に総評がくだせません。
だからこそ、様々な視点から「ひとりの人物」を解析していくことが、キャラの描写の深さに関わってくるのです。
では自分という人物を、様々な視点から見たら、どんな事が分かってくるか。
次はこれを意識していきましょう。
本当はこの項目内で解説するつもりだったのですが、例題のくだりが少し長くなってしまったので、分割させていただきます。
次回は――『第三者視点』を自分に当てはめたら、どんな事がこれから書く物語にどう役立ってくるか。
これを、掘り掘りカキカキしていきたいと思います。
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