第7話【国での生き方】
「えー!?冗談じゃよな?ソロなんて。」
焦った顔で大木が僕に言ってくる。
「冗談じゃないぞ。だって面倒なんだもの。」
「え、我は戦えぬぞ……どうやって生きていけと。」
戦うだけで金を手に入れようとするなど無茶にも程がある。戦えぬやつが勇者になったって意味が無いのと同じだ。その人にはその人の金の集め方がある。
「別に戦えなんて言ってないじゃん。そこら辺のお手伝い探しているお店でお手伝いすればお金くらい手に入るだろ?」
「えー、プリングスはどうするのじゃ?」
「ん?僕は適当にそこら辺の宿を借りて住むけど?」
大木と一緒に。という言葉はあえて付けずに反応を伺う。
「えっ。」
「うん。」
「え、あの、どこで働く気なんですか?」
「え?ソロだけど?」
「……」
どうやら一人でどう生きていけばいいのか考え始めたようだ。
真面目だな、とかそんなことを思っていた。
「僕、ここの国ではけっこう有名なやつだからさ。」
「!その名前出したらおかねもらえたりせんのんか?」
「いや、無理だろ。働け。」
名前出して金もらうとかほぼ強奪じゃん。最悪な野郎じゃん。取れないことはないけどそんなことして稼いだ金で食べても美味しくねぇと思うんだけど。
「楽していきていきたい。」
「それは大いにわかるが知らん。」
「ぐっ……」
ぐっ、じゃねぇよ諦めろよ。
「ここはどの国よりも温泉と武力には力を入れているからね。銭湯と銭湯ってか。」
「確かにそこら辺から湯気が漂っているような気がするのぉ。それは温泉ということじゃな。武力というのは騎士や冒険者のことじゃな。銭湯と戦闘については突っ込まないことにするぞ。」
……突っ込まないことにする?
「は?突っ込めよ。」
「え、そこ拾っちゃう!?」
「まぁ、そんなことは冗談としてここにはたくさんの温泉があるから、温泉については困らないと思うぞ。」
半分くらいは冗談だ☆
「効果は得られるのか?」
「もっちろん、そりゃあもうたくさん。」
「ほわ〜。」
期待で目がキラキラしているのがわかる。
うむ、やはりロリなだけあって可愛いのだが僕の好みではないな。
○
「暮らしていくのに必要なものは……守り石がいくつか欲しいな。僕の着替えは沢山あるし生活魔法で洗濯できるから問題ないとして、鏡とかか?まぁ、旅人だし宿屋を借りるつもりだからそんなには要らないか。後は食べ物……と思ったけど魔物の肉や皮やらが沢山あるんだよなぁ……後で加工魔法で加工してなにかに使うか。四次元空間ポシェットは時間の流れがないから腐ることを心配しなくていいって言うのがいいよなぁ。」
ここには何度か来て暮らしているがその度に持ち物を四次元空間ポシェットに入れているので意外と一人で生活するには不便ではない。
だが今回は特例である。悪魔の罠にいつの間にか掛かっていたのかいつものように一人旅ではなく2人になってしまった。はっきり言うと邪魔である。
「ちょちょちょちょ……まって待つのじゃ!早い!歩くの早い!」
息を切らして追い付こうとする大木の姿が見える。そんなに早くはないはずなのだがそんなに早かっただろうか。
「あ。ごめん、ついいつもの癖で。」
「いつもって……あぁ、そっかここで暮らしたことあるんだったんだっけ?」
「うん、そうそう。」
適当に返事をしておいた。面倒だし。
「で、これからどうするんじゃ。」
本題に入るのが遅すぎか。
そういう感じの2人組だから仕方ないんだけどそれにしてもダメだろ。
「あー、まず一つ言っておくと大木を一人にする気は全く無いので安心してくれ。まぁ、僕は養わないけど。今後については僕と同じ部屋に住んでもらうけど食事などは自分でやってくれ。」
「えっ。」
「は?」
「いや、だって無理……。」
え、何こいつ。
僕こいつと生涯一緒にいるとか約束したっけ?
なんで一緒に生きていく前提でなってんの?自分の身ぐらい自分で守って頂けますかね?
自分の身も守れないやつが他を守れるわけ無いじゃないですか。
「甘ちゃんじゃこの世は生きていけないんだよ。今から慣れていかないと。いつ僕が離れなくちゃならない時が来るかわからないしね。あと普通に面倒。」
「最初かっこいいとか思ってたのに最後ぉお!何でそうやって株を下げに来るのかなぁ!?」
「え?だって興味ないもん。」
「知ってたぁあ!見た目はいいんだからそういう所もしっかりしてよ!!」
ホントうるさいなぁ。
見た目は若いくせにこうやってテンションが上がるとキンキンした声のただのうるさいヤツに変わる。
はっきり言って気持ち悪い。
ほんと二人旅は疲れるなぁ、さっさと一人になりたい。
「あ、でさ宿屋なんだけどーー」
「ガン無視ですか……そうですか、話し続けていいよ。」
カマチョはいいから、ほんとそういうの求めてないから静かにしててもらえるかな。
あー、うざい。
「あそこの宿だから。めっちゃいろんな人が入り込むし泥棒は入るしで散々なところだから常に自分の近くに大切なものは置いておいた方がいいよ。」
「うわぁ、いかにもって感じじゃな……。」
嫌がらせも入っている。
実際のところ僕はそんなところで寝る気は無いし、大木が寝るだけのスペースなので特に問題は無い。
泥棒や盗賊に連れ去られたらラッキーだなと思うレベルで他には何も無い。
「というか大木、喋り方統一してくんない?」
「なんじゃ!私流の喋り方に文句があるのか!」
「うん。」
「即答すな。」
「やだ。」
「と言われても頑張って今っぽい感じに変えてるんじゃからしょうがない!」
「やだー。」
「何がじゃ……。」
「全☆部」
「こんなに嬉しくない全部は初めて聞いた。」
そんなたわいもないことを話しながら町を回っていた。
前回きてから十数年しか経っていないため人もあまり変わっていない。
子供だった子が大人になっていたりという差だけだ。
○
「とりあえず買い物も終わったし大木には前々から話をつけておいたSATYのところで御手伝いさんとして働いてもらうことにするよ。そんなに予定をぎゅうぎゅうに入れているわけがないから他のバイトもしたいならしてもいいし基本的に自由だ。」
「え、もうバイト先決まってたの?」
買い物をして手に入れたのはとりあえず食料だ。僕はいらないのだが大木には必要らしい。精霊も普通にご飯食べるんだなぁと思いながらキラキラと目を輝かせて買い物をするのを見ていた。
後は、日用品だろうか。大木はボブなのでそんなに髪は長くない。くしがあれば十分だと思いくしを買った。
服類は要らないので買わなかった。
「あっ、そういえば鏡買ってねぇや。大木、先にSATYのとこ行ってて。場所はさっき説明した通りだから分かると思うけど、バイトが終わってすることが無くなったら宿屋に帰って寝ればいいよ。」
「え、あっはい。」
大木に手を振って別れる。SATYとは大分仲良しになったようで早くお話をしたいのか颯爽と店の方に向かっていった。
(あれだけ仲良しになったやつがいれば置いていっても十分に暮らせるよな。)
厄介事は御免なので次の温泉の旅は一人でしたい。
○
「すみませーん。」
「……おや?お客さんかい?」
出てきたのは推定80、シワシワの若いおばあちゃん。紫の装束に宝石を散りばめた豪華な装飾を施してある。魔女である。
「鏡が欲しいんですけどありますか?」
「もちろんあるさ。ちょっと待ちな。」
ここは何でも屋でおばあちゃんはここをずっと経営する若い魔女。世代交代されたばかりなのでまだ未熟である。
「これかね?」
若い魔女が一つのシンプルな鏡を持ってきた。
何の変哲もないただの黒い鏡だ。
渡されたので手に取った。
(やっぱり、現実とこっちでは姿が違うんだな。理想の姿までとは言わないがなかなか様になっているようだ。)
ベリーショートの黒髪に青の髪の毛が入っている。
目は黄色く水色。服はジャージで全体的に黒く不吉だ。
総合的に見ると男、と言ったような感じで髪と目だけ見れば中性的、格好は男と言ったような感じか。
(だがやはりこっちにいる時の姿はいつもこれだな。)
初めて見た時は心底驚いたものだが正直これは慣れとしか言いようがない。
「これ買うよ。幾ら?」
「銅貨四枚。」
「ほい、四枚丁度。」
不吉な色の鏡を四次元空間ポシェットに分類わけをして入れる。
周りから見たらジャージのポケットに鏡を入れたようにしか見えないのだが。
●
大まかな設定メモ
この世界のお金の設定(円)
準銅貨……100
銅貨……1000
準銀貨……10000
銀貨……50000
準金貨……100000
金貨……500000
神大金貨……1000000
小切手……それ以上
鏡などの滑稽品は高い。
パンは一番安いので準銅貨一枚分。
面倒なので安売りが多い。
バイトは朝から晩までの日給制度、貰えるお金は準銀貨一枚分上下。詐欺ってくるところも多い。
ちなみに何でも屋の若い魔女は彼から変な気を感じたので値段を高くしてぼったくるのを止めました。
実に懸命な判断ですね。
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