第4話【名前】

「いや〜にしてもほんっと温泉っていいよねぇ。この日々の疲れが一気に解消されていく気分がするよぉ〜。」

「それは良かったのじゃ……う?」


僕は異世界人。

ある時、白身(命名:僕)に無理矢理異世界転生され、やめろ!僕の好きなように生かせてくれという自分勝手な考えと行動により魔法を撃たれるも全てを避け、日を跨いで休まず走り続けた。辿りついたのは少し高い山、そこに聳え立つ一本の大木で休憩をしてひとりごとを言っていると大木に話し掛けられ、「こ……こいつ直接脳内に……!」という自分でも飽きれるくらいの気が紛れることを考えていた。そんな中、大木(命名:僕)に示された僕にして欲しいことはなんと『温泉巡り』!?温泉大好きな僕が断るはずもなく、温泉ついでに大木を助けることにした。が、途中で魔物に襲われ、力が無いため荷物でしかない大木を抱えて逃げていると、いきなり魔物の気配が糸を切るように消えたので何事かと思ったら守り石のくっついた木があり助かった。大木が自分も持ってるよと自慢してきた時は置いてけばよかったと後悔したけど笑顔可愛かったから許すことにした。とりあえず目の前に温泉があったので入ったら全ステータスアップの温泉で幸先がいいと大木が喜んでいた。


温泉を出た後、なんか服があったので着替えていた。どっから服が出てきていたかなんて気にしてはいけない。

白身が召喚したのだからこんな感じに四次元ポケット並のバックがあっても当然だと考えよう。きっと着替えも入れておいてくれたんだ。ヤッサシー。


「そういえば、我、名前知らないぞ。」

「それ言ったらこっちも大木の名前知らないな。」


……教えてくれないのかとうるうるした目で見るのはやめろ。


「僕の名前はホットス・プリングスだよ。」

「あっ、我の名は……」

「あっ、大丈夫です。大木は大木なので名前言わないでいいです。名前聞きたいほど僕は君に興味が無いものでして。」

「えっ。」


反応が予想外だったのかしょんぼりとする大木。

しばらくして機嫌が治ると「ホットス・プリングス!プリングス!」といいながら鼻歌まじりでスキップしていた。


名前を聞くとその名前で呼ばないといけないからホント嫌だよ。

だから名前聞くの面倒なんだよね。


あっ、ちなみに聞きたいでしょ?

ホットス・プリングスって言うのは勿論偽名なんだけどその名前の由来は温泉の英語がホットスプリングスだからだよ。

安直で僕らしいでしょ?


「プリングスは、どんな魔法が使えるのじゃ?」

「魔法かぁ……僕に出来るもんなのそれ。」

「むっ?プリングスからは異常な魔力を感じるからきっと魔法が使えるとおもうのじゃが……。」

「へぇ。」


今自分の目の前に「へぇ」ボタンがあったら確実に連打してた。っていうかこのネタもう古いか……わからない人多いか……。


もし、魔法が使えるなら…………温泉を作る魔法が欲しいよな!自分だけの世界を作ってそこの温泉をずっと巡る!新しいのをどんどん増やしていって毎日毎日温泉に浸かって生きてゆく!そこには誰もおらずただ一人だけの空間!いるのは自分と温泉だけなのさ!なんだその夢の世界!ぜひ作りたい、そんなことが魔法で出来るなら是非ともやりたい。そしてそこで一生を終えたい!死ぬなら寝ながら温泉で溺死か、水分不足で湯の中で倒れて温泉で溺死か、お湯の量を間違えて温泉で溺死したい!ぜひとも温泉という最高の文化とともに死にたい!出来ることならば、自分の作った温泉で自分から死にたい!


「えっと、プリングス?」

「気にすんな。こっちの話だ。」


とりあえずこの使命を果たすまでは温泉とともにこの世を去るのは厳しいので、僕は頑張って指名を果たし温泉とともに死ぬことを目標に生きていきます。

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