重要なのは事件の真相ではなく面白さ!?

ある日、校内で起こった殺人事件。日常に退屈していた主人公たち、男女三人は事件の謎を追うことにした……と説明すると普通のミステリーっぽいのだが、本作が特徴的なのは彼らが行うのが、「探偵ごっこ」ではなく、「脚本家ごっこ」という点だ。

では脚本家ごっことは何か。作中の台詞を引用すればこういうことだ。
「つまりね。今回の事件を面白おかしく説明をしようって訳。どういう動機で、どういう方法が取られたか、一番面白い筋を書いた人が勝ちね」

とんでもなく不謹慎な話なのだが、授業をサボったり、ずっと寝ていたりするのが当たり前の彼らにとって、たいして親しくない生徒の死なんてあくまで暇つぶしの材料でしかない。そして、こんな彼等が繰り広げる会話がとても軽やかで読ませるのだ。

謎解き部分がややあっさりとしてミステリーとしては少し弱い部分もあるが、それよりもクラスメートたちとの何気ない会話や、事件を調べる過程で浮かび上がる男一人女二人の微妙な関係性など、青春小説としての側面を楽しんでほしい。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

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