第2話 腐食パンネコ
<ドゥルンドゥルン!>
荒野の中を男が土煙をあげながらバイクで駆け抜ける。
ふと前方に小さく蠢く獣の姿が目に入った。
子猫だ。
<ドゥルンドゥルン…ジャッ!ガチャン!>
男はバイクを止めて降りると屈んで子猫に向き合った。
「チッチッチッチ…」
口を小さく鳴らし子猫を呼ぶ。
「にゃー」
トコトコと子猫が近付いてきた。
男は顔から腐食したパンを小さく千切ると、子猫の目の前にスッと差し出した。
「にゃー」
はぐ…
子猫が一口くわえた瞬間、
<ビュロロロロロロッ!>
細切れのパンは禍々しく巨大化し、触手のように子猫の頭を包み込んだ。
「ぶに゛ゃ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ーッ!」
みるみる内に子猫の頭は腐食パンに取り込まれていき、子猫の身体に腐食パンを被った生物がそこに現れた。
「にゃ?」
今ここに『腐食パンネコ』が誕生した。
「にゃー」
腐食パンネコはタタスタンと男の肩に乗ると、ズブッと男の腐食した角食に顔を埋めた。途端、角食同士が融合を始める。
「にゃー」
腐食パンネコが取り込まれた腐角食の中で嬉しそうに鳴いた。
それから男の頭には子猫が住み着いた。
角食は強い。
衣食住の全てを賄うことが出来る。
惜しむべきは男が軽度の小麦アレルギーであったことだった。
だからいつも目が血走っている。
「にゃー、ごろごろごろごろ」
腐食パンの中で子猫はのどを鳴らしている。
<ブォン!>
男はバイクに火を入れると、また荒野を走り出した。
『腐食パンマン』
子猫が大好き。
『腐食パンマン』
“チャトラン”のことを大人になるまで“チャラトン”だと思っていた。
『腐食パンマン』
盗んだバイクで走り出す。暗い夜のとばりの中へ。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます