腐食パンマン
優和
第1話 腐食パンマン登場
ザッザッザッザッ…
荒野に歩む長身の男。
ズタボロのマントを頭から被り、風が舞い上げる土煙を防いでいた。
<ドドドドドドドドドド…>
「ヒャッハーッッッ!狩りの時間だぜェーッ!」
幾台かのモトクロバイクの集団が遠くの繁みから突撃してきた。
先頭のモヒカンパンクヘッドの男が頭の悪そうな矯声をあげて男の背後から鉄パイプを振り払う。
<パシ!>
「あぁあああッ!?」
<ズシャーッ!>
振り向きもせずに男は左手で鉄パイプを掴むと、モヒカンパンクヘッドは砂煙をあげてバイクごと転んでいった。
「あの野郎ッ!オメェら!殺っちまえッ!!」
「「「オオオオォォォッッ!!!」」」
<ブォン!ブォンブオォン!>
後ろを走るハゲデブパンク野郎が声をあげると、数台のパンク野郎達が男に向かって鉄パイプを振り払っていく。
<ガィン!ガィン!ガィン!ガィン!ギィン!>
手にした鉄パイプでパンク野郎達を次々にいなしていく男。
<ズササー!>
「「「うわぁーッ!!!」」」
転ばされたバイクはいくつも重なり合い、<ドガァン!>と爆発音をあげる。
「ふぅ…」
男は溜め息をつくと、おもむろにマントから顔を出した。
<ギャギャギャギャ!>
デブパンクは男の前でバイクを急停止させた。
「!…テメェは!?」
男の顔はカビの生えた角食で覆われていた。
目の部分だけが千切れて穴が空いており、そこから見える血走った鋭い視線をギロッとデブパンクに向ける。
「まさか…!?テメェ、『腐食パンマン』!?」
デブパンクがそう言った次の瞬間、男の顔の角食がいくつもの拳大に千切れ飛んだ。
「あーたたたたたた!あーたたたたたた!ほわちゃあッ!!」
無数のパンを叩き付けられたデブパンクは目と鼻と口にカビだらけのパンを詰め込みながら絶命した。
そしてなぜか男のパンはいつの間にか再生していた。
『腐食パンマン』
人体実験によって顔中をパンにされた男。
しかしそのパンは腐り、青カビを携えている。
男のパンは無添加だった。
<ドゥルン!>
男はデブパンクのバイクを奪うと、風のように去っていった。
この世の全てを憎むように、ありったけのアクセルを噴かしながら男のバイクは走る。
『腐食パンマン』
男はそう呼ばれていた。
『腐食パンマン』
男はそう恐れられていた。
『腐食パンマン』
お腹が減ったら顔を食べる。
『腐食パンマン』
だから彼はいつもお腹を壊している。
ゴロゴロゴロゴロ…
お腹を鳴らしながら彼は盗んだバイクで深い闇のとばりの中へ走り去って行った。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます