第3話

「え?今ゆうちゃん何て言ったの…」


ママとパパは笑顔でゆうちゃんに


「おめでとう」


と、言っている。


何がおめでとうなの?


どうして二人はそんなにも喜んでいるの?


それに、ゆうちゃんの後ろにいる女の人は誰?


モデルさんみたいに細く、綺麗で、可愛くて…


そんなことはどうでもいい。


どうして貴方がゆうちゃんと手を握りあっているの?


「緋莉、これで俺にぼっちなんて言えないぞ?」


と、いつものように大人気ないような言い方で私に言ってきたが、私の頭の中には沢山の'どうして'ばかりで、そんなゆうちゃんの言葉すら上手く受け取ることはできなかった。


「ほら、緋莉も優哉くんにおめでとうって言いなさい。」


と、ママに言われた。


私は言えなかった。


違う、言いたくなかったんだ。


その代わり酷いことを言ってしまった。


「意味がわからない!」


ママとパパはもちろん、女の人も、ゆうちゃんも、大きく目を開けて私を見た。


「緋莉…?」


ゆうちゃんが少し困ったように、傷ついた表情で見てきた…


私はなんて酷いことをしたんだろうか。


いつも笑顔で、少し意地悪な表情ばっかりの、優しいゆうちゃんに悲しい表情をさせてしまった。


消えたい、消えなきゃ。


そう思った時には、勢いよくドアを開け走り出していた。


家ですらまともに泣いたことがないのに、初めて沢山の涙を横に流しながら走って、走って、走って…


あの場所へいた。


私とゆうちゃんの秘密の公園のジャングルジムの片隅に。


きっとこの時私は子供だから、ゆうちゃんが来てくれると思ってここへ来たのかもしれない。


いつものように息を切らせながら迎えに来て、手を繋いで、


『大丈夫だよ。』


と、私に笑いかけて、家に連れて帰ってくれると思っていたのかもしれない。

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