第1話

「昨日のあのシーンやばかったよね」「もう、キュンキュンが止まらなかったよね」「あんなこと言われてみたいよね」


などと、教室の扉を開けると女子が昨日のドラマで騒いでいた。


一方男子は、


「あんなやつのどこが」「あんなセリフのどこがいいんだか」「くさすぎる」


と、ぼやいていた。


きっとこんな事を言っている男子は、実は好きな子に言ってみたいんだろうなと思うと少しは可愛く見える。


しかし、憧ればかりの女子はイケメン以外に言われてしまうと、きっと「キモい」などと言いそうだなと考えると、女子はやはり怖いなとも思う。


そんな色んな人の心理を予想するのが私の朝登校してすることだ。


(こんなことをしてばかりだから友達がいないと思われがちだか、ちゃんといる。)


「あーちゃんー」


ドンッ


突撃してきたのは友達1号の市原陽菜。


通称'ひーちゃん'。


ちなみに私は久城緋梨だから'あーちゃん'なのだ。


「ひーちゃん朝から激しいよ。」


「だって聞いてよ、昨日のドラマがさ…」


ひーちゃんは私とは正反対のタイプ。


少女漫画など、可愛い恋に憧れる女の子だ。


たまに羨ましくもなるが、陽菜の話を聞くだけで私は十分だ。


「でね、ヒロインの想い人がやっと言うの!」


『月が綺麗ですね』


「でしょ?」


「あーちゃん恋愛興味ないともいいつつ観てるんだ?」


「まぁ、一応ね。」


キーンコーンカーンコーン


「あ、予鈴だ。続きは昼休みに話そう〜」


陽菜は私が恋愛の話に対してどんな反応をしても、自分が楽しいからいいの、と言ってくれる。


私も楽しめたら…とも思うけど結局は、まあいいや、で終わるのだ。


そんなことを言いつつも、実は自分で気づいていないだけの感情がどこか心の奥に…

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