久闊

 何年か会っていない人と久し振りに話す機会があった。此方側から特に話すことは無かったのと、相手がお喋り好きなのが重なり、数年前と同じく聞き手に徹していたのだが、話が続くにつれ不穏なものが心に湧き上がっていくのを感じた。違和感を覚えたとかそういうことではない。寧ろその逆で違和感を全く覚えなかったのである。

 まるでタイムマシンでやってきたかの様だった。数年のブランクを感じさせないその喋り方は、彼の人生、引いては思想に全く何の変化も無いことを如実に物語っていた。何だか軽蔑しているような言い回しになってしまったが、そんなつもりは毛頭ない。恐らく彼の人格は数年前、或いはもっと前から出来上がっていたのだろうということを主張しているのだ。私の様な芯が通っていない人間からすると実に羨ましいことである。

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