暑くてどうにもならないので、涼しくなるような話を一つ。酒が入っているので、見苦しいところがあるかもしれないがご容赦願いたい。

 初めて雪を見たのはいつだったか。随分とはしゃいでかまくらなんかを作ったのを覚えている。膝下まで積もっていたので、少し掘ればそれで、人が入れるくらいの空間にはなったのだ。私はその中で、餅を焼いたとかそういうこともなく、ただ黙ってうずくまっていた。しんしんと降る雪は、色彩的にも、音的にも、とても静かなものだったのだが、当時の私は、うるさいと耳を塞ぎたくなったもので、それをするかわりにかまくらに閉じこもっていたのである。

 夜が来て、私は家の中に入ったのだが、すっかり濡れてびしょびしょになった手袋を外して驚いた。手が真っ赤に腫れてパンパンになっていたのである。今でこそしもやけだと分かるのだが、その時はなぜ寒いところにいて熱を持っているのか全くもって理解が出来なかった。

 今でも雪が降ると少し楽しくなってくる。洗濯が大変であったり、滑って転びそうになったりと、苦労の方が多いのだが、幼少の思い出のせいだろうか。

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