第17話 新生魔王と新たなる戦場
時は流れ、新たな年がやってきた。
「ふぅ……」
俺は静かに息を吐く。
旅立ちを間近に控え、神妙な心持ちなのだ。
直前の※精も影響しているかもしれないが、その可能性は未知数である。
旅の支度は万全だ。
俺は魔王の衣をしっかり身につけ、集合場所である工房前に一番乗りしたのである。
当代の女神王ヴィーナスを封印してからの日々は、肉欲と絶頂に彩られた、じつに幸福なものだった。
スピカと一日中、先っぽで繋がっていたり。
ローションまみれのアルテミスとグルヴェイグに押し潰されたり。
ペルヒタを全裸にひん剥き、深夜の野外散歩に繰り出したり。
肌にいいからと、リリスの顔に濃厚な白濁パックをプレゼントしたり。
ちなみに、クリスタルから釈放した女神王は、ひとまず天界に帰すことにした。
『じっくり考え、自分が進むべき道を決めたら、俺の所へ来るのだ』と伝えてある。
そして――。
「ジュノさん……。私が二番?」
「うむ。ネメシスよ、早かったな」
「うん……。ジュノさんと一緒に旅に出られるんだもの。楽しみで……自然と動作が早まったの」
「ククク……可愛いやつめ」
「……ありがと」
そう。
俺に合流したのは、青い髪の乙女――ネメシスである。
澄んだまなざし。
物静かな態度。
しかし好意は隠すことなく、己に正直な心を持っている子だ。
俺は手を伸ばし、彼女の乳※に手を添えた。
「ふむ。やはり、安心する……」
「ぁンッ!」
手のひらにジャストフィットする、安心感抜群の膨らみだ。
揉めば揉むほど、心が安らぎに包まれていく。
「んあぁっ! ジュノさんっ……! そ、そんなにされたら、私……また下着を替えなきゃいけなくなる……」
「よかったな、ネメシス。快楽の味を、しっかり感じられるようになって」
「は、はぃぃ……。私、幸せです……ひぁあん!」
控えめな嬌声を感じながら、俺は手のひらを動かし続ける。
ネメシスの魂は、無事に救出することができた。
そして天界に保管してあった元の肉体に憑依させることで、事なきを得たのである。
その後、ネメシスは魔導調律を求めてきた。
俺たちと同じ、魔族になることを選んだのだ。
感慨に耽っていると、背後の扉が押し開かれた。
「あっ、ネメシスに先を越されたわ!」
金髪ロングの元王女、スピカ。
「あぁんジュノ様! わたくしのお胸もモミモミしてくださぁい!」
乳※の歴史的大豊作、アルテミス。
「くっ、出遅れました。しかし私は、この旅をきっかけに必ず新妻の座を……!」
※尻が魅力の自称新妻、グルヴェイグ。
「ごろにゃん……。ご主人様、旅の間も構ってね……?」
ゴスロリドレスのメス猫ペット、ペルヒタ。
「いや~♪ 婚前交渉……じゃなくて、婚前旅行日和ですねぇ魔王様っ!」
そして最後に現れたのは、我が腹心のリリスである。
皆の後方――工房のエントランスには、ネーメを抱いたスピカの絵画が飾られている。
赤ん坊を見つめる、慈愛に満ちた母のまなざし……。
この絵を眺めながらコーヒーを嗜むのが、俺の日課になっている。
しかし、それはしばらくお休みだ。
全員集合したところで、俺は旅の目的を再確認する。
「これより俺たちが赴くのは、東の大陸だ。そこには、魔導調律に並ぶ卑猥な魔法が伝わっているという。今後の戦いに備え、なんとしても戦力を向上させるのだ!!」
忘れてはならない。
俺の復讐が完了するのは、先代の女神王ヴィーナス――俺を神聖空間に封印した張本人を快楽堕ちさせた瞬間なのだ。
残りの六芒の女神たちは静観を保っているが、彼女らの侵攻がいつ始まるかもわからない。
戦力の増強は必須である。
「俺の魔法を習得する旅なのだから、全員で行く必要はないと思うのだが……」
と、前から感じていた疑問を口にすると、
「まぁまぁ魔王様♪ 旅といっても、転移魔法でいつでも帰ってこられますからね。敵襲があっても安心ですよ!」
リリスがにこやかな笑みを向けてきた。
「そ、それはそうだが……」
「にゅふふふふっ。この旅を利用して、リリスもお嫁さん候補のランクを上げちゃいますよ~♪」
「……? リリス、今なんと?」
「なんでもありませ~んっ♪」
そんなやりとりを経て、いよいよ出発というときに――。
何の前触れもなく、何のきっかけもなく、おそらく何の悪気もなく、唐突にネメシスが言った。
「……ねぇ。ジュノさんは、この中の誰をお嫁さんにするの?」
――ざわっ――。
一同、静かに騒然。
あたりの空気がピキッと音を立て、皆の視線が俺に集中する。
突き刺すような、必死のまなざしが!
だが、俺は魔王だ。
たじろぐことも、慌てることもなく、ネメシスの問いを真正面から受け止める。
なぜならば――すでに答えを用意しているからだ。
「俺は……」
話を切り出す。
空気がざわつく。
緊張が走る。
『ごくり……』
六人の少女たちが、固唾を飲んで俺の言葉に耳を澄ませる。
魔界を統べる王の答えは――。
「俺は、この中の誰か一人を選ぶつもりはない……!!」
これしかあるまい。
だが、どうしたことか。スピカを筆頭に、全員の顔が曇ってゆく。
「ううっ、ジュノ……。誰も正妻にするつもりはないの……?」
「ぜ、全員側室か愛人ということですか!?」
詰め寄ってくるスピカとアルテミス。
あとの四人は、その背後で何度もうなずいている。
彼女たちを制しながら、
「何を言っている。それは誤解だ」
俺は真意を告げた。
「ここにいる全員が、俺の正妻となる女性なのだ!!」
俺のまわりに側室や愛人など不要だ。
スピカも、アルテミスも、グルヴェイグも、ペルヒタも、ネメシスも、もちろんリリスも。
――全員が全員、俺の正妻なのである!!
力強く宣言したつもりだが……どうしたことか。
『…………』
皆は苦笑したり、ため息をついたり、ひどい呆れ顔になっている。
「もう……。全員正妻って、そんなのアリなのかしら?」
スピカの頭を、俺は優しく撫でさすった。
「フッ、当たり前だ。お前たちもよく知っているであろう? 魔王ジュノは、独占欲が人一倍強いのだ!」
王女も女神も快楽堕ち。
気に入った乙女は、全員俺の正妻だ!
と、魔王らしく堂々と言ってのけた、その直後。
「それじゃあ……えいっ!」
なんと、スピカが真正面から抱きついてきた。
そして身体をひねりつつ、軽く跳躍。
俺は思わず彼女を抱き留め――お姫様抱っこの体勢になった!
「ス、スピカ。いきなりどうしたのだ!?」
「ふふっ、別にいいでしょ? だって――」
彼女は微笑む。
たっぷりの愛情を感じさせる、柔らかで、あたたかい微笑みだ。
「――だって私は、ジュノの正妻なんだもの!」
……!!!!!
すっかり胸を撃ち抜かれ、俺はクラッとよろめいた。
が、次の瞬間。
「スピカ様、抜け駆けはいけません!」
「新妻の私を差し置いて……!」
「にゃお~ん!」
「リリスも抱っこしてくださぁい♪」
「あ、あの、ジュノさん……。私も……!」
スピカ以外の全員が、俺に群がってきた!
「お、お前たち、落ち着くのだ!」
制止の声を発しながらも、俺は自分が笑っていることを自覚していた。
いずれ復讐が終わったら、この子たちとの楽しい日々が待っているのだ。
笑い声と嬌声に満ちた、精液がいくらあっても足りないような、どこまでも充実した毎日が――。
やがて訪れる輝かしい未来を想い、俺はつぶやく。
――愛しているぞ。みんな――。
〈了〉
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