第11話 新生魔王は夢の中……?



 これは夢だ。夢に違いない。


 自分の心に言い聞かせながら、ネーメを名乗る少女と対峙する。

 言うに及ばず、少女は全裸だ。

 女体と呼ぶには未成熟だが、つるぺたとも言い切れない――痴の狭間といった体型である。


 ほっそりとした美脚。

 ほのかに丸みを帯びた腰。

 肉づきの薄いくびれたウエストを経由し、俺の視線は絶妙なサイズの乳※に据えつけられた。


「ふむ……」


 ※首はツンと上を向き、※輪の色彩もごく薄い。

 さぞかし美味なことだろう。


「……?」


 ※※※を右手でしごき続ける俺に、少女が小首を傾げた。

 セミロングの髪がサラリと流れ、深い色の瞳が俺をまっすぐ捉えてくる。


「……そこ、すごく大きくなるんだね……」


 言って、少女が近づいてくる。

 その目に宿るのは――好奇心だろうか。


「ま、待つのだ。お前は……」


 一歩たじろぎ、※※※※を継続しつつ、審理の魔眼を発動させる。



【名前】ネーメ

【性別】女

【$?∋〆】¶∮△∑

【種族】人間族

【●▽†】♭§√

【年齢】一※歳

【£∇★≠□∴】※※∧※★※※∧※★

【性欲】一七



 どうやら本当にネーメのようだ。

 いや待て。本当に、とはどういうことだ? ネーメは二歳前の赤ん坊だが!?


「くっ……下半身に血液が集まりすぎて、頭が回転せぬ!」


 そのせいか、意識がぼんやり霞んでくる。

 反比例するように、卑猥なロングソードはどんどんロングになっていくが……。


「お、落ち着くのだ魔王ジュノ。これは夢。夢なのだ!」


 ――いや、それはそれでマズイだろうに!


「つまり俺は、潜在意識下でネーメを性の対象と認識していたというのか!? いくら寸止め状態で欲求不満でも、それはいかんだろう!」


 さすがに肉剣しごきを止め、両手で頭を抱えて苦悩する俺。

 しかしネーメはお構いなしだ。


「こうすると、気持ちいいんだよね……?」

「ぬぉぉっ!?」


 俺の直前に立ったネーメが、両手を使ってロング&ロングソードに前後運動を加え始めたのだ!


 小さく、ひんやりとしたネーメの手。

 しごかれるたび、パンパンに張り詰めた切っ先が、彼女の柔らかなヘソに擦れ……たいへん……良い。


「……すごい。手の中で、どんどん大きくなる……」


 無表情ながら、ネーメの視線は俺の下半身に釘付けだ。

 この快感――本当に夢だというのか!?

 脳裏によぎる疑いは、しかし快楽に塗りつぶされていく。

 腰の奥に痺れが走り、甘ったるい快感が駆け上ってきた。


 ネーメの両手に合わせて、こちらも腰を前後させる。

 彼女は俺を見上げ、


「これ、気持ちいい? すごく、いやらしい顔……」


 淡々とした言葉責めで発射を促してくる。


「あぁぁ……出るぞ!!」


 ――と、申告したときだ。


「手、疲れちゃった……」


 なんとネーメが、両手をパッと離したのだ。

 ――故意ではない。

 寸止め儀式の意図はなく、単にしごき疲れてしまったようだ。


 が、これは辛い!


「ぬぅぅっ、ううう……! あと一コキだったというのに……!」


 射※、解放、※濁花火。

 もはや放出することしか考えられない。


「すごい顔……。※※だなぁ……」


 両手の疲れが癒えたのか、ネーメが俺に抱きついてきた。

 すべすべの腹で竿を軽く圧迫され、それだけで※※※※そうになる。


「ねぇ……。私にも、気持ちいいこと……教えてよ」


 上目づかいになり、ネーメは平坦な口調でそう言った。


「スピカも、アルテミスも、他のみんなも……あなたに気持ちよくされて、すごく幸せそうだった……。私も、経験してみたい……」

「み、見ていたというのか!?」

「うん。リリスとペルヒタのときも、しっかり……」


 ――そういうことか。

 三人でヌーディストビーチごっこをした夜、俺が背後に感じた気配は、どうやらネーメだったらしい。


 ……待て待て待て!


 これを夢だとするならば、あのときも夢を見ていたことになるのか!?


「クッ……思考がまとまらぬ。今はとにかく、下半身に集まりすぎた血液を、脳に回すことを考えなければ!」


 今の俺に必要なのは、ネーメで射※することだ。

 幸い彼女も快楽を求めているようだし、これが夢ならば、何ら問題はない!


 ――結論は、出た。


「ゆくぞネーメ!」


 出陣の掛け声とともに、俺は彼女の乳※に手を伸ばした。


「ほほぅ。これはなかなか……」


 手のひらに伝わるのは、世にも繊細な柔らかさだ。

 しっとりした雪白の美肌が、ほどよく吸い付いてくるような感触――。


 ふにっ……むにゅ……もゆっ……。


 手のひらにすっぽり収まる、このサイズ感。

 揉めば揉むほど、快感と安心感の両方を享受できる。まさしく良※と呼ぶべき逸品だ。


 ――が。


「…………」


 なんたることだ。

 当のネーメは、俺に乳※をテイスティングされているというのに、無表情を貫いている。

 醒めた瞳でこちらを見上げ、声を洩らすことも、頬を赤らめることもない。


「ネ、ネーメ。……ど、どう思う?」

「……わからない」

「き、気持ちよくはない……か?」

「……わからない」

「な――っ!?」


 ※※いじりを継続しつつ、俺は心にヒビが入る音を聞いた。

 さすが【性欲】一七。

【性欲】八八〇のスピカとは違い、まだ快感を受け入れる準備が整っていないようだ。


 決して。

 断じて。

 俺がヘタクソなわけではない。…………と、信じたい。


 ゆえに俺は奮起した。

 ただ揉むだけではなく、ネーメの※※をくすぐったり、舐め回したり、しゃぶったりを繰り返した。

 つまんでクリクリ捻ってみたり、指先で弾いたり、甘噛みも交える。


 だというのに。


「…………。ねぇ……これ、まだ続けるの?」


 ネーメは以前、キョトンとしている。

 もちろん※※※のうるおいも皆無だ。


「ぬ、ぐ、ぐ、ぐ!」


 俺は奥歯を噛み締めた。

 もはや俺の射※などどうでもいい。

 魔王として、一匹のオスとして、このまま引き下がるわけにはいかない……!


 ――魔導調律を使えば、おそらく絶頂は一瞬だ。

 しかし、それは邪道。

 ここで使うべき武器は、己が培ってきた性のテクニックに限定すべきである。

 誠実淫技の精神とともに、俺は次なる手段を考えた。


「……これでもわからないなんて。私には、無理なの……? ……みんなみたいに、幸せな顔……なれないのかな……」


 小声を洩らすネーメ。

 無表情ながら、そこには落胆の色が窺えた。


 だから、俺は彼女に告げる。


「案ずるな、ネーメ。魔王の名にかけて、俺が必ずや絶頂へ導いてみせる。だから横になるのだ、仰向けにな。あと、腰の下に枕を敷くがよい」

「……わかった」


 言われるがまま、ネーメはベッドに身体を投げ出し、腰の下に枕を敷いた。


「乳※が無反応なら、ここしかあるまい!」


 俺はネーメの足元に移動した。彼女の膝裏に手を添え、左右に脚を開かせていく。

 それはさながら、おしめ交換である。


「……これ、おまたくぱぁ?」


 リリスがおしめの交換を実演したとき、そんな表現を使っていた。やはりこの子はネーメ本人だ。

 ――夢、確定である。


 ネーメにうなずき、


「うむ。くぱぁで間違いない。だが、今のお前に行うのは……」


 そう言いながら、俺は彼女の両脚の付け根に顔を寄せていった。


「えっ……。……どう、するの?」


 細い両脚が、ピクリと震える。

 初めて心が揺らいだのだ。


「我が舌技、とくと味わうがよい!」


 俺は、ぴったり閉じたネーメの扉に、粘膜接触を図った。

 ちゅっ……。れろぉぉ……。

 まずは口づけ。

 続いて舌を左右に動かし、割れ目を弾くような刺激を加えていく。


 ――効果は、すぐに表れた。


「あっ……」


 ネーメが微かに喉を鳴らしたのだ。

 細い身体がわずかに震え、快感の兆候を示す。


 勝機――ッッ!!

 俺はさらに舌を伸ばし、それを※※※に滑り込ませんとした。

 舌を小刻みに波打たせ、瑞々しい※※肉に敬意を払いながら。


「……っっ、あ……。これ……なんか、変……」


 ネーメが脚を閉じようとするが、そんなことを許す俺ではない。

 両手に力を込め、引き続きくぱぁ状態を維持させた。


 舐める。

 くすぐる。

 割り込ませる。

 淫らに乱舞する舌先が、閉ざされたネーメの扉を着実に開かせてゆく……!


「あぁっ……ぁぁあ……。な、なに……これ。お腹の奥、しびれてっ……おまた、熱いぃぃ……」


 ネーメの口数が増えてきた。

 彼女は小尻を動かして刺激から逃れようとするが、これも俺は許さない。

 尻の動きを予測し、ほぼノータイムで追いつくのだ。


 結果、舌先愛撫は継続する。

 官能の高まりを妨げることなく、ネーメを白き絶頂の彼方へ誘わんとする……!


「ううぅっ、ううぅぅ……。あぁぁっ、ひぅぅ……!」

 ネーメが大きく口を開け、喘ぎの声量が倍増する。

 さらに彼女は両手でシーツを掴み、腰を反らせ始めた。


 俺は顔を上げる。


「スンスン……れろろぉ……。ククク、ネーメよ。甘酸っぱい匂いがしてきたぞ? ちゅぱっ、ぢゅるる……。それに、俺の唾液以外の味を感じるようにもなってきた」


 ネーメがわずかに身を起こし、下半身の痴態を見つめる。


「あぅぅっ……はぁ、はぁ……。わ、わたし……濡れ、てるの?」

「その通り。お前の身体も皆と同じように、快感を享受できているのだ」

「そ、そう……なんだ……」

「うむ。だから、落ち込むことなど何もない。この感覚を心から味わい、俺を感じながら、さらなる快楽の果てに安心して達するがよい」


 ネーメの瞳が大きく見開かれる。


「あぁぁ……うそ、でしょ? これより、もっと気持ちよくなるの……?」

「嘘ではない。皆、それを味わうことで幸福の笑みを浮かべているのだ。……どうする? イキたいか?」


 その質問に――。


「んっ」


 ネーメはコクリとうなずいてみせた。


 舌技、再開。

 俺は彼女の股間に顔を埋め、いよいよもって激しい責めを展開させた。

 くぱぁと開いた左右の襞をくすぐる!

 中の温かい部分に、舌を深く挿入する!


「はぁぁっ……ぁああ! ひぅっ……うぅん!」


 そのたびに、ネーメは初々しくも愛らしい反応を返してくれる。

 だんだんと汗が浮き立ち、腰をくねらせる回数も増えてきた。


「あぁぁっ、んぅっ、らめ……もぉらめぇぇ……! んぅっ、ああぁクる! なんかクるぅぅ! 怖いよぉぉ……!」


 腰を跳ね上げ、ブリッジのごとく爪先立ちになりながら、ネーメは切なげに眉を歪めている。

 それでも、俺の攻め手はゆるまない。

 性の泉の真っただ中で、舌を回転させたのだ。肉襞をこそげ取るように、強めの圧迫を加えながら!


「んぁあああっ! あぁぁっ、で、出るぅぅ! な、なんか出るよぉぉぉ!!」


 無表情だったネーメはどこへやら。

 今の彼女は性の快楽に悶え、顔を激しく紅潮させている。


「恐れるな、ネーメ。快感に身を任せ、意識を白く飛ばすのだ!」

「んくっ……うぅぅっ! でもっ……でもぉぉ!」

「安心しろ。最後の最後の瞬間まで、俺がしかと見届ける。後悔しないよう、最大の絶頂へ至るのだ!」

「……う、うん、わかった……。あなたが、見ててくれる、なら……!」


 さあ、フィナーレといこうか。

 俺は舌の動きを継続しながら、あるポイントへ視線を定めた。

 すでに包皮から露出した、ネーメのいやらしい※※※※※である。

 唾液と愛液でぬらぬら光るその部分は、集まってきた血液により、はっきりわかるほど隆起していた。


「あぁぁあぁぁイクッ、イクゥゥ! イクイクイクイクイクゥゥゥ……!!」


 ネーメが切実な嬌声を放ったタイミングで。

 カリッ――。

 俺は、彼女の※※※※※を甘噛みした。



「んひゃああぁぁああぁぁぁああぁあぁぁあぁ……!!!!」

 ぶしゃぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!



 跳ね上がる腰。

 飛び散る汗。

 豪快極まるソルトスプラッシュが、俺の顔面に直撃した!


 目が! 目がぁぁ!


 ――と、のたうちまわっていただろう。常人ならば。

 だが、俺は魔王だ。

 リリスに創られたこの肉体は、潮を受けてもびくともしない。


「あ、ぅ……ぁ、あ……」


 力なくベッドに横たわり、腰をヒクヒク震わせるネーメ。

 彼女に寄り添い、その身体を抱きしめる。


「んんっ……!」


 すると、どうだろう。

 いくら身体を触っても無反応だったネーメが、悩ましい声を洩らしたのだ。


「……!」


 これには本人も驚いたようだ。口を押さえ『いま、わたし……』とつぶやいている。


 俺は手を伸ばし、ベッドサイドの手鏡を取った。

 映すのは、もちろんネーメの顔である。

 手鏡に映った自身の顔――。


 ネーメが、目を瞠った。


「これ、わたし……? わたし、こんな顔、して……。トロトロで、えっちで……。すごく、幸せそう……」


 言葉が途切れ、ネーメの目尻に大粒の涙が滲んできた。

 まばたきに合わせて、二筋の雫が紅潮した肌を滑り落ちていく。


「よく頑張ったな。偉いぞ」


 俺は右手で彼女を抱きながら、左手で頭を撫でた。

 ネーメはなんの抵抗もなくそれを受け入れ、


「あ、あり、がと……。す、すごく、気持ちよかった……」


 彼女は泣きながら微笑み、俺にすがりついてくる。


「わたしにも、できた……。わたしも、みんなみたいに、幸せな顔、できた……」


 わたし、幸せ……。

 小さな声でつぶやき――それっきり、彼女は寝息を立て始めた。


「やれやれ。いちおう目を洗っておきたいが……まあ、いいか」


 今夜はとことんネーメに付き合おう。

 俺は彼女を抱き直し、ゆっくりと目を閉じる。

 腕に感じるぬくもりに、深い尊さを感じながら――。





 翌朝。

 窓から射し込む光を感じ、俺は身を起こした。


「そうだ、ネーメは!?」


 眠い目を擦るのも忘れて隣を見る。


 が、そこには。


「んあぁ~……むにゃむにゃ。ダンナしゃまぁぁ~……」


 幸せそうな寝顔のグルヴェイグがいるのみだ。


「では、一体……」


 ベッドを降り、向かう先は奥のテーブル。

 そこに載ったバスケットである。


 おそるおそる視線を下ろすと、


「Zzzz……」


 バスケットに敷かれたクッションの上で、ネーメは安らかな寝息を立てていた。

 その様子を見つめ、両目を擦って再び確認してから、俺は安堵のため息を洩らす。


「やはり、アレは夢だったのか……」


 それはそれで罪悪感が押し寄せてくるが、努めて意識しないようにした。

 そっと、バスケットへ手を伸ばす。

 ネーメの頬を指先で撫で、


「お前はお前の人生を歩むのだ。愛する者を見つけ、心ゆくまで愛を伝え合い、どうか幸せになってくれ……。お前の幸せを、俺は心から望んでいるぞ」


 胸に湧き出る愛おしさに任せて、そんな言葉を口にした。


 すると、どうだろう。


「んんっ……」


 眠りながらも、ネーメは俺の指先を握り返してきたのだ。

 弱く、儚く、頼りなく。


「健やかに育つのだ……ネーメ」


 このとき、この瞬間、俺はどんな顔をしていたのだろう。

 視界の端――俺の口もとが窓に反射していたが、慌てて視線をそらした。


 似合わないのだ、魔王には。

 赤ん坊をのぞき込み、柔らかな笑みを浮かべてしまうなどと――。

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