第15話 新生魔王VS異端審問の女神


 拷問室の形勢は、ついに逆転した。

 これより始まるのは、グルヴェイグを快楽の深淵へ叩き落とすための儀式――魔導調律である!


 俺は強気に歩を進める。

 グルヴェイグをジリジリと後退させ、ついには拷問室の壁に追い詰めることに成功した。


「フッ。観念するのだ、グルヴェイグ」

「ううぅっ……うぅぅ……!!」


 だが。

 彼女の顔を間近で見つめた俺は、あることに気がついた。

 手を掲げ、グルヴェイグのシャープな顎先に添える。

 そして――。



「グルヴェイグよ…………キサマ、綺麗になったな」



 心に浮かんだ感想を、そのまま伝えたのだった。


「――――ッッ!?!?!?!?」


 グルヴェイグが目を見開く。


「な、ななっ……えぇぇ!?」


 色白の頬がカ~ッと染まり、すぐに耳まで真っ赤になってしまった。

 遠見の魔法陣からも、『えぇぇぇぇっ!?』という悲鳴のような声が聞こえてくる。

 俺はしげしげとグルヴェイグの顔を見つめ、


「ふむ……やはりそうだ。三〇〇年前に見たときよりも若返っているような気がするぞ? 洗練された美しき肌。瑞々しく、柔らかそうな薄い唇。眉も睫毛もしっかり整っている……。フッ、やるではないか」


 より細かな感想を伝える。

 しかし切れ長の瞳は、意外にもギリッと吊り上がった。


「バ、バカにしないでください!!」

「バカに……だと?」


 たじろいだ俺に、グルヴェイグがまくし立てる。


「わ、私が綺麗……ですって!? そ、そんなの……バカにしているに決まっているじゃないですか! だって、だって私は………………おばさん、ですし……」


 ――おばさん。

 その単語を、グルヴェイグは苦々しげな表情で口にした。

 俺はしばし考え、メガネ越しの瞳をまっすぐ見つめる。


「……ふむ。思うに『おばさん』とは、美の探求を諦めた者のことを言うのだろう。ならば、キサマは違う。誰がそんなことを言ったのだ?」


 グルヴェイグが目をそらす。

 言いづらそうに口をパクパク開閉させ、


「…………ペ、ペルヒタさんが……」


 瞳にうっすら涙を浮かべたまま、そんな名前を口にした。

 俺は「フッ」と嘲笑をのぞかせる。


「愚かなペルヒタめ、あり得ぬ暴言だ。これほど洗練された美貌を持つ女神に対して、『おばさん』などと……どれどれ」

「あ、あうぅぅ……あぅあぅあぅあぅ」


 俺が顔を近づけると、グルヴェイグの頬がいっそう色濃く染まっていく。

 切れ長の瞳が見開かれ、もはや言葉が出てこないようだ。

 俺は両腕に魔力を宿しつつ、グルヴェイグの肉体をチェックする。


「……ひぁんっ! にゃ、にゃにを……!」


 まずは脇腹に手を這わせた。


「……ふむ。ぷにぷにと柔らかく、しかし締まったウエストだ。美容を意識し、しっかり鍛錬していることが窺えるぞ。☆二つ半だな」


 続けて尻肉を掴む。


「……ほほぅ。アルテミスに迫る巨尻だが、スピカと同じように絶妙なハリがある。この、手のひらが尻肉に吸い付くような感覚……二重丸を進呈しよう」

「んぅっ……ひゃ、ひゃめなしゃい魔王じゅのぉぉ……!」


 グルヴェイグの声音がとろけていく。

 俺は構わず触り続けた。

 魅惑の巨尻をたっぷりまさぐり、むちむちの内ももを指先でくすぐったら、次はメインディッシュである。


「ひゃめぇ……らめぇぇ……!」


 だが、修道服をパツンパツンに押し上げている※乳に手を添えようとしたときだ。

 まだ理性が残っていたのか、グルヴェイグが俺の身体を押し返してきた。


「はぁ、はぁ……! いけません……これ以上は!」


 メガネ越しの瞳に険が宿る。

 この目――俺を明確に敵視している。

 …………当たり前か。さすがに、口説いたついでに愛撫したぐらいで陥落するほど、六芒の女神はチョロくないようだ。


 グルヴェイグが叫ぶ。


「い、いくら綺麗だと言ってくれたとしても……私は六芒の女神です! 聖隷グルヴェイグ王国を支配する、女神王ヴィーナス様の忠実なる部下なんです! 魔王ジュノ……お前とは相容れない存在なんですよ!!」

「……そうか」


 俺はつぶやく。

 そうだ。このグルヴェイグは三〇〇年前、俺を神聖空間へと封印し、魔界の尊き家族たちを危機に陥れた張本人。

 ――俺の、復讐対象の一人だ。

 小さくため息をつき、グルヴェイグへの視線を強める。


「キサマが綺麗になっていたせいで、俺も本来の目的を見失っていたようだ。俺は魔王でキサマは女神。所詮、相容れない存在同士……」

「き、綺麗って言わないでください!」


 グルヴェイグ(赤面)の反論が飛んでくるが、当然のように無視する。


「ならば、俺は復讐を成し遂げた後で、キサマを手に入れる。キサマの性根を叩き直し、魔族に堕とした後で、その美しき肉体と美貌……そして聖隷グルヴェイグ王国もろとも我が物にしてくれよう!!」

「う、『美しき』も『美貌』も禁止です! 禁止ぃぃっ!」


 いっぱいいっぱいの表情で、俺を拒絶するグルヴェイグ。

 だが、さすがに彼女も聞き捨てならなかったようだ。

 やがて表情を引きしめ、再びこちらに敵意のまなざしを突き刺してくる。


「わ、私の国を譲るわけがないでしょう!? 私が理想とする、完全なる管理国家――その実現を阻む者は、誰であろうと処刑してやります!!」

「フッ、そんな牢獄のような国、とっとと解放してやる!」

「魔王ジュノオォォォォッッ!!」


 来る――ッッ!

 敵意の爆発を悟った瞬間、俺は床を蹴って後退した。

 直後、拷問室が揺れ動ぐ。

 今まで俺が立っていた場所に、グルヴェイグのムチが突き刺さっていたのである。


「クッ、今のを避けるとは……」

「ほほぅ。俺を退かせるとは、やるではないか」


 俺の肉体は人間族そのものだが、防御力は漆黒の魔導鎧装と同等である。

 当然、あのムチで打たれてもダメージはない。

 しかし攻撃の際、俺に『退かねば』と思わせたのは事実だ。

 その猛烈な気迫……なかなか面白い。


 ――俺は両目に魔力を込めた。

『審理の魔眼』を発動させ、グルヴェイグの『数値』を読み取るのだ。

 果たして――。



【名前】グルヴェイグ

【種族】神族

【職業】六芒の女神、異端審問官

【筋力】五九〇以上

【防御】【器用】【敏捷】四五五未満

【知力】三二

【魔力】四三〇以上

【性欲】五四〇

【趣味】おしりいじり



 審理の魔眼は、そんな結果を弾き出した。

 魂と肉体がマッチしてきたことにより、精度はかなり向上している。

 それにしても【知力】がひどい。外見は理知的なのに、スピカと良い勝負とは。


 そんな中、俺が目を留めた項目は――。

 もちろん【趣味】である。


「ククク……グルヴェイグよ。キサマへの復讐方法が決まったぞ」


 快楽堕ちへの道筋は見えた。

 あとは実行に移すのみである!


「何を言いますか! この私が、そう簡単にやられるわけがないでしょう!!」


 だが、なおもグルヴェイグは攻撃を仕掛けてきた。

 ヒールの音を響かせながら前に出て、ムチを大きく振りかぶる。

 俺は――嗤った。



「堕ちろ。異端審問の女神よ」



 ――パチンッ!

 俺が小気味よく指を鳴らした、その瞬間のこと。


「あっっひいいぃぃいいぃぃああぁぁぁぁあああああぁぁっっ!!!!」


 ムチを構えた姿勢のまま、グルヴェイグの全身が痙攣を開始した。


 ビクンッ、ビクンッ!

 背筋を弓なりに反らせ、その場に倒れ込む。


「はぅッ……んんぅっ……はぁ、はぁ……! こ、これは一体ぃぃ……!?」


 グルヴェイグは自身をぎゅっと抱きしめて、荒い息をついている。

 そのあいだも全身が不規則に痙攣し、顔じゅうに汗が浮かんできた。


「んあぁぁっ……ふーッ、ふーッ、んんんっ……こ、こんなの……こんにゃのぉぉ……反則ですよぉぉぉっ!! んああぁぁぁぁあああぁぁぁっっ!!」


 ビクンビクンビクンッ!!


 腰が跳ね、声音がとろけ、半開きになった口からヨダレが垂れる。

 グルヴェイグは今、激しい絶頂の真っ最中だ。

 全身が極大の快楽に震え、とても立っていられなくなったのである。


「俺の魔導調律も、日々進歩しているのだ」


 俺は優しく語りかけた。


「先ほどキサマの肉体をまさぐった際に、ごく少量の淫紋を何度も体内に流し込んでおいたのだ。その淫紋は体内ですくすくと成長し、俺の合図によって魔導調律が開始されたのである!!」

「ふぅッんんんぅッ!! ひっ、卑怯な……ぁぁあぁッ、あぁぁぁああン!!」


 快楽のあまり床をのたうち回りながら、瞳に涙を浮かべる異端審問の女神――。

 その背徳的な構図に、股間の拷問器具がムクムクと膨張していく。


 さて。

 皮肉なものだが、のたうち回るのは逆効果だ。


「あぁぁっ……ぁぁぁああああぁっ!! なんれれす!? なんれぇぇぇ!?」


 巨尻や巨乳が床に擦れるたび、全身に悦楽の雷撃がほとばしってしまうのだから!


 その様子を堪能しながら、


「フフフ……気持ちよかろう? キサマの体内に張り巡らされた魔道経絡が、魔族仕様に書き換わっている証拠だ。さあ、今こそ俺に心から謝罪し、俺と同じ魔族になるのだ……グルヴェイグよ!」


 修道服の裾からのぞく淫紋が、黄色――赤――ピンクへと変化していく。

 ピンクになった淫紋が激しく点滅すれば、いよいよ魔族化が完了するのだ。

 しかし。


「ふーッ、ふーッ! ま、負けましぇぇんっ! はぁぁぁんっ……んんっ、お、お前を封印したのはッ……六芒の女神の使命れすぅぅ……! 女神王ヴィーナス様への……ちゅっ、ちゅうせいはっ……え、永遠れしゅうぅぅぅっ……んああぁあぁっ!!」


 この期に及んで、異端審問の女神は抵抗を見せた。

 謝罪するつもりも、魔族になるつもりもないようだ。


「ならば仕方がない。さらなる『調教』を施すとしようか」


 俺は彼女を立たせると、脇にあったテーブルに両手をつかせた。

 さらに巨尻をグイッと背後に突き出させ、屈辱的なポーズを形づくる。


「はぁっ、はぁん……こ、これ以上、なにを……」


 息も絶え絶えのグルヴェイグが、不安げにこちらを見上げてきた。

 俺が突きつけたのは――、



「キサマの調教には、この背徳的なネコしっぽを使うのだ!!」



 ペルヒタ教国の裏通りで購入した、やや特殊なネコしっぽである!

 黒ネコを思わせる流麗なフォルム。

 しかし付け根には、大きめの真珠玉が五つも連なっているシロモノだ。

 そのネコしっぽに、俺はさらなる魔力を込めた。

 理由はただ一つ。

 強情なグルヴェイグを躾けるために、彼女の体内で魔導調律を発動させるのだ!


「~~~~ッッ!? ど、どぉして私の趣味をぉ……!?」


 切れ長の瞳が見開かれる。

 信じられないと言わんばかりの表情だ。


「んぁぁっ……しょ、しょんなのぉぉっ、ペルヒタしゃんにすら……んんぅっ、い、言ったこと……ないのにぃぃぃっ……!!」


 俺は微笑み、真珠玉をグルヴェイグの臀部に押しつける。


「ククク、我が『審理の魔眼』の前には、恥ずかしい【趣味】すらも筒抜けなのだ」

「うぅっ……うううぅっ!!」

「残念だったな。尻をいじり、尻で達する尻穴女神――グルヴェイグよ!!」


 俺は傍らの肉筒スライムを揉みしだいた。

 そこから洩れてくるヌルヌルの液体を、ネコしっぽの付け根にまぶしていく。


 ……何もつけずに挿入するのは、さすがに躊躇した。

 グルヴェイグの美しき巨尻が傷ついてしまうのは、俺の本意ではないのだ。


「よし、これでいいだろう」


 肉筒スライムの粘液をたっぷり纏い、ぬらぬらと妖しく光る五連真珠玉――。

 それをグルヴェイグに見せつけると、


「あ、あ、あ、あぁ……」


 絶望と期待、不安、恥じらい、焦燥……その他もろもろ、たくさんの想いを混ぜ合わせたような涙声が返ってきた。

 俺はグルヴェイグの背後に回り、彼女のいやらしい下着に指先を引っかけた。

 シースルーの布地を、グイッとずらす。


「ほほぅ……色素の薄い、美しき花弁なり!」

「んんんぅっ! み、見ないれぇぇ……! み、見ないれくらひゃいぃぃ……!」


 涙目のグルヴェイグが腕を伸ばしてくる。

 が、俺はその腕を華麗にガード。

 ネコしっぽの付け根を、彼女の聖穴に押し当てた。


「ひぁんっ……!」


 ――もう、後戻りはできない。


「嫌っ……嫌れしゅぅぅ……。そ、そこは私が自分でっ……自分で愉しむためのものれぇぇ……! ま、魔王なんかに……されてしまうのはぁぁ……め、女神のっ……女神の誇りがあぁぁ……!!」


 口をわななかせるグルヴェイグ。

 俺は身を乗り出し、彼女の頭を優しく撫でた。


「んぅぁあっ! ま、魔王ジュノぉ……わ、わかってくれたのれしゅか!?」

「――安心しろ。痛くはしない。……たぶんな」

「うぅぅっ! ぜんぜんわかってないっ…………んんんんっ!!」



 ――――ぬっっっぷううぅぅぅぅぅぅぅぅっっ!!



 かすかな抵抗感とともに、真珠玉がグルヴェイグの体内に飲み込まれていく。

 おっと、手が滑った。

 五つの真珠玉を、一気に奥まで突っ込んでしまったではないか。

 だが、これは復讐。多少の無茶は許容範囲である!


 そして発動する魔導調律。

 体内で直接発動すると、一体どれほど絶大な快感がぶちまけられるのか……。

 それは俺自身にとっても、まったく未知の領域である。

 聖隷グルヴェイグ王国の拷問室。

 そこに、快楽の絶叫が巻き起こった。



「ひぃぃぃぃぃいぁぁあぁあああぁぁあぁあぁあぁぁああぁあぁ……ッッ!!!!」 

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