第5話 新生魔王とペルヒタ教国


 聖隷グルヴェイグ王国の宿に一泊し、翌日の朝――。

 すっかり荷台が軽くなった馬車に乗り込み、俺は座席に背を預けた。

 右側にはリリス。

 左側にはアルテミス。

 今日はスピカが御者を務めている。


「しかし、この国もなかなか病んでいるのだな……」


 俺は窓の外を見て、ため息をついた。

 一面に広がる鈍色の雲。

 あたりに立ち込める生ぬるい風。

 街を往く人々は、空の色と同じように表情を曇らせているのだ。


 ここは聖隷グルヴェイグ王国の王都。

 建築様式は神聖アルテミス王国と大して変わらないが、街の雰囲気は『異様』の一言だ。

 街全体が、六芒の女神・グルヴェイグ一色に染められているのである。

 そこらじゅうにグルヴェイグの石像が建ち並び、彼女を褒め称える看板や貼り紙、壁画などが建物の壁という壁を埋めているのだ。


 そして街中に響くのは、グルヴェイグへの祈りの声である。

 賛美歌のようなものなら、まだ我慢できる。

 しかし人々は道ばたにひれ伏し、大聖殿とやらの方角に向かって、汗を飛ばしながら祈りの言葉を叫んでいるのだ。


 リリスが苦い顔をする。


「この祈りの時間、一日七回あるらしいですよ?」

「七回も……。わたくしのおやつと同じ回数ですね……!」


 アルテミスもまた、眉をひそめている。

 彼女の言葉をスルーして、リリスは手帳を取り出した。


「聖隷グルヴェイグ王国で美徳とされてるのは、『偉大なる女神グルヴェイグ様のために、必死になって働くこと』らしいです」


 さすがはリリス。しっかり勉強しているようだ。


「あと、思想や言論も厳しく統制されてるみたいです。密告制が敷かれてて、グルヴェイグを批判した両親のことを、その子供が聖教会へ告げ口した例もあるとか……」

「まったく。なにが『聖』教会なのか……」


 俺は再びため息をついた。この国に来てから、ため息が止まらない。

 ふと、隣のアルテミスが手を挙げる。


「グルヴェイグに抗おうとする勢力はいないのですか? わたくしが女神だったときも、多少はそういう人たちがいたのですけど……」


 リリスは力なく首を振って、


「地下に潜ってる勢力が複数いるみたいですけど、グルヴェイグが弾圧して回ってるんです。ヤツの異端審問の後には、誰もが熱烈な信者に変わっちゃうとか……」

「まぁ……なんてこと」


 アルテミスが哀しそうに肩を落とす。

 俺は彼女の頭を撫でつつ、


「ペルヒタを倒したら、次はこの国を魔界に取り込もう。こんな国……それこそ俺が支配した方が民は幸せになるだろう」

「ジュノ様、ぜひお願いします!」

「不肖リリス、きっちりお手伝いしますよっ♪」


 両隣の仲間たちが、あたたかい言葉を送ってくれる。

 俺は二人の肩を抱き、グルヴェイグを快楽堕ちさせることを誓った。



 ――それからさらに二日が経った。

 聖隷グルヴェイグ王国から、いよいよペルヒタ教国へ――。


 じつにいい加減な入国審査をパスした俺たちを待っていたのは、天界まで突き抜けるような青い空、純白の雲、どこまでも広がる紺碧の海だった!


「おおぉ……これが南国か!!」


 馬車の窓から身を乗り出して、俺は思わず歓声を放った。

 聖隷グルヴェイグ王国の陰鬱とした空気がウソのようだ。

 吹き抜けてゆく暖かい風は、ほんのり潮の香りがした。


「すごい……! 私、海って初めて見たわ!」

「空気も、植物も、人間たちの服装も……なにもかもが違いますね!」


 スピカとアルテミスの声も輝いている。

 俺たちの馬車は、整備された石畳をひたすらまっすぐ進んでいく。

 その先に待ち構えているのは、色とりどりの看板が躍る大きな街である。


「皆さ~ん、あそこに見えるのが王都・ペルフィーです! リリスたちはあそこを拠点にしますので、もうちょっとだけ待っててくださいね~っ♪」


 スピカとアルテミスが『はーい!』と明るく返事をした。


「ほほぅ、いい国ではないか。ますます俺の物にしたいぞ!」


 かく言う俺も興奮を隠せずにいる。

 なにせ道往く女性たちが、当然のように水着姿なのだから!



 ほどなくして、俺たちは王都・ペルフィーに到着した。

 商工組合の建物内に荷馬車を駐めさせてもらい、ひとまず街を散策することに。


「むぅ……。なんたる熱気だ……」


 俺は額の汗を拭い、周囲を見渡した。

 このペルヒタ教国――つくづく聖隷グルヴェイグ王国とは対照的な国だ。


 風通しを良くするためか、建物の窓は極端に大きく、平屋の屋根は巨大な植物の葉を重ねているのみ。

 さらに人々の服装は、男女を問わず多くが水着だ。

 その他にも、麻の服や麻のマントを身につけている者もいる。


 そしてなにより、民の表情が違う。

 グルヴェイグに奴隷のごとく尽くすことこそが美徳である――。

 そんな思想が蔓延していた聖隷グルヴェイグ王国とは異なり、ペルヒタ教国の街角を歩く人々は、誰もが陽気に微笑んでいるのだ、


 ……にしても、人が多すぎる。

 歩きづらくて敵わん。


「ただいまの時間、テーブル席がギリギリ空いてるよー!」

「ペルヒタ教国の名物、神獣麺だよー! ウチに来たら、コレを食べなくちゃ!」

「さぁさぁどうぞ! ウチは国の観光案内に二期連続で取り上げられた名店だよー!」


 時刻は昼前。

 街は昼食を求める人々でごった返している。

 店主たちも勝負時なのか、盛んに呼び込みの声が飛び交い、祭りのド真ん中に飛び込んだかのようだ。

 リリスは地図を片手に苦悶の表情を浮かべている。


「ひぇ~っ、まさに雑踏ってカンジですねぇ。現地の人と観光客が入り交じって……スピカさん、迷子にならないでくださいよ?」

「し、失礼ね! 私はジュノの腕に掴まってるから平気よ」

「あぁんスピカ様ずるいです! わたくしも……っと!」


 むにゅん……。

 たっぷん……。

 スピカとアルテミスの贅沢な膨らみが、俺の両腕にたわわな圧迫感を届けてくれる。

 だがしかし…………暑い。

 普段は心地よい乳肉プレスだが、マントを着ている今は……ひたすら暑い。


「リリス、暑くて敵わん。すぐに次の行動指針を固めよう」


 俺は暑さに喘ぎながら言った。

 リリスも「ハー、ハー」と舌を出している。


「でしたら、服装をなんとかしましょう。まずは現地に溶け込まないとっ♪」

「服装か。つまり、それは――」

「はいっ♪ 水着を買いに行きましょ~っ!!」



 王都ペルフィーには、数多くの水着店が軒を連ねている。

 大通りのとある店に足を踏み入れた俺たちは、あまりの品揃えに舌を巻いた。


「なんと……これが全部水着とは!」


 店内の棚には、さまざまな色やデザインの水着が所狭しと詰め込まれている。

 さながら極彩色の花々が咲き乱れる魔性の園に迷い込んでしまったかのようだ。

 男性用と女性用で売り場が異なり、それぞれ露出度別に棚が分けられている。

 どうやらかなりの人気店らしい。店内には多くの客の姿があった。

 俺は女性用の水着棚に胸を熱くしながら、


「スピカよ。お前はいかなる水着を選ぶのだ?」


 彼女はビクッと背筋を震わせ、


「うぅ……あんまり露出度が高いやつはちょっと……」


 なんとも頼りない返事をする。

 そうしてスピカが手に取ったのは、布面積が大きめの水着だった。


「んっ、これなら……」


 が、そんなスピカをジト~ッと見つめる顔が二つ。


「ワンピースタイプを選んじゃうとは……スピカさん、ヘタレてますね?」

「この期に及んで保守的な水着なんて、スピカ様らしくありません!」


 もちろんリリスとアルテミスである。

 リリスの追撃は続く。


「せ~っかく縦に割れたキレイな腹筋してますのに、それを隠すなんてとんでもない! ほい、スピカさんにはコレです、コレ! ペルヒタ教国の先代女王ヴィキニーが考案したとされてる、ビキニタイプがいいです! 絶対!」


 リリスがスピカに勧めたのは、上下が分かれたタイプの水着だ。

 カラーはピンク。

 白いフリルがあしらわれている。普段のブラやショーツとほぼ同じ形だ。


「えぇっ、これ? たしかにピンクでカワイイけど、は、恥ずかしいわよ……」


 ビキニを受け取り、スピカは困ったように眉を曇らせている。

 ――ふと、視線を感じた。

 気配を辿ると、リリスが俺に向かってウィンクを連発していた。スピカの背中を押せ、ということだろう。

 スピカのしなやかな腹筋が映える水着……か。うむ、俺もぜひ見てみたい。


「ほほぅ、良いではないか。愛らしいピンクの生地に、清楚な純白のフリルとは。きっとお前に似合うはずだ」


 逡巡するスピカに微笑みかける。


「……ッ! ホ、ホント?」

「うむ。試着するだけでもどうだろうか?」

「……ま、まあ、ジュノがそこまで言うなら……」


 口もとをもにょもにょさせつつ、スピカは水着を抱きしめ、店の奥にある試着室へと入っていった。


「チョロいですねぇ」

「ええ、チョロいです」


 リリスとアルテミスが、なにやら悪そうな顔で笑っている。


「お、お前たち……」


 たしなめようとしたところ、二人が猛然とこちらに迫ってきた。


「お次は魔王様の水着を選んじゃいましょうっ♪」

「そうですそうです! さぁ、さぁ、さぁ!」

「だ、だからお前たち! むぐぐ……!」


 二人がかりの圧力によって、俺は男性用水着のコーナーへ押し切られてしまった。


「む、これは!」


 豊富な品揃えを誇る棚から、俺は一枚の水着を取った。

 膝丈のタイプで、黒い布地に紫色の炎の絵が描かれている。

 これはなかなか魔王心をくすぐるデザインだ。


 が――。


「魔王様? まさか、そんなに丈が長いものを選ぶわけじゃありませんよねぇ?」

「あぁんジュノ様、もっともっと攻めてください! 性的な意味で!」


 リリスとアルテミスの猛抗議に遭ってしまった。……他のお客の注目を浴びていることは言うまでもない。


「で、では……これか?」


 俺は隣の棚の水着を取った。

 さきほどよりも丈が短い。いわゆる半ズボンのようなデザインである。

 いかつい魔獣の絵が描かれており、これもなかなか魔王心を……。


「魔王様ぁ~?」

「ジュノ様ぁ~?」


 だが、二人は納得してくれない。

 どうすればお許しがもらえるのだ!?


「ええい、ままよ……!」


 俺は目をつむって手を伸ばし、さらに隣の棚から水着を取った。

 男性用の中で、二番目に露出度の高い棚である。


「こ、これならどうだ!?」


 おそるおそる目を開けると、そこには。


「それでこそ魔王様ですっ♪ ささ、試着をどうぞ!」

「んふふっ。ジュノ様ったら、わたくしのためにそんな水着を……あぁんっ!」


 ニコニコ顔のリリスたちがいた。


「…………。まあ、これぐらいなら……よいか」


 俺の手に握られていたのは、ブーメランタイプの水着だった。

 普段の下着と大差ない、股間にしっかりフィットする形である。

 ちなみに、露出度が最も高い棚の水着は、※竿すら隠せていないシロモノばかりだった。

 いくらペルヒタ教国とはいえ、あれを着て外出すれば間違いなく憲兵どもの世話になってしまう。


「やれやれ、これでようやく……」


 と、俺が一息ついたときだ。


「……ジュノ。水着、着てみたんだけど……どうかしら?」


 背後から、スピカが声をかけてきた。

 俺は瞬時に振り返る。

 スピカの艶姿を、一刻も早く瞳に焼きつけたい!


「おぉぉ……! スピカ、いいぞ!」


 彼女が身につけているのは、例のピンクのビキニである。各所にあしらわれた純白のフリルが、やはり大いに可愛らしい。

 さらに太ももにはガーターリングが……!

 健康的な太ももにリングがむっちりと食い込み、スピカの柔肌を強調しているのだ。

 ガーターリングの存在は、ガーターベルトの知識とセットで以前リリスに教えてもらった。

 たっぷりとしたスピカの膨らみが、縦に割れた美しい腹筋が、可愛らしいピンクのビキニによって華々しく彩られている――。

 その感動的な光景に、俺は背筋を伸ばした。


「見事だスピカ。同じ魔族として、尊き家族として、俺はお前を誇りに思うぞ」


 そう言って、ただただ彼女に拍手を送る。


「スピカさんやりますねぇ!」

「く、悔しいですけど、ジュノ様の反応も納得です!」


 リリスたちも素直に感動しているようだ。

 が、負けず嫌いのアルテミスがすぐに動いた。


「でしたら、わたくしはスピカさんよりもセクシーなビキニを着て、ジュノ様にアピールします!」


 勢い込んで、ほとんどヒモのようなビキニに手を伸ばす。

 ――ここでリリスがボソッと一言。


「アルテミスさんにマイクロビキニはちょっとどうかと……。ほら、お腹のお肉が目立っちゃいますし」

「うぐっ……。で、では、どうしたら……!?」


 痛いところを突かれたらしく、アルテミスが涙目になった。

 しかしリリスは彼女を見放さない。意味深な微笑とともに、店の入口の方を指さす。


「ご安心くださいっ♪ さっき、あっちで“いいもの”を見かけましたから」

「あぁっ、待ってくださいリリス様ぁ!」


 そうして二人は入口の方へと走り去ってしまった。

 取り残された俺とスピカは、リリスたちの後ろ姿を見送るしかない。


「……さて、それでは俺も試着してくるか」

「そうね。ここで待ってるから、早く着替えてきなさいよ。水着姿……一番最初に、私に見せなさい」

「ほほぅ。一番最初に見たいのか?」

「な、なによ! 悪い!?」


 スピカをからかい、その赤面を堪能してから、俺は試着室のカーテンを開けた。

 正面には姿見が鎮座している。

 しかし……なんて狭い部屋だ。大人一人でいっぱいではないか。

 マントと上着を脱ぎ、ズボンを脱ぎ、下着を脱ぎ――。

 いよいよブーメランタイプの水着を着用したときだ。


「なんと……!」


 俺は重大なミスに気がついた。


「スピカ! スピカよ! 困ったことになった。すぐに来てくれ!」


 事態は急を要する。

 ゆえに俺は、試着室のカーテンから顔を出した。

 スピカは心配そうに眉を下げている。


「ど、どうしたの? 何かあったのかしら?」

「説明は後だ。とにかく来てくれ!」

「えっ、ちょ……ひゃんっ!」


 俺はスピカの手を掴み、そのまま試着室に彼女を連れ込んだ。

 しかし……これは悪手だったかもしれない。

 ただでさえ狭苦しい試着室は、いよいよパンパンになってしまった。

 俺はスピカと向き合い、ほとんど身体を密着させた状態である。

 彼女は上目づかいに俺を見ながら、


「もぅ、強引なんだから。一体どうしたっていうのよ?」

「……水着が、入らないのだ」

「え? サイズは合ってるはず…………ひゃぁあぁっ!!」


 視線を下に向けた瞬間、スピカは悲鳴を上げた。


「ちょ、ちょっとジュノ! どういうことよ!?」

「スピカの麗しい水着姿を見ていたら、自然とこうなってしまったのだ」

「うぅぅ。そ、そんなにおっきくしなくても……」


 そう。

 俺の股間の肉バナナが、太く長く熟していたのである。

 大いに反り返っているため、ブーメランタイプの水着の上部から思いっきりハミ出しているのだ。


「もぅ、それじゃあ外に出られないじゃない!」

「うむ。これはゆゆしき問題だ。スピカ……頼めるか?」

「…………んっ」


 小さくうなずき、スピカは俺の水着に指先を引っかけた。

 正直、怒鳴られる覚悟ぐらいはしていたのだが……これは一体どういうことだ?


「ス、スピカよ。どうしたのだ? 妙に素直ではないか」

「ジュノ……」


 ポツリとつぶやき、スピカは言葉を継ぐ。


「……私の胸をうんといじくり回した後に、下着の中に手を入れたときのこと……想像してみなさい」

「う、うむ」

「そのときに、私が下着……ぐしょぐしょに濡らしてたら、ジュノはどう思う?」


 俺はわずかに思考してから、


「…………嬉しい、と、思うぞ」


 素直な気持ちを口にした。

 スピカは満足したように、ほのかに口もとを上げる。


「……私だってそうよ。私の水着姿を見て、ジュノがおっきくしてるって思ったら……なんだか少し、嬉しくなってきたの。だから今は、セキニン……取ってあげる」


 スピカの指先が動き、ブーメランパンツが太ももまでズリ下ろされる。

 そして彼女は躊躇うことなく、俺のホット肉バナナに手を添えたのだ。


「うぁ、熱っ……。手の中で脈打って、すごいわ……」


 反り返った部分を優しく握ったスピカが、はしたなき上下運動を開始する。

 が、その律動はぎこちない。


「んっ、んっ……。狭くてやりにくいわね」


 それもそのはず。

 狭い試着室で、正面から密着したままホット肉バナナをさらにホットにするのは至難の業だ。これは打開策の考案が急務である。


「スピカよ、太ももを使うのだ!」

「……こ、こうかしら?」


 スピカは己の太ももの間に、俺の熟バナナを導き入れた。

 そして両脚が閉じられる。


 むにゅん――。


 健康的に引きしまった太ももが、左右から不健全な圧迫を加えてきた!


「ぬふぅっ……!」


 未体験の快感に、俺は思わず声を洩らした。

 さらに勃起の角度が上がる。

 俺の南国大砲はいっそう元気よく反り返り――、


「ひぁあぁぁあぁんっ!!」


 その結果、スピカの最も敏感な部分をちょうど刺激できる位置に至ったのだ。


「よし、二人で動こう。ともに危機を脱するのだ!」

「ちょ、ちょっと!? ひぁっ、んぁぁっ! すごっ……こすれて、熱いぃ……!」


 スピカの太ももに挟まれたまま、俺は淫らな前後運動を開始した。

 何度も何度も腰を振り、スピカの大切な場所に南海のタートルヘッドを擦りつける。


「ひあぁあっ! 待って、待ってぇ! あぁぁあぁっ、いやぁっ……だめっ、腰っ……自然に動いちゃうからぁ……!」


 俺の動きとシンクロするように、スピカも腰を振り始めた。

 思わず彼女を抱きしめると、彼女もまた、俺の身体にしがみついてくる。


 むにゅんっ、たぽんっ、ぽよんっ……。


 ぽよぽよとしたスピカの膨らみが、俺の胸板に押しつけられる。

 前後運動に合わせてたぷんたぷんと柔肌が波打ち、股間の勃起角をさらにヒートアップさせてくる。


「ス、スピカよ。……うぐっ、太ももと乳※を使って同時に攻めてくるとは……やるではないか!」

「はぁっ、んんっ……。や、やろうと思ってやってるわけじゃ……んぁっっ、はぁっ……。すごいぃぃ……ジュノの、おっきぃの……ぁんっ! 私の気持ちいいところに、ちょうど当たって、擦れてぇぇ……!」


 男女の秘所が擦れ合い、互いの腰がぶつかり合って、そのたびにパンッ! パンッ! という官能の肉拍手がこだまする。


「ふんっ……! ふんっ……!」

「あ! あっ! あぁっ!! あぁぁっ!!」


 試着室の温度はみるみるうちに上昇し、俺とスピカの全身に汗の粒が浮き始めた。

 それが滑りを加速させ、腰の動きがますます激しくなっていく。


「スピカ……! 俺は、そろそろ……!」

「はぁあっ……ぁあぁあっ! んっ、出して! 出してぇ! 私も、もう……あぁぁんっ! 一緒に……んんっ、あぁぁあっ……一緒にぃぃっ!」


 俺はスピカの尻をむんずと鷲掴みにして、いっそう強く腰を打ちつけた。

 それに応えるように太ももを閉じ、スピカはさらなる圧迫を試みる。


「ジュノっ、見て……! 私のこと、見ながら……出してぇぇぇ!」


 言われるがまま、俺はスピカと視線を合わせた。

 鼻が触れ合う。ときおり唇も触れ合う。


「うぐっ……ぬふぅ! ではスピカよ……お前も、俺を見ながら達するのだ……!」

「んっ……。ジュノ……ジュノぉぉっ!」


 汗が飛び散り、吐息が混ざり、二人の視線が絡み合う。

 俺とスピカは互いに見つめ合ったまま、快楽の天上へと羽ばたいていく。腰と腰を打ちつけ合う、淫らな比翼の鳥となって。

 下半身に甘美なる痺れが走り――、



 びゅるるるるるっ! ぶびゅるるるるるるるっ……!

 ぷっしゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!



『~~~~~~~~~ッッ!!』


 声にならない絶頂のデュエットが、試着室に響き渡った。

 背筋の痙攣。

 汗ばんだ肌。

 熱い体液。

 跳ねる吐息。

 汗の浮かんだ額をくっつけ、性感の余韻を二人で愉しむ。


「はぁ、はぁぁ……。スピカ……感謝する。とても……よかったぞ」

「ジュノぉ……。はっ、はぁぁ……私も、すごく……んんっ」


 呼吸が落ち着いてきたところで、スピカが自身の下半身に手を伸ばした。


「うぁっ、にゅるにゅるで……すごい量。この水着、お互い必ず買わないとね……」

「う、うむ。そしてリリスたちが戻るまでに、床掃除をしなければな」

「……ふふっ」

「……ククッ」


 俺たちは苦笑を重ね、試着室に飛び散った快楽の残滓を大急ぎで拭き取りにかかったのだった。

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