第10話 新生魔王の女神狩り


 リリスほどではないが、俺にも結界魔法が使えるのだ。


「は、離してください!」


 周囲の景色はすぐさま変化し、瘴気がうずまく魔空間となった。邪悪なる波動がモヤとなって充満している。


「うっ……なんて不快な空間。はぁ、うぅ……。魔王、早くわたくしを解放しないとひどいですよ!」


 女神の加護を受けたスピカも体調を崩していたが、今回の相手は、その加護を与えていた女神本人だ。

 自身の聖性が高ければ高いほど、この魔空間はこたえるのである。


「む、無視するとは何事ですか! 魔王! 魔王ジュノぉ!」


 さっきからアルテミスがうるさい。

 だが、まあ無理もない。

 彼女は今、俺の拘束魔法によって縛り付けられているのだ。

 アルテミールの民が作った、彼女自身の女神像に。


 かなり大きな像を持ってきたので、さながら太い柱に縛られているようだ。

 さらに、胸もと、腹、手首、ひざ、足首にも拘束魔法をかけている。

 相手は腐っても六芒の女神。用心は大切だ。


 たくさんの魔力の枷は、ことごとくアルテミスのローブに食い込んでいる。

 世にも豊満な肉体のラインが、拘束魔法によって強調されているのだ。

 俺はアルテミスにグイッと顔を寄せた。


「抵抗の前に、謝罪が必要だとは思わないのか?」

「しゃ、謝罪ぃ……?」


 俺の言葉に、彼女は瞳を泳がせる。


「まずは、信徒の良心や思いやりを搾取したことに対してだ。その他にも、アホな女神王にうつつを抜かして国を腐らせたこと。俺と、俺のスピカを攻撃したこと。天使兵どもの暴言。そしてなにより三〇〇年前、俺を封印したことに対して!」


 低い声で、叩きつけるように命じる。

 アルテミスは「うぐっ」と喉を鳴らした。


「そ、それはまあ、わたくしだって信徒たちを犠牲にするのは気が咎めましたよ? ですけど、愛しの女神王ヴィーナス様に命令されたら……ねぇ?」

「なにが『ねぇ?』なのだ……」


 こんなところで同意を求めてくるとは。駄肉の女神め、太ももや腰まわりだけでは飽き足らず、頭の中までむちむちになってしまったようだ。

 そこで、俺は目を細めた。いいことを思いついたのだ。


「アルテミス。キサマへの罰が決まったぞ。人間族をアホな理由で搾取し、アホな女神王にうつつを抜かす女神には、コレがお似合いだろう」

「ば、罰……?」


 アルテミスがビクッと身を縮める。

 俺は口角を吊り上げ、



「――今からお前の魔道経絡を書き換え、人間族にしてやろう!」



 瞬間、アルテミスが目を瞠る。冷や汗が噴き出る。


「め、女神の魔道経絡を書き換えるなんて……そ、そんなことできるわけ……」

「できるのだ。俺の魔導調律にかかればな」


 錬っていた魔力を両腕に集中させる。

 スピカのときと同じく、俺の腕を軸にして黄色い淫紋が幾重にも出現した。

 今からこれをアルテミスの体内に注ぎ込むのだ。

 能力を与えるのも、奪うのも、潰すのも自由自在。それが魔導調律である。


「ひぃっ……! や、やめてください!」


 アルテミスがジタバタ暴れる。

 しかし拘束魔法に阻まれ、ろくに身動きが取れない。

 俺は両腕を掲げ、彼女の胸に近づけた。


「素直に謝っておけばよかったものを……。お前の色ボケした性根、この俺が叩き直してやろう!」

「お、おっぱいを揉む寸前の体勢で、よくもまあ色ボケなんて言え……っ!?」


 アルテミスの言葉は、そこで断ち切られた。

 豊かに実りすぎた肉の房を、俺が両手で鷲づかみにしたからだ。



「ひぃぃああぁああぁぁぁぁああああぁぁあああぁぁぁ……っっ!!」



 アルテミスは顔を撥ね上げ、甘ったるい絶叫を撒き散らした。

 両腕に浮かび上がった多量の淫紋を、肉が余り気味の体内に注ぎ込んでいく。


「フフフ……どうだ? 気持ちよかろう?」

「あひぃっ! あひぃぃああぁぁあぁ……! や、やめっ……ぁあああぁあぁ!」


 スピカのときは、愛撫によって下準備を行った。

 だが、今は情け無用。

 いきなり極大の快感を与え、アルテミスの理性を消し飛ばしてやるのだ。


「ああぁぁああぁぁイクっ……イキますぅ……! んああぁぁっっ……こ、こんなのっ……無理ぃぃぃっ! あ、あ、あああぁあっぁぁぁあ……!」


 肉感あふれる淫らな女体が、鮮魚のごとく激しく跳ねる。

 大きく開かれていたタレ目は、すぐさまトロンととろけてしまった。


「はぁ、はぁぁ……あぅっ、ひぐっ、あぁぁぁ……」


 半開きの口。

 アルテミスはピクピク痙攣しながら、乱れた吐息をこぼすばかり。

 だが、これで終わるはずがない。


「さてアルテミス。次のステップに移ろうか」


 俺はローブの胸もとを掴み、生地を左右に引き裂いた。

 布がビリリッ! とあっけなく千切れ、色白の肌が露わになる。


「なんと……」


 次瞬、まろび出てきたモノの迫力に、俺は言葉を失ってしまった。

 アルテミスの、聖なる※乳である。


 生地が裂けた衝撃で、ばいんっ! たぷんっ! と激しく揺れ動くそれは、スピカを遥かに上回る質量を誇っていたのだ。

 しかし――。


「ぬぅ。これは……陥没しているのか?」


 俺は違和感を覚え、アルテミスの双丘を至近距離で観察した。


「んぅっ、ふ、ぅ……い、息、かけないでぇ……!」


 手のひらにはとても収まらないサイズ。そのせいか、やや重力に負けている。

 そして※輪。スピカよりも大きめだが、色素はアルテミスの方が薄い。

 だが、注目すべきはその中央。

 アルテミスの聖なる乳※は、聖なる乳※の中に埋もれてしまっていたのだ。


「うぅっ……き、気にしているんですよぉ……。そんなにジロジロと……んあっ、はあぁぁああぁっ……あぁぁ、また、イクぅぅ……!」


 こうしている間にも魔導調律は進行中だ。

 アルテミスの肌に浮かんだ淫紋は、黄から赤へと変化している。

 彼女の体内では、とてつもない快感をともなって魔道経絡の書き換えが進んでいるのだ。

 細かい絶頂を繰り返すアルテミスは、もう涙目だ。


「いい顔になってきたではないか、陥没せし乳※を持つ女神よ」

「い、言わないでぇ……んぁああっ!」


 ふむ。俺としては、むしろ慎みにあふれた良き乳※だと思うのだが……女神の乙女心は難しいものだ。


「おぉ、そうだ。いいことを思いついたぞ」


 俺はポンと手を打ち、アルテミスの左胸に顔を寄せた。


「そんなに陥没が気になるなら、俺が吸い出してやろう」

「~~~ッッ! や、やめてぇぇ! 今、そんなことされたら、わたくし……!」


 やめろと言われてやめる魔王など存在しない。

 俺は一思いに、アルテミスの聖なる陥没乳※にむしゃぶりついた。


 抵抗するアルテミスにも構わず、俺はひたすら聖なる陥没※首をしゃぶって、しゃぶって、しゃぶり抜いた。

 淫紋の色が変化する。

 赤から、まばゆいピンク色へ――。

 魔道経絡の書き換えが完了した証拠である。

 アルテミスは、自身がさんざん搾取してきた人間族となったのだ!


 だが、関係ない。魔導調律が終わったから何だというのだ。

 忘れてはいけない。これは六芒の女神――アルテミスへの復讐も兼ねた儀式なのだ。


「ああぁぁ……ダメですよぉ……イクッ、イってしまいますからぁぁあぁ……!」


 ピンクの淫紋が点滅を開始する。

 しかし、魔性の乳※しゃぶりはやめられない。

 アルテミスの聖なる乳首が、あまりにも美味なのがいけないのである。


「あぁぁまたイキますぅぅぅっ! すごいの昇ってきましたぁぁっ……んぁああっ! 許してジュノさまぁ……おねがいぃぃっ、許ひっ……んああああぁぁぁああっ!!」


 その甘ったるい悲鳴とともに、アルテミスの下半身で景気のいい水音が弾けた。


「はひっ、あひぃっ……こ、こんな……」


 激しい絶頂に打ち震えながら、アルテミスが絶望の声音を洩らす。

 俺は聖なる乳※から離れ、


「……ちゅぽんっ。それにしても、なんてけしからん乳房だ……」


 今までしゃぶっていた場所を見つめた。


「あぅっ……み、見ないでくださいぃぃ……」


 アルテミスは、もう泣きそうだ。

 けれども……。

 彼女の声には、なぜか悲愴感がない。

 俺に向けられる抵抗の言葉も、どこか上滑りしているような気さえする。

 ふと、彼女の唇が動いた。もにょもにょと、名残惜しそうに――。


「アルテミス……」


 その名をつぶやき、俺は彼女に唇を寄せた。

 ちょっとした賭けをしよう。

 憎き魔王に全身を縛られ、たっぷり辱められたアルテミス。彼女の怒りは相当なものだろう。

 だが、快感を得ていたのも事実だ。今では頬を上気させ、瞳はとろけている。

 判断力を失った現在、自分に極大の快楽を与えた男に、キスを迫られたら?


「んっ……」


 ――果たして。

 アルテミスは控えめに唇をすぼめ、うっすらと目をつむった。

 こともあろうに、憎き魔王の口づけを受け入れようとしたのだ。


 やや肉厚で、瑞々しい唇。ぷるんっとした質感。

 しかし俺は動きを止めた。

 吐息が交わる距離まで近づき、彼女のキス顔を観察する。


「……? んっ、んーっ」


 いつまで経ってもキスが来ない――。

 もどかしく思ったらしく、エサをねだる小鳥のように、アルテミスが「んっ、んっ」と何度も唇を突き出してくる。

 それでも俺は動かない。


「お断りだ。民を蔑ろにする女神なんぞに、俺の口づけを捧げるわけがないだろう」

「ッ!? そんな、ここまでしておいて……!」


 アルテミスが愕然とする。


「キス……しなさい! こんな状態で放置なんて、生殺しにもほどがあります!」

「フッ、もう一度言ってみろ」

「キス、しなさいっ! 魔王ジュノ、わたくしとキスをしてくださぁい!」


 ――俺は、嗤った。


 キスを懇願するアルテミスを無視して、背後を振り返る。

 そしてパチンと指を鳴らした。



「――天使兵諸君。キサマらが仕える駄肉の女神が、よりにもよって憎き魔王にはしたなく口づけを欲しているのだが……これをどう思う?」



 景色が変わる。瘴気が失せる。


「ふぇ?」


 アルテミスがマヌケな声を発した。まあそれも当然だ。

 ここはアルテミールの大通り。

 俺たちのまわりには無数の天使兵たちがいる。全員ボロボロに傷つきながら、俺とアルテミスの様子をジーッと見つめているのだ。


「な、な、な……! あなたたち、ど、どうして!?」


 驚き。落胆。軽蔑。

 さまざまな感情が入り交じった視線に射貫かれ、アルテミスが切れ切れに声を洩らす。


「よく聞け。俺が使ったのは転移魔法ではなく、結界魔法だ」


 笑いを堪えつつ説明する。


「キサマの部下どもは初めから見ていたのだ。キサマが俺に乳房を弄ばれ、何度も何度も激しく達し、あまつさえ口づけを欲する場面をな!」


 そう。俺は魔空間に転移したのではなく、結界魔法を使って、この場に特殊な魔空間を創り出したのだ。

 内側からは魔空間に見えるが、外側からは丸見えという、はしたなき結界を。


「……ジュノ。またハデにやったのね……」


 そのとき、スピカが俺のもとへやってきた。

 彼女は天使兵たちをほどよく痛めつけて動きを封じ、奴らが結界内での儀式を見つめるしかない状況を作ったのである。


「スピカよ、大儀である。そうだな……サイズと柔らかさではアルテミスに分があるが、ハリと感度はスピカの方がむぐぐっ!」

「だ、誰がおっぱいの感想を聞かせろなんて言ったのよ!」


 スピカに鼻と口を押さえられ、危うく窒息しかけてしまった。

 ――しかし彼女を包む魔力は、どこか吹っ切れたように澄んでいる。

 これでこそスピカ。これこそがスピカだ。


「それはともかく、リリスを迎えに行くぞ。ほれ、さっさと俺の魔法陣に入るのだ」

「ちょ、まだ話は終わってないわ!」


 二人で転移魔法の魔法陣へ飛び込んでいく。

 そんな俺たちの背後では、


「アルテミス様、どういうことですか!」

「あんなに気持ちよさそうに!」

「私の信仰心、どうしてくれるんです!?」

「え、ええと……それはその、ですね……」


 天界の軍勢が大モメしているようだ。

 あとは野となれ山となれ。

 この窮地を、アルテミスがどうやって切り抜けるのか……じつに楽しみだ。


 おっと。奴が簡単に陥落したので忘れていたが、

【趣味】下着どろぼう

 コレについては、またの機会に利用することにしよう。


 まあ、アルテミスに“次”があればの話だがな……。

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