第1章 亡国の公主――1

 屋台で焼かれる照りぶたかおりにつられて、あばらのいたいぬがうろうろしている。

 きりにかすんだ、五階だてのろう

 その下の十字路には、かたがぶつかるほどひしめく人の群れ。

 ツンとするこうしんりようと、あちこちの屋台の飯がまざりあったにおい。

 灰色のいしかべが並ぶ東市は、てんかみに守護されるしんこくの皇都らしく、屋根ののきにも小路のわきにもずらりと植樹やはちが並んでいる。だが今は、それらもさびしいえだを見せるばかり。

 うすゆきのつもった大通りを行きかう人々は、こごえる風に身を縮めて足早に通りすぎる。

 その中を、身のたけの倍はある荷物のとうかかえた子どもが、よろめきながら歩いてきた。

 頭から首までぐるぐると布を巻きつけ、大きさの合わないよごれたあさの短衣にずぼん。はた目にはまだ十二、三ばかりのせた少年に見えるだろうが、実は十七の少女、さいりんである。

 彼女はまだ、この都に春がおとずれ、「おうじよう」の名にふさわしく百花が咲きこぼれる光景を見たことがない。華琳にとっては、このかんそうした灰色の景色が皇都のすべてだ。

 よこつらきつけてきた粉雪が目にしみて、華琳はんで輝く雪銀の瞳をしばたたいた。

 しかも、うずたかく積み上げられた荷物がじゃまで前がろくに見えないのだ。

 ざつとうのむこうに、女主人のものらしき笑い声が聞こえる。華琳はあわてて足を速めた。

 主人はじよを両がわに、さらに背後には護衛まで従え、市の目ぬき通りを練り歩いていく。

 護衛のぐんぽうの背と肩にほどこされた紋は、銀糸の李花。

 人々はこの紋を見るだけで、護衛がこの四華神国の皇帝から借り受けた武官だと知り、道を空けて遠巻きになる。

 主人はこうして夫の部下を連れ歩くのがお気に入りなのだ。

 そして華琳が抱えている荷物の塔は、彼女の今日の戦利品。

 一番下のふくろづめの塩は南の椿ちゆんじん州から入ってきた上等の品で、その上はけんと織物。こちらは東のけいぶん州から大河をえて運ばれたもの。西方の杏武州からは、つ国のこうぼくや上等のかんざしを仕入れている。上にあやうく乗っかっているのは、彼女の夫のげんりのための干し肉の束と、しんせんけいらんだ。

 主人は蓮礼州のへきぎよくが手に入らなかったとくやしがっていたけれど、もともと蓮礼は他三州ともこの華王城市ともきよを保ち、州王ですらめったに姿を見せない特異ながら。いかに皇都の大市といえども、蓮礼からの輸入品は手に入りづらい。

 それでも、四華神国を成す中央・華王城、ほか杏武、桂文、椿仁の三州からこれだけの品を買いこめば、りのよさを見せつけるには十二分だろう。彼女いわく「小生意気で気にくわない家僕」に大荷物を持たせ、多少なりとも胸がすくのにも役立つのだから、一石二鳥だ。

 華琳は必死に彼女たちの後ろ姿を追うが、人だかりに道をはばまれた。

 荷物を落としそうになって、アッと短い悲鳴をあげる。

 群れる頭のむこうには「こうぼう」と題されたけい

 そこに目を走らせたとたん、胸が、冷えた。

「まさか蓮礼の州王さまがほんなんてなぁ」

「先月の禁軍の行列はそれかい。王さまは一生なんきんって、よく死罪にならなかったもんだ」

「そりゃアンタ。蓮礼王っちゃあ天華の神のさまだもの。《天命の華》を育てるお役目があるじゃないか。天子さまだって殺したくったって殺せないよ。でもさぁ、あそこの公主さま、太子さまの後宮に入るって話じゃなかったのかい」

 街の人たちのひそひそ声に、華琳の足はこおりついて動かない。

(蓮礼王が謀反の罪で軟禁?……鹿を、言わないでよ)

 華琳ののうに、たおれ伏す家族の血の海がよみがえった。

 蓮礼王は、死んだ。今はこうていの手の者が、ひそかにあの美しい土地とたみしようちゆうにしている。

 謀反の罪だってうそっぱちだ。母王は皇帝に忠義をくしたのに、いわれなき罪で王府をめられ死に追いやられ、一族はみな自決した。私一人を残して──。

! さっさとおいで!」

 主人のかんだかい声が飛んできて、華琳はびくりと肩をはねる。

「奥さま、ただいま!」

 荷物をぐらぐらさせながら往来を行くぎたなに、まわりの人たちはめいわくそうに舌を打ち、あるいはその必死なようすに手をたたいて笑う。

 くやしいも苦しいも、このろうひとつきのうちにして分からなくなってきた。そんなもの感じないほうがよいのだ。私は使命を果たすためだけに生きのびているのだから。

 ふいに、くぅんと甘えた声が足もとに聞こえた。

 見下ろせば、さっき屋台の前にいた仔犬が、華琳のだぶだぶと大きすぎるずぼんに鼻づらをすりよせ、かなしい目で空腹をうつたえている。つぶれ鼻のあいきようのある子だ。

 だがもう気力も尽きたのか、枝のようなまえあしをぺたりと地面に落とすと、そのまま動かなくなってしまった。

(すぐに、死んでしまいそうだわ)

 王府のはなぞのにも犬がいた。犬笛でよくしつけた彼らは花園のすぐれた衛兵であり、外に出ることのない王家の女たちの大事な家族だった。それゆえ、犬にはひとかたならぬ情がある。

(みんなうまく逃げられたかしら……)

 あの時は、無事も確かめられずに逃げるしかなかった。

 仔犬のあどけない瞳が彼らに重なって見えて、胸がぎりりと痛む。

 華琳は荷を片手とひざで支え、なんとか自由になった残る手でふところを確かめる。けれど何も見つからなくて、今度は褲のももをはたく。……しかし、出てきたのはホコリだけ。まんとうのかけらすらない。

 少女と犬はいつしよに首をうなだれた。

 と、下をむいた視界のすみに、赤茶けた葉っぱ。

 路地の奥、建物の石積みと路面の間に、ぎざぎざとがった葉が寂しげに顔を出している。

 華琳は目をまたたいた。そして空を見上げ、天にく大輪の華──太陽をさがす。

 灰色の雲のとぎれ目から、わずかに細い光の帯がさしていた。

(少しだけなら……できるかしら)

だいじようよ。ちょっと待っていてね」

 犬に言い置いた華琳は、路地に人目がないのをかくにんしてから葉っぱの近くまでにじりより、荷をらさぬようにゆっくりゆっくりと膝を折る。

 あかぎれだらけの指が、葉先にれた──そのとたん。

 指の触れているところから、冬枯れした葉がみるみる明るい緑色を取りもどし始めた。

 くきび、新たな葉が生まれ、白い花が咲く。と思ったら、しまいに赤い実がぽこぽこ生まれ、指さきほどに大きく育っていく。

 あざやかな赤い実が、ひとつ、ふたつ、みっつ。

 でもここで限界だ。倒れんばかりの空腹だし、天華の神──太陽からもらえる力が少なすぎる。

 ぱっと指をはなすと、ずりってきた犬がをふって、何ヶ月も早い春の実に夢中になった。

「……よかった」

 同じ「犬」どうしのあわれみだけれど、華琳の凍えた心もいくばくかぬくもった。

 犬の背中に別れを告げ、荷物を持ち直そうとした、その時。

「これはまた、ずいぶんと気の早いいちごだな」

 耳のすぐ後ろに、低くひびく男の声。華琳は体をふるわせた。

(見られた!?)

 ふり返ったひように、荷物のてっぺんがぐらりと揺れる。

「あっ、あっ」

 声を上げるも、荷物の塔は前へ後ろへぐねぐねたわみ──、次のしゆんかん、大通りに向かってなだれを起こす!

 散らばった干し肉、つぶれた卵。箱から飛び出した香木、それに塩の袋まで、あわゆきの地面に!

「そんな……っ!」

 そうはくになってかがんだ華琳の目の前で、年かさの女がかんざしを拾ってくれた。

 礼を言いながら手を差しだせば、女はそれを自分のふところにっこみ、すぐさま身をひるがえす。

「ま、待って!」

 集まってきた人たちは、みじめな家僕がそうな顔をしているにもかかわらず、次々拾えるモノを失敬し始め、さわぎが広がっていく。

 華琳はあたふたと手近の高価な玉にうでを伸ばすが、すんでのところで手をはじかれた。目を上げれば、老人が歯のない口にた笑いをかべている。

 その間に絹布も織物も、大袋の塩すらも、次々に華琳の目の前から消え、老人はさるのように身軽な動きで人ごみに飛びこんだ。

(ひどい……!)

 いやだ。こんな情のない人間たちも、だれ一人ひとり助けてくれないこの街も、だいきらいだ。

 華琳は土くれをつめく。

「これはこれは、大判ぶるまいだな」

 背後に、さっきの男の声。

「あなたっ!」

 だれか知らないが、あんなとうとつに声をかけてくるからこんな事に!

 八つ当たりとは分かっていても、華琳は背後にぎろりと激しい目を向けた。

 若い男だ。まだ青年と言ってもいい清潔なつらがまえ。

 すずやかなまゆにまっすぐ通る高いりようかつたつな印象の、しかし色気のある彼は、長いくろかみおおざつな一つ結びにくくり、同じ色の真っ黒なひとみで華琳をゆかいそうにながめている。

 着ているものは商人風のありきたりの丸首袍だが、こしに大きなけんを下げ、帯には貴人がつけるたまはいしよくをじゃらじゃらと垂らしていて、一見して身分が分からない。

 そしてからりと明るい、人好きのするがお

 だがその瞳と視線をわしたとたん、されて、のどまで飛び出しかけていた文句がまるごと腹まで押しもどされてしまった。

 この男の瞳の強さは、存在感は、いったいなに──?

 黒い瞳に思考をまれたように頭の中が白くなる。

 だが華琳はぶるると首をふり、負けじと男をにらみ返した。

「あなたのせいで、荷を落とした」

とつぜん声をかけて悪かったな。そう毛を逆立ててくれるな。まるきりいぬひきぜいだぞ」

 男は華琳とその足もとの犬に眉を上げる。

 気づけば、犬も耳をかせて男とのきよをはかっている。犬にだって、この男の異様なまでのはくりよくが分かるのだ。

 男は笑みを深めると、手近に転がっていた干し肉をひとつ取り、犬に放ってよこした。

「ほれ、食え。苺では腹にたまらん」

「ちょっと! それはだんさまのっ、」

「旦那さまは、土にまみれた肉など食わんだろうよ」

「土にまみれさせたのはあなたでしょう!」

「だが食わんものを捨て置くよりは、気にせぬものが食ったほうがよいではないか」

 今のうちにお前も食え、と、男は二つにいた干し肉を片方、華琳の手のひらにほうる。

 華琳は言葉もなく、せつでいよごれた肉を見つめた。

 なんだこの男は。土に落ちたものを口に入れよとは無礼にもほどがある。が、睨みつける前に華琳はぽかんとした。残った切れはしを、男がとんちやくせず口に入れたのだ。

「うむ。いい肉を食ってる。そなたの主人は金持ちだな」

 華琳は手のひらの肉と、尾をふって夢中で肉をかじる犬と、そしてにんまり笑う男の横顔を順番に見くらべる。

 落とした肉なんて、食べるべきものじゃない。なのに勝手に腹がぐるると鳴って口の中がうるおってくる。ここ一月、肉なんてかけらも口にしてない。

 華琳は肉の切れはしをにぎりしめた。今にもたおれんばかりに腹が減っている。何より大切なのは生き残るということだ。これも、……本当は食べるべきじゃないのか。けれど。

 華琳は泥まみれの肉を見つめる。

 が、じゆうけつだんをする前に、背後にてつなべをひっかくような金切り声が上がった。

「捨て犬! なにをやっているの!」

 うまかべを割って現れたのは、女主人の一団だ。

 彼女はまんのお買い物があとかたなくなったさんじようの当たりにし、蒼白になって体をわななかせる。

「捨て犬を打ちえよ! 背ではない、かたを打て! 荷運びすらできぬ腕はいらぬわ!」

 主人の言葉に、華琳は背筋を冷たくしてその場に固まった。

 ざわりとする中、護衛の大男が華琳の前に歩み出てくる。

 彼は主人からかたい竹根のつえを受け取った。

 あんな細っこい子をかわいそうに。骨がくだけるぞ。死ぬかもしれん。人々のささやき合う声は聞こえるが、遠巻きな輪を作るだけ。

 大きなかげが華琳の上に落ちた。犬がきゃうんと鳴いて後ずさる。

 激痛の予感に、体が勝手に震えだす。

(しっかりしろ。思い出すのよ……! 私がなのか!)

 母である蓮礼王は、どんなときにも静かな笑みをたたえていた。こんなナリをしていても私は蓮礼公主。絶対に取り乱すものか。

 華琳は全身に力を入れ、その場に美しい姿勢で座りなおす。

「捨て犬の分際で生意気だな。こういう時はな、助けてくださいって泣きわめくんだよ」

 護衛は瞳をざんぎやくな喜びに満たして華琳を見下ろす。

 ふり上げられた杖の金かざりが、かがやく太陽を背にぎらりと光った。

 ──来る!

 歯を折れんほどに強く食いしばる。

 ひゅっと空気を切る音と風圧が、すぐ耳の横に──!

「まぁ、待て」

 バシッと強い音が響いた。

 ……痛みが、ない?

 こめかみから伝った冷たいあせが、ぽたりとひざに落ちた。

 華琳は見開いた目を、杖のほうへ向ける。

 顔の横に、だれかの手のこうがある。その腕を伝って視線を上げれば、さっきの干し肉男だ。

 彼が杖を手のひらで受け止めて、たいぜんと笑みを浮かべている。

「な、なんで……っ!?」

 痛いはずだ。華琳は前に同じ杖でたたかれたあざがまだどす黒く残っている。あの時もはだけるくらい痛かった。それを、なんで行きずりの通行人が自分の代わりに!?

 息を吞み、男の手のを確かめようとする。が、男は空いているほうの手を向けて華琳の動きを制した。

 女主人は品定めするように、彼のちようから頭のてっぺんまでを見回し、ふんと鼻で笑う。

「見たところ、流れ者の用心棒といったところか。知らぬなら教えてやるが、わたくしはとく──この華王城市長官の妻ぞ。なんの権利があってじやをする」

「いや。せっかくの買い物をだいなしにしたのは、こいつの責任だ。仕事ができなかったのだから打ち据えられてもいたしかたない」

「なっ、こ、これはそもそもあなたが……っ」

 口をはさもうとした華琳に、男はくちびるのはしを引き上げて、いじわるな笑みを浮かべてみせる。

「年長に対する口のき方もなっておらんし、ひ弱で荷物もまともに持てぬわ、仕事中にふらふらと野良犬と遊ぶわ、家僕としては役立たずだなぁ」

 男はつかみ止めていた杖から手をはなす。

 腕一本で軽々と杖をふうじられていた護衛は、信じられないものを見る目で男を眺め、ゆるゆると距離をとった。

「わかったならそこをおどき!」

「いや。いくら役立たずでも、もんを背負う者がとしもいかぬ民間人を打ち据えるのは、道理が通らん。国はたみを守るためにあるものだ。そなたらも、この四華神国に伝わるめいは幼きころから耳にタコができるほど聞かされてきたろう。こうていは天命のもと、仁をもって民を守護すべしと、天が定めた。そう定められた皇帝の貸した武官が、民をしいたげる。これは華盟にそむこうだとは思わんか? 華盟はおそろしいぞ。背けばたちまち国土がれ、国がほろぶ」

 男は女主人に、護衛に、そして周囲の見物人に、ぐるりと視線をめぐらせる。

 男の言うことはいちいち筋が通っている。だが道理が通ろうが、彼女のいかりは収まろうはずがない。むしろ公衆の面前ではじをかかされて火に油を注いだ。

「華盟などと、子どもだましのくつをつけおって」

「子どもだましなものか。この国は今も華盟によって天から守られている」

 男は本気なのかからかっているのか分からない笑みをかべると、ふところに手を入れ、重たそうなぶくろを放った。それを両手で受け止めた主人は、袋の口を開けて絶句する。

「銀銭!? こんなに……!」

六戯すごろくをしてきたおかげで、今日はふところが暖かい。役に立たない家僕一人と盗まれた土産みやげ物の代金くらいにはなろう。──よし、行くぞ」

 彼の従僕らしき青年が黒毛の駿しゆんをひいてくる。

 すると男は華琳の腰をがしりと摑み、軽々と持ち上げた。

 ぜんとする華琳をうまくらにのせ、男はひょいとその後ろへ。小さな華琳の体を胸のうちにおさめるようにうでばし、づなを取った。

「なんのつもり!?」

「うん? そなたの主人はなつとくしたようだぞ」

 馬の背から見下ろせば、主人は銭袋をころものあわせにしまうところだ。赤い唇をゆがめ、おついしようみすら浮かべている。

 男はあぶみで馬の腹を軽くり、往来を割って馬を進める。

 野次馬たちはぽかんと口を開けて二人を見送るが、華琳だって訳が分からない。

 奥さまは用心棒くずれかと笑ったが、そうでもなさそうだ。ごうしようほうとうむすか、やみ市場の人間か、もしくは金持ちの家に寄生する天籟ごろつきか。

(でも、これも天の導きかもしれないわ。……この男を、きわめなくては)

とつぜんかどわかされたわりに、落ちついているな」

 頭の上から男の笑い声が降ってくる。

「あなた、どうして役に立たないなんて拾ったの。金持ちのおぼつちゃんのぜん事業?」

「いいや。俺にとって、そなたほど役に立つ者もいるまいよ」

 あのされるようなこくとうが華琳を間近にとらえる。

 男は手綱から片手を離し、華琳の頭に巻きつけた布をはぎとった。

 突然の暴挙にうろたえる華琳の肩に、かくしていた長いかみが音を立てて流れ落ちる。

 雲間に差し込む清い月光のように、細く重くたおやかに流れる豊かな髪。それはこの世ならぬ色──とおる純白に輝いている。

 そしてあらわになったそのかんばせも、まるで雪のしんだ。

 きやしやあごに、両手におさまってしまいそうな小さなほそおもて。白いまつの下で神秘的な銀の瞳を大きく見開いている。赤く色づいて細かにふるえる唇は、まるでつややかな果実だ。

 華琳はハッとしておのれの髪を胸にいだきこむ。男のほうは目をうばわれたように言葉をんだ。

「……その顔をさらして街にいてくれれば、見つけるのにひとつきもかからなんだが。しかし無事ではいられなかったろうな。男装はけんめいな判断だ」

「あなた、私のことを……!?」

 男はこしをかがめ、ないしょ話をするように耳に唇を寄せてきた。




「俺が皇帝になるには、そなたが必要なのだろう? 蓮礼公主、彩華琳」




(つづく)

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