序
晴天から一転、急に降り始めた雨はどうどうと
太子にのみ許された禁色禁紋をまとった彼は、州王一族の
それ以上歩を進められなかったのは、
──目の前に、異様な光景が広がっていたからだ。
ふきぬけの高窓まで届く、群れ生えた
まさに、花の砦。
太子は草花をなぎはらおうと剣を
蔦を剣で押し分けて
痛々しい姿に、彼は奥歯を強く
中に体をすべりこませると、青甲冑の男の背が目に入った。ぎくりとふり返った男は、真っ赤に血走らせた目を太子の顔にとめ、ただちに
「
将軍の
「
青ざめる将軍を、太子は正面から見すえる。その
将軍は自分より十も年下の
──その時。
「殿下!」と、青年の張りつめた声。
その声に太子が気をそらした
太子は舌を打った。
ふり返れば、若き軍師が茨の棘に
「殿下、ご神器は、《
「《華》なき皇帝が
太子は歩を進め、十人ばかりの遺骸を見て回る。そして花のかんざしの少女に手をかけ、そっと首をあおのけさせた。
「……やはり
つぶやきは、
見開いたままの少女のまぶたを閉じてやると、太子はその場に立ち上がる。
「蓮礼王は、第一公主と《天命の華》を
彼はしばし美しき一族の軀を
ぱちぱちと
非業の女王とその血族が天華の園へ
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