二章 釜鍋美波

二章 1月編 1

 なんでなんだろう。この数日、正月もまともに祝えず部屋に閉じこもってばかりだった。親友の桐谷最中は死んだ。過去のせいで、勝又先生のせいで、死んだ。しかも親友だったはずの最中は彼氏がいたことを教えてくれなかった。教えてくれる前に...死んでしまった。彼氏が竹本鴉だったなんて。これくらい、教えてくれたって...。

 涙はもう出てこない。泣いたって最中は戻ってこない。きっと泣いたら最中だって怒って来るだろう。なんで泣いてる。泣くなって。いつもの真面目な、冷静な口ぶりで。

 

 電話がかかってきた。親が、出る。はい、はい、という母の声のあと、階段を駆け上がってくる音がした。


「竹本くんっていう人。でる?」


なんで竹本が...。私とそこまで面識ないくせに。でも一応出る。


「...はい。」

「あ、竹本鴉、です。釜鍋、美波さんですよね?」

「なんで最中はあなたと付き合っていたの?あんたみたいな人と付き合っていたなんて信じられないんだけど。」

「ごめんなさい。それは僕も最中のこと好きだったんで、なんとも...。」

「そんなことより、なに。」


本当は、厳しく当たりたくなかった。が、どうしても、八つ当たりしてしまう。

竹本は、私の調子を伺うために電話してくれたらしい。あと、自分の関係と、お願いを話に。


「最中との関係はわかった。で、お願いって?」

「実は、最中は生前、笹軒先生との関係を少し言ってたんです。だけど、どうしても本人に聞きに行くには抵抗がありまして。釜鍋さんは最中と仲良かったし、笹軒先生とは同じ陸上部だから、聞けると思いまして。」

「...最中のためになるなら。」


私はなんとなく察していた。最中と笹軒先生の間で、何かあったこと。これはちょうどいいチャンスかもしれない。

最中、なんで竹本が笹軒先生のこと聞きに行けって言ったか知らないけど、ちょっとあなたの周り、調べるね。


 僕は電話を切ると、最中と撮った写真を見つめる。勝又先生が捕まったとき、僕に言った「笹軒先生に気をつけろ。」、この言葉の意味を調べるために釜鍋さんを使う。最中、笹軒先生の仮面マスク、今に脱がせてやるから、見ててくれ。

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