一章(終)12月26日

 僕は叫ぶ。涙なんてとうに枯れている。警察の人が僕を押さえ込む。動いてなんか、いないのに。

犯人はすぐにわかった。防犯カメラが、裏道にもついていてよかった。でも、未然に防げなかった。

...なんで、なんでなんでなんで。


「...竹本、鴉くんだね。」

「...はい。」


警察の人にそう声をかけられると、あげられなかった顔を上げた。


「彼女さんのスマホに、君宛のメッセージが、入ってたよ。」

「...桐谷さんの?」

「死亡時刻と一致することから、きっと最後の力を振り絞って、君に...。」

「...なんで、なんで...。これを聞いたからって、彼女が返ってくるわけじゃないだろう。」


 帰りがあまりにも遅かったために、更生施設まで歩いて探しに行った。そして目にしたのは...涙が凍って、もう体の組織すべてが止まりきった最中の姿だった。もう茶色く変色している地面を見る。僕は何もできなかった。まず110番すると、やっと我に返れた。


「き、桐谷さん...?」


案の定、交番が近いことから警察官はすぐに来た。


「なんで、なんでなんでなんで....」

「君、通報してくれた子だね。...!!なんだこれは!!」

「なんで、なんでなんでなんで....」

「き、きみ、落ち着け。」

「落ち着いたって...彼女は、彼女は戻ってこねーんだよ!!!!!」

僕は警察の人が3人がかりで僕を止めるほど、泣き叫んだ。なんで、なんで彼女は死ななければならないんだ。


「なんで、彼女は...死ななきゃいけなかったんだよ。」


うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ...............。


犯人は、だった。

勝又先生は3年前、桐谷さんのお父さんの部下の部下だった。そう、先生になるための勉強をしながら、桐谷さんのお父さんの会社で働いていたのだ。そして、桐谷さんの事件でその場にいた3人の部下の部下の1人であった。警察が来る前に、逃げたのだ。話によると、笹軒先生から桐谷さんが過去のことについて、真実を話に行らしいという話を聞いた勝又先生が、てっきり自分のことを警察に話に行くと思い込んだらしく、犯行に及んだらしい。しかも事件現場は交番につながる道の途中。交番に行くと思いこんで裏道で殺そうと計画したらしい。ちなみに更生施設は交番のちょっと行った先だった。


「竹本くん、竹本くん、大丈夫か。」

「...ごめんなさい。聞きます...彼女の最後の声を。」

「ああ。では。」


『...竹本、鴉...大、大好きだよ、また、会おうね!!!!!』


「桐谷さん...いや、最中...。一度も、君のこと、最中って読んだこと、なかったね...。最中...行かないでくれよ。なんで、なんで僕一人をおいて行っちゃうんだよ。きっと今頃、家族に会えて、笑っているだろうな...。僕も...僕も好きだよ。愛してる...君を愛しているよ。」


僕はまた、大声で泣いた。子供みたいに。周りにいた警官も、止はしなかった。ただ、一緒に涙を流してくれた。

大粒の涙は、僕の心を癒してはくれなかった。心は、痛いままだった。

学校では、このことが臨時朝会で話された。笹軒先生はもちろん、ほかの生徒全員涙を流した。美波は、気絶するほどだった。彼女を知らない人でも、彼女との別れを惜しんだ。


彼女の心は、いつも、僕の中に。

そして、僕の心は、いつも彼女のものだ。

僕の愛した、桐谷最中さんへ。この世界の全員の愛をこめて。


一章、終。


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