一章 高校生活8ヶ月と2日目 1-1と2

 私は、雪に髪を濡らされながら、竹本と一緒に帰っていた。今日は本当に雪になった。


「雪...だね。」

「うん。ほんとうに綺麗だと思う。私の髪も、そう言ってる。」

「今日、君が帰ってきたらさっき買ったケーキ、食べよう。」

「うん、家の中で準備して待っててくれる?」

「早めに出してくるんだよ、申請書。」

「先に食べちゃだめだよ、ケーキ。」


 笑い声が響き渡る。今日は私の家で、ささやかなクリスマスパーティーをする。クリスマスは、本当にリア充のためにあるのかもしれない。でもその前に、更生施設に入るための申請書を出しに行かなければならない。面接もあるから、少し時間がかかる。


「終わったら、連絡するね。夜、本当に遅くなるかも。」

「いいよ、待つから。何時でもどうぞ。」

「更生施設が夜の8時までだし、予約してあるから大丈夫だよ。」

「じゃあ、終わったら走ってよ。」


嬉しい、楽しい、幸せなクリスマス、何年ぶりだろうか。ニコニコと笑いながら二人で帰る、こんなに生きた心地のするクリスマスは初めてだった。

 商店街を歩いていると、お店のおばさんに声をかけられる。


「最中ちゃん!彼氏さんかい?コロッケ、2人で分け合って食べる?」


ありがとうございます、ささやくようにそう言うと、コロッケを受取り、笑いながらまた歩きだす。


「本当に、ラブラブなのね。いいわー、思い出す。ねえ、じいさんや!」


 家に着くと、竹本に鍵を渡し、申請書だけを持ってまた行こうとした。


「桐谷さん...忘れ物。」

「ん?なにを忘れ.....」


彼に口を閉ざされると、いつも心臓発作が起きそうになる。彼はキスが上手い。


「...じゃあ、いってきます。」

「いってらっしゃい。」


いつもは悲しくこだまするだけのいってらっしゃいが、外にも関わらず、きれいに、嬉しそうにこだました。

 だが、このいってらっしゃいを聞けたのは、これが最初で最後だった。

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