一章 高校生活1ヶ月と1週間目 1-2

 「...え?」

「桐谷さんの話、桐谷さんの過去、絶対にあれだけじゃないよね。話してくれただけじゃない...よね。教えて欲しい。いつもの物静かな僕じゃ、もしかしたらつまらないかもしれないけど、桐谷さんのこと、教えて欲しい。」

「...私の過去がどれだけ醜くても、あなたは私を見失わないで一緒にいてくれる?」


彼なら...竹本なら、わかってくれると思った。何故か、仮面の下の自分を見せてもいい気がした。何故か...何故か。


「私は...あなたになら言える、そんな気がする。いいよ、はいって。」


 ただいま、そう一言つぶやくとまた悲しく反響した。こだまする声は、私の胸だけでなくここに来る人全員の胸に響く。...今もきっと竹本の心に。


「さあ、ここでくつろいでいて。ソファー、座ってていいよ。」

「あ、なんにもいらないよ。気にしないでいいよ。」

「...うん」


 私は3年前、当時父の部下だった男たちにされた。私を見て一目惚れしたらしいが、父にあの子が大きくなったら結婚するとかなんとか言っていたのは聞いた。もちろん私は怖くて母に抱きつくほどだった。それに父もとても怒った。当たり前である。父の部下は父よりも年上で、おまけにロリコンという悪い癖があった。

 私に会うことを禁じられて約1週間後、父の部下は犯行に及んだ。あのときはまだ夜が開け始めたばっかりの時間帯だった。まず家に侵入し、書斎でまだ仕事をしていた父を襲う。その声を聞いて2階から降りてきてしまった弟も襲う。父の声で異変に気づいた母は弟がいないことに気づき、2階から降りてこようとしたところを襲われた。そして異変に気づかないで寝ていた私は連れて行かれた。


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