一章 高校生活1ヶ月と1週間目 1-1
私の過去...。私の帰る家が明るくないのも過去があるから...。思い出したくない過去が...。
黒板の消し跡をもっと綺麗に消す。白、黄色、ピンク、また白...。落ちていく。落ちていく。黒板消しを綺麗にしようと、クリーナーがあるところまで行く。クリーナーのスイッチを押すと、いつもの騒音が響き渡る。いつもより鈍い音に首を傾げると、スイッチを切ってクリーナーの中の袋を出す。ブワッと粉が舞う。
洗うために水道まで行くと、鏡に自分の顔が写った。周りよりも整った顔、くせ毛一つないストレートのポニーテール。真面目感を出す黒縁のメガネ。そして、私を覆う
.....これが、本当の私。
悲しくて涙が出てきた。別に...別に今の私には不満は感じていない。が、本当の顔、すなわち過去が醜いのだ。
涙がまだ流れきっていないとき、後ろから肩を叩かれ、声を掛けられていたことに気づかなかった。
「...桐谷さん?」
「...!!」
竹本だった。なんでこんなところに...。教室も廊下も誰ももういなかった。下駄箱見てもほとんど誰もいなかった。...はずなんだが。
「な、何してるの?」
「今日、臨時で放課後当番あったの、忘れてたんだ...。だから戻ってきた。」
「...あ!」
「でももう、そんなことどうでもいいよ。桐谷さん、何があった。」
「いや...思い出し泣きっていうのかな。」
「過去...だね。」
「...うん。」
最後の頷きは、ほぼ声が出ていなかった。竹本は知っている。一部だけだけど。
「帰ろ。」
「え?」
「今日はどうせ臨時なんだからいいよ。忘れたってことで。さ、帰ろ。」
「...うん。」
帰り道、竹本は隣を歩いてくれた。...ただ、でかい。身長の違い。
というよりも歩き方が普通の男子とは違う。前を見据えてまっすぐに歩く。
なんかちょっと面白い。自転車を押しながら、ここまでまっすぐ歩かれると、私もこうやってまっすぐ歩きたくなる。
「...あ、私、家ここなんだ。」
30分位歩くと、私の家がある。色を失った、1つの一軒家。まさに、私の家だ。
「じゃあ、ありがとね。」
「...ちょっと待ってくれ。...ない?」
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