一章 高校生活1ヶ月目 1

 校庭は、見事に真緑だった。1ヶ月前に咲き誇っていた花も、今では緑色に侵食されていた。時同じくして、外とは正反対に心の中がバラ色の青年と、いつも通り清々しい気持ちの少女が、今日も図書館にいた。


 「どう?3分で片付け終わったよ。桐谷さんは?」

「うーん、2分59秒かな。私は。」


笑い声が図書館の一角に響き渡る。少女は少し、嬉しい気持ちになった。

...思いっきり笑ったのはいつぶりだろう。


「桐谷さん、そんなに笑ったところ、初めて見た。」

「う、うん。私だって笑うけどね。」

「僕も...久しぶりにこんな気持ちになったな。」

「え?」

「桐谷さんって、誰か好きな人でもいる?」

「いきなりどうしたの。」

「ん、えっと...適当かな。」


 竹本は、みんなが言うほど暗くない。私にとっては...頼れる人、かな。彼の前だけ、いつもと違う自分でいれる。


「いないよ?」

「おお、ねえ、も、もし僕が...」

「ん?」

「僕が...君のこと好きって言ったらどうする?」

「...え?」

「あ、いや、適当...そう、適当だから!」


 竹本は少しキリッとしたあの目で、適当適当いってる。眼鏡越しのその目は、いつもとは違い、おどおどしてた。その時、外では一枚の葉っぱが木から離れて落ちていったのが見えた。...私の気持ちのように、ひらひらと舞い落ちてく葉。落ちていく場所もよく知らずに落ちていく葉。


「頼れるから...okしそう。」

「.....!!」


やっぱり、私が私じゃない。真面目という仮面マスクが、彼の前だけ外れる。が、やはり本物の顔は見えない。見せられない。


「そ、そうなんだ。...うれしいかな。」 

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