5.
「な、何でそんなこと知ってるの」
唐突な質問に面食らった。水咲さんはエスパーか何かだろうか、という訳のわからない疑問さえ浮かんだ。少年との文通について、今まで誰かに話したことはないはずだ。なのになぜ――まさか、と思って彼女の名前をもう一度思い起こす。小倉水咲。小倉――まさか。
「してたんだね。相手の名前、教えて」
こちらを睨み付ける勢いで彼女は問うてきた。
「お……小倉、貴史くん。最後に手紙貰った時は十二歳だった」
たかふみ、と復唱した水咲さんの瞳から涙が溢れた。
「あの『ゆうやお兄ちゃん』、ユウさんだったんだね」
しゃくりあげながら、水咲さんはそれでも俺に笑顔を向けようとして、失敗した。
「貴史を……弟を元気づけてくれて、本当に、ありがとう」
水咲さんにかける言葉が見つからなかった。まさかと思った、そのまさかだった。水咲さんは、俺が去年文通していた貴史くんのお姉さんだった。
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