第90話アクアの墓1



 僕たちは馬車で空中都市に1人で襲撃した少女の村に向かっていた。


「ねぇ、なんだ私何も言ってないのになんの迷いもなく村に迎えてるわけ?」


 なぜか僕の横に座っている少女が気味悪そうに僕を見ながら言う。


「そういう異能力を使ってるからね。それに、その言い方だとこの道があってるって言ってるようなものだよ」


 僕が指摘すると少女は黙る。どうやらそこまで考えていなかったらしい。


「グギィィ」


 僕と少女がそんな話をしていると前方から黒い何かが一体現れた。


「どうやら、そろそろ村に着くみたいだね」


 僕は腰に挿してある刀を抜く。そして黒い何かの目の前まで移動し、刀を振り上げ一気に振り落とす。

 黒い何かはなんの抵抗もなしに体を真っ二つにされ地面に倒れる。


「さて、そろそろ戦闘準備開始して」


 僕はエルたちに向かって指示を出す。エル達はどこからの攻撃でも対処できるよう馬車の中を移動する。

 僕は馬車の前を走りながら刀を構える。


「君は下がってていいよ」


 僕はそう少女に言い目の前から襲ってくる黒い何かを両断する。


「ムイ、もっと白虎の走る速度上げれない?」

「私たちの人数分の体重がかかっているのでこれ以上は早くできませんけど、青龍の手伝わせたら少しだけですけど早くなると思います」

「わかった、じゃあお願いしてもいい?」

「任せてください!」


 ムイは青龍を召喚する。そして青龍は白虎の横へと移動し白虎と共に馬車を引く。


「「グギィキィ」」


 今度は通常の体格の3倍はあるであろう巨体の黒い何かが三体ほど前方から通常の体格の黒い何かの群れを率いて襲ってくる。


「ジル、大きいのは僕が相手をするから群の相手は任せた」


 僕はジルにそう言い、巨体の黒い何かの目の前の跳躍する。そして刀を真上に振り上げジルの異能力とスズの異能力をなんでも纏わせることのできる異能力と応用し刀の刀身をさらに長く作り上げ、地面に向かって振り下ろす。


「がぁぁぁぁぁ」


 巨体の黒いなにかの3体のうちの1体が頭から真っ二つに切断される。そして、刀を振り下ろした衝撃で巨体の黒い何かの後ろにいた通常サイズの黒い何かが吹き飛ばされ息を引き取って行く。


 僕は刀を振り下ろした時の力の流れを変え、そのまま2体目の黒いなにかの体を下から上に切断する。

 だが、刀の大きさが変わっていたのもあり両手が宙に打ち上げられていた所を狙われ、最後の一体が僕に強烈な拳を叩き込んでくる。


「ぐうぇ?」


 黒い何かが間の抜けた声を出す。

 それもそうだろう、黒い何かの拳が僕を捉えた直後、黒い何かの拳が消え手の付け根部分から大量に青い液体を出しているからだ。


「燃えろ」


 僕のその言葉と同時に黒い何かは黒い炎に包まれて跡形もなく消えた。


「その技があれば、僕何もしなくてよかったんじゃ・・・」


 ジルが不服そうに僕に言ってくる。


「まぁ、そう言うなって。この技は打った後結構疲れるんだよ。しかも、下手したら火力間違えてこの森を燃やし尽くしちゃうかもしれないから簡単には使えないんだよ」

「・・・・・・やばい」


 僕がジルに説明すると、ジルは青ざめた顔で引きつった笑みをした。


「まぁ、そろそろ走らないと馬車を見失っちゃうから早く追いかけようか」


 僕とジルはどんどん小さくなっていく馬車をそれぞれの異能力を纏い、空を飛んで追いかける。





 僕とジルが馬車に追いついて少しして、もはや廃墟とかした村に着いた。

 多分、少女の反応から見るにここで目的地はあっていると思われる。


重力無視サイコキネシス


 僕はまず、村の中にある瓦礫や荒れ果てた地盤などを全て村の隅に移動させる。


「君、どうしたい? お墓を一人につき一つづつ作るか、大きなお墓を一つ作って全員ぶんまとめるか」


 僕は先ほどから黙ったままでいる少女に聞く。


「・・・・・・・」

「どうしたいの?」


 僕は黙ったままの少女にもう一度聞く。


「みんな一緒に安心して眠れるように一つにしてください」


 少女が選んだのはお墓を一つに統合することだった。


「わかった。重力無視サイコキネシス


 僕はまず村の中心に大きな四角形のくぼみを作り、その中に村人達の死体を綺麗に並べていく。


「ハイド、君の異能力を借りるね」


 僕はハイドの異能力を使い四角形の大きなくぼみに蓋をして、更にその上に長方形の透明な結晶を生成する。


「じゃあ、あとはこの結晶に村人の名前を書いてくれるかな? これを使えば簡単に削れるから」


 僕はそう言って炎を纏った小刀を渡す。


「それは自分でやりな、僕たち寝泊まりできる場所を確保しておくから。終わったら教えてね」


 僕がそう言うと、少女は首を縦に振った。


「じゃあ、エル達はこのへんの獣の討伐、あと黒い何かを見つけたらすぐに殺すこと。僕は寝泊まりできる場所を確保し次第周りの調査をするから」


 僕がそう言うと、エル達は『わかった』と言い二人一組になって周りを調査しに行った。





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